俳優 岡本信人さん<1> 「渡る世間は鬼ばかり」シリーズなどドラマの名脇役として知られる俳優の岡本信人さん(76)。芸歴62年、実直な好人物やちゃっかり者など市井の人を広く演じてきた。そのせいか、街ではよく「知り合い」に間違えられるという。「現実とお芝居が同化して境界線がない俳優って、いいかなと思うんですよね」。その変わらぬ親近感と自然体の演技が、唯一無二の俳優人生を築き上げてきた。◇様々な役を演じてきたことについて「幸運で達成感はありますね」と語る岡本さん=園田寛志郎撮影様々な役を演じてきたことについて「幸運で達成感はありますね」と語る岡本さん=園田寛志郎撮影 20代から体形はほぼ変わらない。バラエティー番組で話題となった野草観察を兼ねた日課の散歩は、5000~8000歩。ジムに通い、発声練習も欠かさない。いつ出演依頼が来ても受けられるための準備だ。

 「ぜいたくな話ですが、幸せな役に恵まれてきました。(役を取りにいくことはせず)オファーを待つのは、自分がしたい役が必ずしも作品に合うとは限らないからです」山口県岩国市のPR動画に出演した岡本さん(右)=市提供山口県岩国市のPR動画に出演した岡本さん(右)=市提供
 2021年から、山口県岩国市のPR動画に出演しており、
徳利(とっくり)
を頭に載せた「つまちょん侍」をコミカルに熱演したかと思えば、翌22年にはNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で、一本気な坂東武者・千葉
常胤(つねたね)
役をひょうひょうと演じた。仕事の大小にかかわらず、与えられた役に全力を尽くす。
 小学6年まで山口県で過ごし、横浜、東京に転居。中学から「劇団ひまわり」に入った。中学3年でドラマデビューした後、テレビプロデューサーの石井ふく子さん(97)に見いだされ、ホームドラマに欠かせない存在になった。市川崑さんの目に留まり、映画にも活躍の幅を広げた。 「脇役で主役を食うようなことはされないけど、とても気になる存在。きっと岡本さんがフェロモン過多でおられるからなんでしょうね」 イラストレーターのみうらじゅんさん(66)は、独自の言い回しでその魅力を分析する。1996年の雑誌連載や、それを書籍化したエッセー集で岡本さんを取り上げ、見る者の脳裏に焼き付けられる岡本さんの存在感を、「天然のサブリミナル効果がある」「無自覚な自然発光体」と評した。 では、その光源はどこにあるのか。「野草のように芽を出して根を張り、一生懸命生きることが自分らしさ」と語る岡本さん。原点は、同県萩市で過ごした快活な少年時代にあったと振り返る。岡本信人(おかもと・のぶと)
 1948年、山口県岩国市生まれ。62年のNHKドラマ「少年福沢諭吉」でデビュー。TBS系「肝っ玉かあさん」「ありがとう」などホームドラマで活躍。バラエティー番組で趣味の野草食が紹介され注目された。著書に「道草を
喰(く)
う」(法研)など。