
6月19日、欧州連合(EU)と中国は中国製電気自動車(EV)の対EU輸出について、関税の代わりに最低価格を導入する方向で協議を進めている。写真はBYDの車両。2024年10月、ベルギーのゼーブルッヘ港で撮影(2025年 ロイター/Yves Herman)
[ロンドン/香港 19日 ロイター BREAKINGVIEWS] – 欧州連合(EU)と中国は中国製電気自動車(EV)の対EU輸出について、関税の代わりに最低価格を導入する方向で協議を進めている。しかしこのような手法はリスクをはらんでおり、EVを巡る関税戦争の緊張が緩和しても、EUよりは中国に有利に働きそうだ。
EUは昨年秋、中国製EVについて、政府補助金や低賃金労働から得ている競争上の優位性を相殺するために最大35%の追加関税を課すことを決めた。これに対して中国は目下、代替策の導入を画策しており、それは輸入関税の代わりに自動車メーカーが販売価格を一定の水準以下に抑えると約束するモデルだ。この方式は以前に太陽光パネルで採用されている。
この方式には利点がある。中国メーカーは関税の負担を吸収するために値引きする必要がなくなる。EUも中国の怒りをなだめるとともに、コニャックなど対中輸出品に対する報復関税を回避しつつ、低価格の中国製EVが大量に輸入されるのを阻止できる。安価な中国製EVの大量流入はルノー(RENA.PA), opens new tabやフォルクスワーゲン(VW)(VOWG.DE), opens new tabなど欧州の自動車メーカーにとって致命的な脅威になり得る。国際エネルギー機関(IEA)のデータによると、中国製EVの昨年の欧州向け輸出は125万台と、欧州のEV生産台数全体の半分を超えた
China’s battery cars exports from 2020 to April 2025
しかしこの手法は水面下に問題を抱えている。欧州側は関税と同様に、各自動車メーカーが享受する補助金の程度に応じて最低価格を決めるように求めだろう。関税の場合でも、中国側が望みそうな単一の水準では正確な反映は難しくなっただろう。いずれにせよ、多くの部品からなる複雑な仕組みのEVに最低価格基準を設定するのは至難の業だ。
また、最低価格はいったん決定しても、すぐに現状にそぐわなくなる恐れもある。ルノーとVWは中国と競合するためにより安価なEVを発売しており、バッテリー技術の進化でコストは下がる見込みだ。最低価格が導入されれば技術革新への意欲が削がれるかもしれない。
制度の実行はより大きな課題を伴う。関税の利点は単純さにある。一方、自動車の価格は流動的で、ディーラーは値引きを行い、低金利ローンなどのインセンティブもある。
中国メーカーは既に製品に対してさまざまな特典を付与しており、国内市場での魅力を高めることに長けている。比亜迪(BYD)(002594.SZ), opens new tab, (1211.HK), opens new tabは10万元(約1万ドル)を超えるすべての車両に新型運転支援システム「ゴッズアイ」を標準装備。4月の上海モーターショーでは複数の中国メーカーがディスプレイや組み込み型キッチンなど、さまざまな特典をアピールした。新興メーカー、上海蔚来汽車(NIO)(9866.HK), opens new tabのオーナーは同社ブランドのクラブハウスが利用可能だ。
つまり、欧州メーカーは依然として価格面で中国メーカーに打ち負かされる可能性があり、それは中国での生産を促す要因となる。確かに、欧州は1980年代に日本に対して導入したように中国製EVに最低輸入割当を課すこともできる。あるいは、価格の下限を高めに設定し、その水準に届かない分については関税を課すこともできる。しかし全体として最低価格制度は、欧州が中国との関係を維持し、レアアース(稀土類)へのアクセスを確保するために払う代償となりそうで、結局のところ得をするのは中国という公算が最も大きい。
●背景となるニュース
*中国商務省は7日、中国製EVの対EU輸出について、最低価格設定を巡る中国とEUの協議が最終段階に入ったとの認識を示した。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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