資源を効率的に循環させる「サーキュラーエコノミー政策」を推進するEU。政策の行方はEUに自動車を多く輸出する日本にも大きく影響する。
炭素繊維のリサイクル技術は開発中
EU(欧州連合)内で自動車材料として使われる炭素繊維に対する規制案が急浮上している。仮に成立すれば世界で初めて炭素繊維の使用を制限する規制となり、風力発電や航空機などでも炭素繊維の使用を避ける動きが広がる可能性もある。炭素繊維は日本メーカーのシェアが高く、その影響が懸念されるが、提案内容を詳細に見るとロジックが成り立たず不自然な部分も指摘できる。
炭素繊維は衣料の原料などとして使われるアクリル樹脂や、「ピッチ」と呼ばれる石油や石炭から得られる副生成物の有機物を、高温で炭化させて作った繊維状の物質である。樹脂に炭素繊維を強化材として加えた「炭素繊維強化プラスチック」(CFRP=Carbon Fiber Reinforced Plastics)は軽い、さびない、疲労特性に優れているといった特徴がある。
CFRPはゴルフクラブなどのスポーツ用途や航空機構造材、風力発電のブレードのほか自動車分野でもエンジンフードなどの部材に幅広く使われている。特に、燃料電池車(FCV)では水素を貯蔵する高圧タンクや水素から電気を作る燃料電池のガス拡散層などにも使用されており、カーボンニュートラル(二酸化炭素実質排出ゼロ)社会にも不可欠な素材となっている。
日本は1970年代から世界に先駆けて炭素繊維を商業化し、現在は東レ、三菱ケミカルグループ、帝人の3社で世界生産の半分超のシェアを占めるとみられる。CFRPはリサイクルの困難さが課題とされていたが、近年リサイクル技術の開発が日本の産学で進められており、旅客機「ボーイング787」主翼のCFRP廃材が、東レのリサイクル技術によってノートパソコン筐体(きょうたい)に使用されるといった事例も…
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週刊エコノミスト
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