直前のインディーズ作品では、ギターロックを奏でていた彼ら。にもかかわらず、打ち込みを導入し、ティンパニまで取り入れたアレンジ。それは、10代の若者が思いつく範疇をはるかに超えていた。

「今振り返ってみると、当時の僕らの技術や知識であのアレンジを組んでたのって、正気じゃなかったかもしれない(笑)。ライブでも再現できなくて、シーケンスを組んで演奏してたくらい。だけど、“自分たちの信じる楽しい音楽”を形にしたかった。それだけでした」と大森が笑うと、藤澤が記憶を辿りながら言葉を挟む。

「2015年の元日に、あの曲のデモが送られてきたんです。“なんじゃこりゃ!?”って驚いたのを今でも覚えてます(笑)」

「その年にメジャーデビューが決まっていたからこそ、元貴の覚悟みたいなものがひしひしと伝わってきたんですよね。自分たちも、当時はいろいろ試していた時期だったので、あのタイミングでメンバーの意識がグッとひとつにまとまった感覚がありました」と若井も懐かしそうに続けた。

Mrs. GREEN APPLEのインディーズ期間は、わずか5カ月。曖昧になりつつあったインディーとメジャーの境界線のなかで、彼らは“新しいポップス”に賭けた。それは今振り返っても、覚悟そのものだった。

もうひとつの転機として3人が口を揃えるのが、2018年にリリースされたアルバム『ENSEMBLE』だ。

「僕にとっては、間違いなく『ENSEMBLE』がターニングポイントでした」と藤澤が即答する。

「僕も……そうだね!」と若井も力を込める。

2人の言葉を受けて、大森もゆっくりとうなずいた。

「そもそも“ENSEMBLE”っていうタイトル自体が、ある種の自戒だったんです。“バンドとしてのアンサンブルがまだ弱い”という自覚からあえてタイトルにしました。レコーディングでも、藤澤は1小節ずつ丁寧に録って悔しい思いをしていたし、若井もギターのフレーズを何度も弾いてやっと録れた。あの積み重ねが、“やりきった”っていう実感につながって、ツアーでもすごく大きな財産になったと思います」