都市から遠く離れた土地の風土や文化を五感で味わう食のあり方を「辺境ガストロノミー」と名付けました。

一軒の料理店を目指してはるばる出掛ける── そんな贅沢な旅の喜びを熟知した食通の方々に教わる、唯一無二の美味をご案内します。

今回は、ガストロノミープロデューサー・柏原光太郎さんが推薦するお店。富山・射水(いみず)にある鮨オーベルジュ橋場です。

推薦してくださったのは……

柏原光太郎さん
かしわばらこうたろう〇著書に『日本人の9割は知らない 世界の富裕層は日本で何を食べているのか?』(ダイヤモンド社)など。食を軸に地方創生、コミュニティ創成を推進中。

“奇跡の海”富山湾の「いま」を握る寿司橋場Akira Yuasa

立山連峰を見渡す名勝・雨晴海岸もほど近い。


「ミシュランの常連店だった『鮨さいとう』で修業し、麻布で 『鮨しゅんじ』として独立。あっという間に予約の取れない人気店を作り上げた橋場俊治さんが、2026年5月、妻の彩子さんの故郷・富山に開いた寿司オーベルジュです。

毎日、氷見や射水の市場に通い、自分の目で選んだ富山湾の魚しか使わない。ここにきて、魚の雌雄にもこだわるようになったという橋場さんの寿司がどう進化していくのか、ますます楽しみです」と柏原光太郎さん。

そこは、2階の客室から富山湾を望む射水市新湊の海辺に建つオーベルジュ。全国各地を巡った橋場さんが“奇跡の海”と呼ぶ富山湾は、その独特の地形から豊かな栄養分に恵まれ、多様な魚種が揃う海。「魚が水揚げされる港のそばで寿司を握りたい」と考えていた橋場さんにとって、まさに理想のロケーションでした。

橋場Akira Yuasa

神津島で育ち、幼いころから釣りが大好きで、新鮮な魚の旨さをよく知る橋場さん。今後は東京と富山の2拠点で握る。

「魚は熟成させることで引き出せる旨みもあります。でも新湊では、朝獲れの魚だからこそ感じられる香りや食感、脂の甘みがある。そういう魚のもち味を生かして握れることが、この土地で鮨をやる面白さだと思っています」と橋場さん。

その言葉通り、たとえば足の早い白海老も、ここならば抜群の鮮度を保ち、得も言われぬ上品な甘みととろける食感が楽しめる極上の一貫になります。また、「朝夕に港町を歩いて、土地の空気を感じ、美しい海を見てほしい」と橋場さん。風土が丸ごとごちそうです。

橋場Akira Yuasa

宿からわずか3分の新湊漁港で水揚げされた、「富山湾の宝石」と称される白海老の寿司。一貫に約30匹も使用される。漁期は4月~11月。


橋場Akira Yuasa

〈左〉のどぐろを薪であぶり、山で摘んだ木の芽でこしらえた佃煮を添えて。〈右〉期間限定の稀少なネタ、氷見の新いか(すみいかの幼魚)。独特の食感と旨みを塩でさっぱりといただく。魚はすべて朝獲れの鮮度抜群のもの。朝食も朝の市場で仕入れた魚が間に合う。


橋場Akira Yuasa

身が締まった富山湾沿岸のさざえを、山椒オイルや鮎の魚醬でいただくひと皿。妻でソムリエの彩子さんがセレクトしたワインとともに。


橋場Akira Yuasa

富山県産栃の木の一枚板のカウンターを備えた6席のみのダイニング。


橋場Akira Yuasa

食後にゆっくりできるワインルーム。


橋場Akira Yuasa

スパルームにはサウナのほか、海を望む湯船や檜の水風呂も備わる。


橋場

Akira Yuasa

DATA
一泊2食付き2名1室の1名料金149,439円~(サ込)
IN15時 OUT11時 全3室
※3カ月前から要予約

Google mapで確認
富山県射水市港町5-1

鮨オーベルジュ 橋場

「辺境ガストロノミー」とは?

1. 自分でとる
 ──料理人自ら自然を耕し、ときに漁や狩りに出掛けて得た珠玉の素材や獲物で料理を作ること

2. 地域固有の素材
 ──地域の卓越した目利きや生産者との絆による、貴重な野生・固有の素材が主役であること

3. 郷土食の再解釈
 ──その土地に伝わる伝統料理や先人の知恵を、現代的な感性で再解釈したひと皿を作ること

撮影=湯浅 啓 編集・文=須田秀子(婦人画報編集部)

『婦人画報』2026年11月号より

〇選りすぐりの記事を毎週お届け。『婦人画報』メールマガジン(無料)ご登録はこちら

○この記事をプレゼントできます!詳細はこちら

■ 特集 「辺境ガストロノミー」 を旅する

・野山[長野・伊那]
・Né[新潟・新発田]
・TSUKIHI[福井・越前]
・KOKI[山梨・道志]
・鮨オーベルジュ 橋場[富山・射水](この記事)
・sowai[岡山・牛窓](10/24公開予定)
・極私的「地方発、忘れられない味」(10/28公開予定)

Share.