塾にも行かず、独学でハーバード大学を目指したバイオリニストの廣津留すみれさん(30)。受験前の1年は、目が回るほど忙しい毎日だったと振り返る。(読売中高生新聞編集室 隅谷真)
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記憶がない「高3」
廣津留すみれさん 「高校3年の記憶は正直ほとんどありません。そのくらい毎日忙しくて、必死に勉強してました。共通テストのSAT(大学進学適性試験)の勉強はもちろん、必要な書類は全て英語で作りました。それまで学んできた科目も全部、英語で学び直し。少なくとも1万5000語以上の英単語を覚える必要があったので、オリジナルの単語帳をつくって、暇さえあれば頭にたたき込んでました。
SATは国内でも受験が可能で、面接もオンラインで受けられました。高3の12月、メールで合格通知を受け取りました。前夜から一睡もできませんでしたが、メールを開けた瞬間に家族で大喜び!! すぐに学校に行き、先生や友だちにも報告しました。みんな喜んでくれたのが本当にうれしくて、今も忘れられません」
入学間もない頃は、得意だったはずの英語で苦労したという。 「しばらくは『言葉の壁』に苦しみました。授業は理解できるのですが、会話になるとスピードは速いし、スラングも多くて、全くついていけない。友人や教授とスムーズにコミュニケーションが取れるようになるまでには1年くらいかかりましたね。
授業で出される課題もとにかく多くて、はじめは大変でした。大学の図書館は24時間開いているので、『住んでるんじゃないの?』ってほど入り
浸(びた)
って勉強しました。それでも、勉強にも、学外での活動にも全力で取り組む友人たちと過ごす時間はとても刺激的で、かけがえのない経験をさせてもらいました」
「迷惑メールかと思った」一通のお誘い
バイオリンがつないだ縁で、人生を変える出会いにも恵まれた。
世界的なチェロ奏者ヨーヨー・マ(中央)との出会いが、その後の人生を大きく決定づけた(本人提供)
「すごい人たちは学内にたくさんいたけど、バイオリンが
弾(ひ)
ける人は多くなかったので、パーティーやイベントなどの演奏依頼が
頻繁(ひんぱん)
にありました。それを偶然聴いていたのが、世界的なチェロ奏者でハーバードOBでもあるヨーヨー・マの関係者でした。私の演奏を高く評価してくれたようで、大学3年のとき、ヨーヨー・マが主宰するアンサンブルのディレクターから『学内のホールで演奏するから一緒にやらないか』とメールが届いたんです。はじめは迷惑メールなんじゃないかと思うくらいびっくりしました(笑)。
ヨーヨー・マと演奏して感じたのは、共演者の力を引き出す能力の高さです。決して自分の考えを押しつけず、みんなの意見に耳を傾け、最後は素晴らしい演奏にまとめあげる。また、彼が率いる『シルクロード・アンサンブル』は、世界各国の楽器を使って、伝統音楽をアレンジした曲を演奏することもありました。ただ聞かせるだけじゃなくて、音楽を通じてその国の歴史やストーリーを伝える。音楽の持つ大きな力を改めて感じさせてもらいました」
大学卒業を控え、音楽家として生きていくことを決意する。
もっと音楽を突き詰めたいと進学したジュリアード音楽院での一枚(本人提供) 「ハーバードでのさまざまな経験や出会いを通じて、音楽をもっと突き詰めてみたいと思うようになりました。せっかくバイオリンが弾けるのだから、それを無駄にしたらもったいない。卒業後は世界トップの音楽大学、ジュリアード音楽院の修士課程に進んで、音楽漬けの日々を送りました。あの時期、好きなバイオリンととことん向き合ったからこそ、今の自分があると思っています。
ジュリアード音楽院では音楽漬けの日々を送った(本人提供) 中高生の頃は周りに影響されて、自分のやりたいこと、興味のあることに踏み込めない人も多いと思います。でも、自分が『これだ』と思えるものを見つけたら、徹底してやり抜くべきです。私の場合は、それがバイオリンと英語でした。 私は決して天才ではなく、小さなことを着実に積み上げてきただけです。ただ、人一倍負けず嫌いで、途中で投げ出さなかった。皆さんも、自分には200%の可能性があると信じて、色々なことに挑戦してみてください」
(おわり。次回はお笑いコンビ・
麒麟(きりん)
の田村裕さん)
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