公益財団法人「サントリー文化財団」が企画・編集を行う論壇誌『アステイオン』(発行・CCCメディアハウス)が5月24日発売の号で、100号となった=写真=。1986年に創刊し、保守からリベラル、研究者からジャーナリスト、ベテランから若手まで幅広く登用。政治、社会、文化と硬軟取り混ぜた文章を掲載してきた。

 創刊号で、編集長だった粕谷一希は〈日本人が自らの国際的役割を自覚し、独自のメッセージを発信することこそ今日の急務でしょう〉と記した。その言葉通り、創刊号には国際政治学者の高坂
正堯(まさたか)
、人類学者の今西錦司、政治学者の
五百旗頭(いおきべ)
真ら、時代を代表する論客が名を連ねた。
 節目となる今号では、創刊号に寄稿した社会思想家の佐伯啓思さん、評論家の川本三郎さん、文芸評論家の三浦雅士さんたちの論考が掲載されている。
 経済学者の猪木武徳・大阪大名誉教授は創刊号で、現代社会に古代ギリシャ社会との類似構造や同型性を読む論考を寄稿した。今号では、〈「分からないこと」「思い出せないこと」に耐え忍ぶ力が薄弱になりつつあるのではないか。人々は次第に短気になって、
直(す)
ぐに「正解」が分からないと満足できないのだ〉と論じた。デジタル技術が発達し、「即答智恵」を求めがちな世相の中で、紙のメディアや論壇誌の役割を説く。
 〈短絡的に素早く反応するだけではなく(略)反省的に物事を捉える精神を鍛えるメディアが今の日本に強く求められている〉 当初は年4回刊行の季刊誌だったが、1999年から年2回刊となった。速報性ではSNSだけではなく、週刊誌や月刊誌にもかなわないと自覚している。 編集委員長を務める国際政治学者の田所昌幸・国際大特任教授は「紙媒体の雑誌に速報性や時事性は期待できない。時代の中長期的な流れを意識しつつ、専門家ではないが知的関心のある読者に、各分野の専門家によるしっかりとした論考を届けたい」と話す。強みを生かし、論壇になくてはならない存在であり続ける。(文化部 前田啓介)