京都の外国人観光客を狙え “分散化で取り込みを” 滋賀の戦略



2024年の1年間に日本を訪れた外国人旅行者の人数は3686万人余りとなり、過去最多となりました。

全体の観光の消費額は8兆円を超えインバウンドの経済効果を地方がどのように取り込んでいくのかが、注目されています。

この勢いを引き寄せようという滋賀の取り組みを取材しました。

(大津放送局記者 門脇誉幸)



おはよう日本「“Shiga”を海外に売り込め」(5月7日放送)
5月14日午前5:59までNHKプラスで配信中
↓↓↓こちらで見られます↓↓↓





おはよう日本「“Shiga”を海外に売り込め」



パリでトップセールス

ことし2月、滋賀県の三日月知事がフランス・パリを訪れ、トップセールスを行いました。


パリの旅行会社の担当者を集め、観光のモデルコースをアピールしました。滋賀の旅行プランを作成してもらうきっかけにするのがねらいです。

紹介したのは、世界遺産の登録を目指している国宝・彦根城。そして、伝統の信楽焼づくり体験、びわ湖のサイクリングコースなど。


滋賀の歴史や芸術、自然を満喫できる観光体験を紹介しました。

この中で、強調したのが京都との近さです。

三日月知事
「滋賀県は観光のゴールデンルート上にあって、京都から大津までは電車で9分」

説明を受けたパリの旅行会社の担当者の反応は…。

パリの旅行代理店の担当者
「フランス人には東京や京都、大阪が人気ですが、そこからアクセスしやすい行き先を提案するのは、とてもいいアイデアです。びわ湖や彦根城はフランス人の好みにぴったり合うと思います。あまり知られてはいないですが私たちの顧客の興味を引くはずです」

データで分かる 滋賀の観光知名度

滋賀県が海外へのPRに力を入れる理由は、世界的な観光地としてブランド力のある京都などの集客力をすぐ近くの滋賀にまで波及させていきたいからです。


この地図は、外国人旅行者がどこに多く足を運んだのかを1キロ四方ごとに分析したデータです。携帯電話の基地局からプライバシーを保護した形で集めその人数を推計しました。

赤色が濃いほど、多いエリアです。東京や京都、大阪など三大都市圏と呼ばれる地域に集中しています。ところが滋賀は、京都と近いにもかかわらず、来てもらうのは難しい状況となっています。

こちらは、滋賀と京都を訪れた外国人旅行者の去年の状況の比較です。画面左側が京都、右側が滋賀です。人数が多い場所ほど濃い赤色で表示されます。

京都では清水寺などのある中心部の広い範囲、そして嵐山などのある郊外のエリアも多くの外国人が訪れています。

一方、滋賀は、世界遺産の比叡山延暦寺などは薄い赤色になっていますがほとんどが白色。県では、京都を訪れる外国人旅行者が滋賀に流入すれば、こうした現状を変えるチャンスになると考えています。

滋賀県シガリズム推進室 河崎直人室長
「京都とかの近さはかなりの売りになる。非常に行きやすい場所にあるので、そこは大きなストロングポイント。滋賀にしかないものをいかに外国の方にも分かっていただけるか。そこにどのように持っていくかが非常に重要」

SHIGAに来て!

県では、滋賀を世界にアピールする取り組みを広げています。


国内の大手旅行会社が、日本の観光情報を紹介するこのウェブサイト。これまでは大阪や京都などの主要な観光地が中心でしたが、県が依頼して新たに滋賀を加えてもらいました。

この旅行会社を通じて、滋賀も掲載されたサイトを、海外のおよそ3800社にダイレクトメールで案内しました。

県では、独自性ある観光コンテンツで海外の旅行業界の関心を引き出せられれば、旅行商品の開発が進み今後の誘客につながると考えています。

滋賀県シガリズム推進室 河崎直人室長
「観光業界では“刺さる”ということばを使いますが、日本全体でみると、それぞれが競合するコンテンツにもなっていくし、なぜ滋賀に来ていただくかというところをいかに訴えるかが非常に重要になってくる」

“刺さる”コンテンツで誘致を

インバウンド需要を引き込む観光地の1つとして滋賀県が期待をかけるのが、京都に近い比叡山延暦寺です。

国宝の建物もあり日本の仏教文化を伝える名所です。


ここでこの秋から本格的に始めようとしているのが外国人向けのオーダーメイド型の修行体験です。

僧侶が悩みを聞いたうえで、座禅などの8つの修行の中からそれぞれに合った内容を勧めます。

そして、宿坊の部屋の一部を外国人向けに改装。ベッドのある部屋を増やしました。

木を使い和を感じさせる造りにしています。


窓にはカウンターが。びわ湖を望みながら、写経の体験ができます。

日常から離れ静けさの中で自分と向き合える空間にしました。

旅行者で集中し混雑する場所を避けて、観光を楽しみたいという人たちの需要を見込んでいます。

比叡山延暦寺総務部 小寺照哉主事補
「今、京都の街中であったり、東京とか大阪はもう多くの方であふれかえっているので、穴場として、空気感とか、1200年以上の歴史がある宗教なので、そういったものも感じ取っていただけたら」

