『後期日中戦争 華北戦線』広中一成著
 2021年に刊行された『後期日中戦争』の続編。1937年7月から45年8月まで続いた日中戦争は、41年12月に米国との戦争が始まると、その陰に隠れた形となる。著者はあえてその時期に注目。「後期日中戦争」と名付け、特に華中における戦いを分析した。同書は着眼点の面白さと
精緻(せいち)
な分析によって版を重ねるヒットとなった。

 本書では、華北で繰り広げられた戦いに視点を向け、考察する。中国共産党軍との戦いをはじめ、山東省での「戦争犯罪」や、戦後の山西省における残留日本軍の問題にまで言及する。この時期の日中戦争を知らずに日本の戦争を語ることはできない。(角川新書、1056円)(啓)
『散歩哲学 よく歩き、よく考える』島田雅彦著 散歩をこよなく愛する作家のエッセーだ。
 歩行の歴史から始まり、文学者たちの散歩についても紹介する。散歩が日課の文学者は多く、その理由に近づくことができる。居酒屋探しや、旅先での出会い、海岸や河川敷では“漂着物
漁(あさ)
り”など、著者にかかれば、どんな散歩にも楽しいことが待っている。料理や居酒屋に関する著書もある作家の、行きつけの店名が載っているのもうれしい。

 時節は梅雨前だが、雨の楽しみも提案してくれる。永井荷風『
濹東綺譚(ぼくとうきだん)
』を例に「傘」を語った部分を読めば、ビニール傘を捨てて晴雨兼用の日傘と本書を手に外出したくなるかも。(ハヤカワ新書、1078円)(し)