生成AI(人工知能)の利用が広がった近未来を舞台にした小説「東京都同情塔」が1月、
芥川(あくたがわ)
賞に選ばれると、
瞬(またた)
く間に注目を浴び、イギリスや韓国、台湾などで
翻訳(ほんやく)
、出版されることが決まった。「まさかこんなことになるなんて…」。九段理江さんは、驚きながらも、笑顔で語る。(読売中高生新聞5月31日号掲載、購読は
こちら
)
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九段理江さん 「AIの文章を作品の一部に使った」。芥川賞受賞時の記者会見でそう発言したことが、さらに世の注目を高めた。執筆の間、様々な質問を対話型生成AIの「チャットGPT」に投げかけ、その回答は、作中に出てくるAIの一部のセリフに使ったという。
AIの普及で人々の思考力が
衰(おとろ)
えた様子を描くこの小説の創作に、あえてAIを使ったのは「どんな悩みもいつでも気軽に質問できる」からだ。ただ、実際に使ってみて、こう感じたという。「あくまでAIは道具。考え続けるのは、人間自身でなければならない」
「もっと本が読みたい」 中高生時代から、常に自分の中にある問いと真剣に向き合ってきた。 中学3年の時に両親が離婚し、母と姉との3人暮らしになった。高校時代は家計を助けるため、アルバイトに明け暮れる日々。「もっと本が読みたい。勉強がしたい」。そう思いながら過ごしていたという。 ただ、何より自分を苦しめたのは「自分はなぜ生まれたのか?」という問いだった。一時は不登校ぎみになるほど、深く悩んでいたという。
そんな日常を、本が変えてくれた。学校の相談室にあった児童心理学の本に、同じ悩みが書いてあるのを見つけたのだ。「自分の悩みは、大したことではないのかも」。以来、読書は救いとなり、
太宰治(だざいおさむ)
の小説「
斜陽(しゃよう)
」「人間失格」などを夢中で読んだ。
書き手としてデビューしてから、約3年。人間の知能を上回るかもしれないと言われるAIをテーマにした小説で、今度は自ら世に問いを投げかけ、国内外の多くの人の心を揺さぶっている。 「悩んでいる時間は無駄じゃなかった。私は、すぐに答えが出なくてもいいと思うんです」。悩みながら、書き続ける。 (文・武田裕芸 写真・安川純)
くだん・りえ
1990年9月27日生まれ。埼玉県出身。2021年に「悪い音楽」で文学界新人賞を受けて作家デビュー。23年に「Schoolgirl」で芸術
選奨(せんしょう)
文部科学大臣新人賞を、「しをかくうま」で野間文芸新人賞を受賞。24年に「東京都同情塔」で芥川賞を受賞した。
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