落語を研究しているシドニー大学准教授のマシュー・ショアーズさん(46)が5月31日、「キーン先生による日本文学の評価そして落語」と題し、早稲田大学小野記念講堂(新宿区)で講演する。ショアーズさんは、日本文学の魅力を世界に広めたドナルド・キーンさん(1922~2019年)の孫弟子で、日本語で行う講演では、「落語は文学である」という自身の研究テーマについて語る。(編集委員・森太)達者な日本語で「1番バッター」に
落語研究をしている早稲田大学演劇博物館前で笑顔を見せるマシュー・ショアーズさん(15日)=森太撮影 今回の講演は、ドナルド・キーン記念財団(北区)が今後継続的に開くレクチャーシリーズの1回目となる。「1番バッター、緊張しますねえ。でも4番バッターではないですから」。早大近くの喫茶店で、ショアーズさんが笑顔で語り始めた。上方落語の師匠のもとで落語を修業しただけあって、日本語は達者だ。
ショアーズさんは、「去年、文学としての落語というテーマの英語論文を発表しましたが、まだまだ研究中です。どのように落語を文学として説明すればいいのか。たくさんの人に講演に来てもらい、一緒に考える機会になればうれしいですね」と話す。 ショアーズさんは、早大の客員研究員として1月から半年間の予定で滞在中で、同大演劇博物館などで研究している。米オレゴン州出身、同州のポートランド州立大学で日本語を学んだ。そこで、歌舞伎や狂言といった日本の伝統芸能を、実技を重視して教えていた恩師のローレンス・コミンズ教授(当時)に出会った。
コミンズさんは、キーンさんの
愛(まな)
弟子であり、退官後の現在はドナルド・キーン記念財団の評議員を務めている。
五代目文枝の「弟子」に ただ、ショアーズさんは、大学時代は落語という言葉すら知らなかった。日本文化を学ぶために2002年から奈良市の帝塚山大学大学院に留学した時、大阪や京都で行われる上方落語に出会う。 民俗芸能などの研究者、森永道夫元学長が面倒を見てくれた。「とにかくたくさんの芸能を見なさい」と、森永さんに言われたショアーズさんは、歌舞伎や文楽、踊りなどに毎週通った。その中から「落語を研究したい」と強く思った。
ある日、森永さんから、上方落語界の四天王の一人と言われた五代目桂文枝さんを紹介され、文枝師匠のもとで見習いができることになった。「
加登利千光満津都(かとりせんこうマット)
という芸名をもらいました」。ショアーズさんは、いつもマットと呼ばれていたからだ。「2002年から2年間、楽屋でお手伝いをしたり、遠征のお供をしたりしました」
染丸師匠からもらった芸名は…
今月8日、東京大学で落語を披露するショアーズさん(東京大学工学系研究科日本語教室提供)
文枝師匠は、05年に他界。その後、ショアーズさんは10年から2年間、四代目林家染丸師匠のもとで修業した。「今度はかっこいい芸名を期待していたのですが、玄関
真人(マット)
になりました」。不服そうにしていると、師匠は「頑張ったら、トイレマットや」と言う。ショアーズさんは「師匠の自宅のトイレは2階にありました。『上がっとるやろ』って」と笑った。
染丸師匠は稽古をつけてくれ、ショアーズさんは高座で、「酒の
粕(かす)
」を演じることを許され、今も機会があれば日英両言語で披露する。
「僕は、外から見た落語だけでなく、
噺(はなし)
家の世界に入り、中から見た落語も研究したかった」。それは、尊敬するキーンさん、コミンズさんがたどった道でもある。
講演は、午後6時から。入場無料。
詳細は
こちら
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