結成から18年、日本を代表する室内楽団に成長したウェールズ弦楽四重奏団が、6月に東京・赤坂のサントリーホールで開かれる「チェンバーミュージック・ガーデン2024」で、ベートーベンの弦楽四重奏曲全16曲を6回で弾ききる。サイクル演奏会に挑む意気込みを4人に語ってもらった。(松本良一)

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(左から)崎谷直人、三原久遠、横溝耕一、富岡廉太郎=青木久雄撮影(左から)崎谷直人、三原久遠、横溝耕一、富岡廉太郎=青木久雄撮影
 バイオリンの崎谷直人(37)と三原
久遠(ひさお)
(34)、ビオラの横溝耕一(37)、チェロの富岡廉太郎(37)の4人は、若手リーダー格として息の合った合奏を聴かせてきた。その演奏スタイルは鋭い感性と独特の解釈が持ち味で唯一無二の個性を放つ。ラテン語で「真実の」を意味する「verus」から命名されたカルテット名は、だてではない。

 もっとも、「あえて奇をてらったことをしているわけではない」(富岡)、「自然に感じたことを忠実に表現しているだけ」(崎谷)という言葉に偽りはない。彼らの個性は「自分の演奏に確信が持てるまで、じっくり時間をかけて楽譜と向き合う」(三原)ことから生まれる。その点で「4人は完全に一致している」(横溝)と言い切る。 ベートーベンの弦楽四重奏曲はこれまでに2回、全曲演奏を行った。ただし、いずれも数年かけての取り組みで、今回のような短期間での連続演奏は大きなチャレンジとなる。楽聖の青春時代から最晩年まで、その生涯を駆け抜ける。「初めてのフルマラソン。気負い過ぎることなく、自分たちのペースで濃密な時間を楽しみたい」(横溝)。 2017年から進めている全曲録音も残すところあと数曲になった。これまでに録音・発売されたCD(フォンテック)は、その特異で先鋭的なスタイルが話題となったが「僕たちはその時々にベストと思う演奏に集中しているので、時を経るにつれてどんどん変わっている」(崎谷)。コンサートは一味も二味も違うものになりそうだ。 今後の抱負を尋ねると「四重奏を続けていくこと」というシンプルな答えが返ってきた。4人はオーケストラでの仕事も多く、忙しい日々を送るが、良い演奏は時間をかけなければ生まれないと口をそろえる。 「音楽に正解はないし、上達への近道もない。四重奏は究極のアンサンブルで一生の仕事です」(三原)。この正直いちずな態度が、彼らの一番の財産だろう。 6月8日午後6時、9日同5時、11、12、13日は同7時、15日同6時、サントリーホールブルーローズ。(電)0570・55・0017。