90年代から海外農園を探訪 多様な豆を破格で
徳島市内を歩くと、至るところでコーヒー店に出くわす。しかもどの店もレベルが高い。実は徳島は総務省統計局・家計調査の品目別ランキングで、「コーヒー・ココア」の支出額が常に上位。連続して全国1位になったこともあるほど(注)、昔からコーヒーが暮らしに根付いているのだ。そんな徳島を訪れる度に必ず立ち寄るお気に入りのカフェが、「TOKUSHIMA COFFEE WORKS(徳島コーヒーワークス)」の山城店だ。
初めて訪れたのは5年ほど前。しゃれた戸建ての建物で、ドアを開けると目の前にずらりとコーヒー豆が並び、その奥に置かれたプロバットの焙煎(ばいせん)機が目に入る。それを横目に店内に進むと、天井が高く大きなガラス窓から自然光が差し込み、いかにも居心地のよさそうな空間が広がっている。ゆったりとした店内にはジャズが流れ、正直この空間だけでもかなりの満足度だ。
使い込まれた木のテーブルとイスが居心地のいい空間を創る
まず驚くのはコーヒーの種類の多さと価格。希少品種の「コロンビア・ウシュウシュ・アナエロビック」から、当月のおすすめの「ミャンマー・ナチュラル」や「マンデリン・トバブルー」まで、扱う豆はなんと30~40種類。ブルボン種とティピカ種の原種のみに限定し、近年増えてきたハイブリッド種や人工交配の豆は使用しない。できるだけたくさんのコーヒーを体験してほしいと、例えば今回注文した「コロンビア・ゲイシャ・ナチュラル」も836円という破格の価格で提供している。
豆は常時30~40種類。これほどの品ぞろえの店は都内でも滅多にない
コーヒーワークスの誕生は1990年だが、前身となる「でっち亭」は1981年に開店。創業者の小原博さんはもともと創作料理店のオーナーシェフで、料理の腕はぴか一。ただ食事と共に提供するコーヒーも、自分で焙煎して淹(い)れたおいしいものを出したいと研究するうちに、コーヒー店が本業になったのだそうだ。
自らハンドドリップでコーヒーを淹(い)れる小原健亮さん
東京の有名店を回って独学で学び、より質のいい豆を仕入れようと、南米を中心に世界中の数えきれないほどの農園を訪ねた。今でこそ農園を訪れることも珍しくはないが、まだスペシャルティコーヒーの存在すら知られていない90年代のこと。驚くべきバイタリティだ。今でも気になる農園にはどんどん足を運び、焙煎のプロファイルも自ら作る。日本スペシャルティコーヒー協会(SCAJ)の立ち上げにも参画し、SCAJチャンピオンシップ四国予選が行われるなど、まさに徳島のコーヒー文化を牽引(けんいん)している。
焙煎度に応じてペーパーとネルを使い分け、丁寧な抽出を心がける
今でもレストラン仕込みのフードが充実していて、一番人気はスパイスピラフ。豚肉とタマネギ、マッシュルームを炒めて、ブラックペッパーを効かせた自家製ブラウンソースを絡め、押し麦を混ぜたバターライスの上にトッピングしているのだが、想像をはるかに超えるおいしさだった。店内には本格的なピザ薪窯もあり、粉の調合から発酵、生地の成形も自ら行う本格派だ。コーヒーだけでなく、すべてに対して妥協なし。中途半端なものを提供するくらいなら、しないほうがいい。その考えが徹底している。
ブラックペッパーのピリピリとした刺激とバターライスのしっとり感が絶妙なスパイスピラフ
現在は、小原博さんが会長になり、2代目にあたる社長の小原健亮さんが、ラボを含む3店舗を取り仕切る。焙煎はフジローヤルとプロバットを使用して、量の多い豆は徳島市内にあるコーヒーワークスラボで行い、シングルオリジンの浅煎りから中深煎りなど少量のものは山城店で行う。最近、浅煎り中心の店が増えたが、通常よりやや深めの浅煎りから中深程度に抑えて、ブームだからと酸味を強調することはあまりしない。心地よい酸味と、豆本来の甘みや苦みをぜひ楽しんでほしいという。
焙煎日から3週間以内の豆だけを使うが、焙煎したてには新鮮な豆のよさがあり、エイジングによって味が調えられてうま味が出る。使用するコーヒーは、すべてスペシャルティコーヒーだが、それを声高にうたうこともない。すべてはお客様がおいしいと思うかどうか。中浅煎りから中深煎りまではペーパーで、深煎りはネルで一杯一杯丁寧に淹れる。他にエスプレッソやラテもあり、ラテは、豆乳、オーツミルク、地元の和三盆入りなど数種類。デカフェも常に3、4種類用意している。
コーヒー好きはもちろん、客層は年配の人から子供連れのファミリー、学生まで幅広く、広い店内は常に満席状態。それぞれが本当に楽しそうな時間をここで過ごす。そんな市民に愛されるコーヒー店なのだ。
(注) 総務省統計局「家計調査(二人以上の世帯) 品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市ランキング」から、2015~2017年平均と2016~2018年平均
訪れた日は小雨が降るあいにくの空模様だったが、店内はいつものように満席だった
TOKUSHIMA COFFEE WORKS(徳島コーヒーワークス) 山城店
徳島県徳島市山城西1-7
088-655-8877
https://coffee-w.com/shop/
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