評・郷原佳以(仏文学者・東京大教授)
二人の人がいれば、必ずどちらかが先に旅立つ。伴侶の死を経験した人は数知れない。しかし、その苦しみを分かち合おうとする試みは十分にあっただろうか。
『〈共働き・共育て〉世代の本音 新しいキャリア観が社会を変える』本道敦子/山谷真名/和田みゆき著
永田和宏と河野裕子は著名な歌人夫婦だった。河野は2010年、長い闘病の末に亡くなった。永田はこれまでその経験を詠み、語り続けてきたが、本書での向き合い方は少し違う。自分と同様に最愛の伴侶を失った人、また多くの患者を
看取(みと)
った人と語り合うことで、亡き妻との思い出に立ち返るのだ。対談相手のうち二人は医師、二人は作家と歌人だ。そのうち三人は伴侶を
癌(がん)
で亡くしている。
しかし本書はけっして、伴侶の癌がわかったとき、伴侶を亡くしたときはこうすればよい、という指南書ではない。本書に読まれるのはただ、自分たちはこうだった、という話だけだ。たとえば最初の対談相手、作家の小池真理子は同業の夫、藤田宜永を亡くした点で永田と共通しているが、伴侶の癌がわかったときに両夫婦が行ったことは対照的である。しかしいずれからも浮かび上がってくるのは本物の愛である。これは愛の本である。(インターナショナル新書、979円)
読書委員プロフィル
郷原 佳以(
ごうはら・かい
)
1975年生まれ。仏文学者、東京大教授。著書に『文学のミニマル・イメージ』、訳書に『ヴェール』など。パリ第7大博士課程修了。
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