被爆者が高齢化する中、広島市は、被爆者と疑似対話できる「被爆証言応答装置」の製作に乗り出す。事前に撮影した証言映像から、質問に対応した適切な回答を人工知能(AI)が選んで再生し、被爆者とのリアルなやり取りに近づける。広島平和記念資料館(広島市中区)の見学者などに利用してもらう予定で、被爆80年となる来年8月6日までの完成を目指す。 厚生労働省によると、全国の被爆者(被爆者健康手帳所持者)は2022年度末で11万3649人(平均年齢85.01歳)となり、手帳の交付制度が始まった1957年度以降で最少を更新した。全国の人数は、80年度末時点の37万2264人をピークに減少。体験の継承が課題となっている。 広島や長崎では、証言ビデオの活用や、子や孫ら被爆者以外の証言者の育成を進めている。一方で、被爆者と直接話をしたいとのニーズも多く、市は対話を疑似体験できる装置の製作に乗り出すことにした。 装置の根幹となるのは、被爆者の証言だ。あらかじめ様々な質問を想定した回答を用意しておく必要があり、市は今後、5人の被爆者に時間をかけてインタビューを行い、回答映像を蓄積する。
装置には自動音声認識システムを搭載し、利用者が直接話しかける仕組みとし、AIが文意を瞬時に特定して適切な回答映像を選ぶ。想定外の質問への対応は検討中だが、事前に想定した質問には、自然に受け答えできるレベルを目指す。生成AIのように映像を作り出すことはなく、選択した回答映像をそのまま流して証言の信用性を担保する。 市は、近く発表する6月補正予算案に製作・撮影費用などとして来年度までの2年間で計6820万円を計上。今夏までに公募型プロポーザル方式で委託業者を選び、被爆者へのインタビューを始める。少なくとも日本語と英語の2言語に対応させる計画だ。 完成後は資料館や国立広島原爆死没者追悼平和祈念館(広島市中区)に設置し、修学旅行生や観光客らに活用してもらう。常設型に加え、持ち運びできる装置も作り、学校などでの利用も検討している。 市幹部は「被爆者が発する生の言葉は、国籍を問わず多くの人たちの心に響く。被爆者がいなくなってしまった後も、被爆者と対話ができるような仕組みを構築したい」と話している。 広島大平和センターの川野徳幸センター長は「被爆者と対話しているような形で証言を聞くことができれば、より臨場感を持って被爆の実相を理解できるのではないか。そのためにも、被爆後の長い苦しみ、原爆投下に対する責任論など複雑な思いを抱える被爆者の言葉を、バイアス(偏見)なしに残すことが重要だ」と語った。
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