兼島拓也さん兼島拓也さん 沖縄在住で気鋭の劇作家・兼島拓也さん(35)が手がけた演劇「ライカムで待っとく」が6月、九州・沖縄で初上演される。観客をフィクションの世界に引き込み、沖縄の歴史や基地問題を人ごとではなく当事者として考えるきっかけを提示する斬新な演出だ。観客は立場や考え方の違いを超えて、沖縄の過去と現在、未来を見つめ直すこととなる。(井上裕介)

 神奈川県の雑誌記者が、60年前に実際に起きた米兵殺傷事件の取材で沖縄を訪れる。調査を進めて記事を書くうちに、事件の当事者である沖縄の若者たちが生きる過去の世界に入り込んでしまう。今を生きる記者は、彼らとのやり取りを通して首里城明け渡し、沖縄戦、アメリカ占領下といった歴史をたどってゆく。 前半は、島言葉でのテンポのよい掛け合いが笑いを誘うのだが、徐々に沖縄の問題について核心を突くセリフが織り込まれる。 「沖縄の人の苦しみに寄り添いたい。内地と沖縄の間に引かれた境界線を壊したい」と沖縄への共感を口にする記者に対し、沖縄で出会ったタクシー運転手は静かに答える。
 「境界線なんかじゃなくて、水平線みたいなものさ。歩いても歩いても、泳いでも泳いでも近づかなくて、いつまで
経(た)
っても越えられない」
 そして終盤には、危機に直面する記者に対し、運転手は「悲しいですか? 寄り添いますよ? あなた方も、いつもそうしてきたでしょう?」と痛烈な皮肉で返す。 物語が展開するライカムは、沖縄本島中部の北中城村に置かれていた琉球米軍司令部の略称。跡地には現在、大型ショッピングモールが立っている。快適な店舗が日本で、裏にあって見えないバックヤードが沖縄だというメタファー(隠喩)となっている。 兼島さんは「メタファーやフィクションは、私たちの認識を形作っている現実に裂け目を入れる機能を持っている」と語る。 1 2

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