政府は、「日本版GPS」と呼ばれる準天頂衛星「みちびき」を活用し、森林火災による大気汚染が深刻なタイで消火支援に乗り出す。電波が不安定になり得る携帯電話ではなく、衛星を介して出火情報を伝達し、円滑な通報を目指す。迅速な消火活動につなげ、健康被害をもたらす物質の飛散を食い止めたい狙いがある。
準天頂衛星「みちびき」を使った火災情報伝達のイメージ 政府は2022年末から、タイ・チェンマイ近郊のスリランナ国立公園で、みちびきを使った支援に関する実証事業を始めている。公園内にセンサーを設置し、煙を検知すると、センサーが煙の位置や火災の規模などに関する情報を発信。情報は、いったん日本国内の地上局を経由してみちびきに転送され、みちびきから公園内にいる消火部隊のスマートウォッチ(腕時計型端末)の専用受信機に通報される仕組みだ。
みちびきは米国のGPSと異なり、宇宙から位置情報だけでなく、テキストメッセージも送ることができる。日本や東南アジア周辺の上空を飛び、山や建物に遮られることなく電波を送れるため、携帯電話の電波がつながりにくい国立公園内にもメッセージを届けられる。 タイでは北部や東北部を中心に、山火事や農村部の野焼きの影響による大気汚染が社会問題化している。発がん性のある微小粒子状物質(PM2・5)の濃度が安全基準を超えることも多く、ぜんそくなどの健康被害が続出している。同国のセター首相は、今年3月、公園内の実証事業を視察しており、日本政府はタイとの連携をさらに進め、早期の実用化を目指す。 日本政府には、支援活動を通じ、日本企業の機器・システムの販路拡大に結びつけたい期待もある。煙を感知するセンサー開発はソニーグループが、消火部隊への情報連絡システム構築はNTTデータがそれぞれ担当している。政府はこの事業を契機に、将来的にはタイ全域や他国でも日本企業のビジネスチャンスを広げたい考えだ。
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