“分散型” そして“ディープ” な滋賀を

“刺さる” コンテンツのヒントが、地方への分散にあるのではという声もあります。


外国人旅行者の状況をコロナ禍前(2019年)と、去年とで比較した地図です。青色は減少、赤色は増加した場所です。

滋賀県は全体的には青が多く、コロナ禍前の水準にまで戻っていません。

しかし、細かくみていくと、増えている場所も。その1つ、大津市の観光地「おごと温泉」の状況を地元の観光協会に話を聞いてみました。

おごと温泉観光協会 池見喜博会長
「観光協会の調査でも、外国人の宿泊者は、コロナ禍前(2019年)に比べて去年(2024年)は、1.5倍近くに増えました。背景には、京都でのオーバーツーリズムの混雑を避けたことや、京都に近い場所で温泉を体験してみたいという需要があったのではないかと思います」

滋賀県の取り組みをサポートしている大手旅行会社の担当者も、そうした需要に注目しています。

大手旅行会社 地域誘客の担当
「観光地に人が多すぎるため、『少し離れたところを提案してほしい』といった外国人旅行者からの声があります。お客様の満足度向上のためにも、地方への分散というところは、旅行会社も意識している点だと思います」

そして、日本を再び訪れるリピーターたちが“ディープな日本”を求めて地方へと繰り出す需要もあるとみています。

大手旅行会社 地域誘客の担当
「リピーターの旅行客は、知的好奇心や探究心を持っている方が多いと考えています。まだ、知られていない地域に根差した文化や秘境と呼ばれるような景色に触れたいという需要があると思います。地方どうしが協業して呼び込みをする方法があると思います」

連携で魅力アップ “SAMURAIの聖地 滋賀”

滋賀県内では、戦国時代をテーマに観光地が連携する取り組みが始まりました。ことし2月に作った英語のパンフレットです。

タイトルは「SAMURAIの聖地・滋賀」。

戦国時代などに関連した名所のある5つの地域の観光協会が作りました。


“忍者の里”として知られる甲賀市や、近江八幡市にある織田信長が築いた安土城の博物館などの観光コンテンツをPRしています。

かっちゅうを着て“信長”になりきる体験や、刀鍛冶と一緒にペーパーナイフづくりができるメニューを掲載しました。

戦国時代を舞台にした海外ドラマの影響で人気が出ている“サムライ”にまつわる体験を集めました。

連携で満足感を高められるスケールメリットを期待しています。

パンフレットを制作した びわ湖大津観光協会の担当者
「俳優の真田広之さんが主演を務めたアメリカのドラマ『SHOGUN 将軍』がヒットしたので、外国の方にこうした“サムライ”コンテンツは興味を引くと思います。滋賀に来れば、サムライになれるという体験を売り込みたい。5つの地域をめぐってまとめて体験できるとわかれば、滋賀に宿泊するなど滞在時間が増えることが期待できる。このパンフレットを活用して。海外の旅行会社などに滋賀の魅力を伝えていきたい」

地域ならではのヒットコンテンツを

日本には多くの外国人観光客が訪れていますが、専門家は地方に呼び込むヒントは身近にあるとみています。

観光産業に詳しい 城西国際大学 佐滝剛弘教授
「外国人にとって魅力的な観光地のコンテンツが地方ではまだまだ発掘されていない。自分たちの地元では当たり前すぎて、外国人から見たら、珍しいというようなことは結構あるし、そういうところがある種、ヒット商品を生み出したところもある」

今後の課題は?
一方で、一部の観光客のマナーが問題となっているケースが地方でも出てきています。

住民の生活に影響する“オーバーツーリズム”への対応が、求められてくるといいます。

佐滝教授
「今、日本で起きているオーバーツーリズムでは、予想もしなかった場所に、たくさん外国人観光客が来ているという例がたくさんある。行政も、地域の人にとって望ましい状況ではないことが起こることも想定しておく必要がある。観光は、知らない土地で、知らない文化を知り、人と交流して、自分の国に戻ったあとも、また行ってみたいなと思ってもらい、ファンになってもらうことがベースにある。迷惑を受けない程度に来てもらって、交流ができることが担保されて、初めて観光というのは成り立つ。そのことを忘れないということが行政にも求められると思います」

地域の暮らしを守りつつも、海外の人たちにも楽しんでもらう環境をどう作っていくのかが、持続性ある観光のカギとなりそうです。

(5月7日「おはよう日本」などで放送)

大津放送局記者
門脇誉幸
2020年に入局し、大津放送局に赴任。
地域の祭事やびわ湖、遺跡など滋賀ならではの話題を中心に取材しています。

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