米国が本当に借りなくなれば、「ブレトンウッズ体制」発足以来の大激変が生じる。

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 いわゆる主流派の人々は「マール・ア・ラーゴ合意(「スティーブン・ミラン論文」要約を参照)」を色眼鏡で見ているかもしれない。そこで本稿では同合意の2本柱である「ドル安」と「米国債の債務再編」を彼らの観点で考えることを試みる。合わせて、同合意と密接に関わるトランプ大統領による「相互関税」の真の意味を考えたい。

米国依存の80年

 トリフィンのジレンマは、準備通貨を欲する者自らが準備通貨の下落を招く状況を指す。準備通貨の供給国は、他国による準備通貨への需要を満たすため、貿易赤字を計上する必要がある。米国は、他国からモノを買い、他国主体名義の預金を創出する、言い換えれば、負債を積み上げることで、他国にドルを供給する。他国が欲する準備通貨(ドル)や準備通貨国の負債(米国債)は、他国が欲するにつれて、その供給は膨らむ。しかし、それはあくまで信用・与信に過ぎないために、やがては持続不可能になり、これらの価格は調整される。

 世界経済は長年、米国の借り入れに基づく消費に依存して拡大を続けてきた。米国は1971年以降、73年と75年を除き、貿易赤字を計上してきた。逆に言えば、他国は米国に対し、消費のための資金を貸し付け、消費を続けさせてきた。過去40年あまりにわたって「米国の債務は持続不能」との議論を続けつつも、米国への「追い貸し」を続けてきた。

 マール・ア・ラーゴ合意の2本柱の一つである「ドル安」は、トリフィンのジレンマが示唆していることそのものである。他国が「ドル安調整は困る」とわめいたところで、米国からすれば「準備通貨の切り下げは理論と歴史の示すところでしょう。十分にわかっていましたよね」となる。実際、英国にせよ、米国にせよ、金本位制や金・ドル本位制からの離脱、すなわち切り…



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週刊エコノミスト

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