
広島県のホテルが2026年10月に販売している食事プランを、同一ホテル内で素泊まりと朝食付を両方売っている施設だけに絞って比べると、朝食付の上乗せ率はシティホテルが+16.8%(N=22)、ビジネスホテルが+9.5%(N=66)と、業態で7.3ptの開きがある。ところが朝食付と2食付の段差に目を移すと、シティ+22.6%(N=13)に対してビジネスは+27.3%(N=21)と順位が入れ替わる。朝食で開いた業態差が夕食で逆転するこの形は、5月時点では存在しなかった。本稿は月次推移、近隣8県との比較、広島市中区など市区単位の深掘り、1名利用との差を重ね、食事プランの段差をどう設計するかを広島の運営者向けに読み解く。
対象: 広島県のシティホテル・ビジネスホテル(旅館は対象外)。食事プラン別の上乗せ率は、同一ホテル内で比較対象の両プランを販売している施設だけを集計したペア比較(2名利用・2026年10月宿泊分)で、N=はペアが成立した施設数。参考として示す価格指標は推定成約ADR(OTA等の販売データから推定される成約価格水準・税抜相当)。いずれも定義は記事末尾。データ時点: 2026年10月15日。
Key Takeaways
— 朝食付の上乗せ率はシティ+16.8%(N=22)・ビジネス+9.5%(N=66)。同一ホテル内ペア比較(2名利用・2026年10月宿泊分)で業態差は7.3pt、5月の3.1ptから広がった。
— 2食付と朝食付の段差はシティ+22.6%(N=13)・ビジネス+27.3%(N=21)で序列が逆転。ビジネスの積み増しではなく、シティの夕食段差が5月+27.9%から縮んだ結果。
— 近隣9県で広島のシティ朝食は4番目、シティ2食付の段差は6県中最も薄い。兵庫+43.1%・岡山+32.9%は広島の1.5〜1.9倍。
— 市区では中区シティ+25.4%(N=6)が厚く、東区+1.0%・東広島−0.5%はほぼゼロ。1名利用ではシティの2食付段差が+4.1%(N=11)まで縮む。
— 食事差額(円)を据え置いたまま客室価格が+18.9%上がると、シティ朝食の率は16.8%→14.1%に目減りする。客室改定と同じ周期で食事差額も見直したい。
同一ホテル内のペア比較 — 朝食は業態差7.3pt、2食付で順位が入れ替わる
まず手法を確認しておきたい。本稿の「上乗せ率」は、県内の全ホテルの朝食付プランと素泊まりプランを単純平均して比べたものではない。同じホテルが同じ月に素泊まりと朝食付の両方を販売している場合に限り、その施設内での差額を求め、ペアが成立した施設の平均をとっている。朝食付しか売らない高単価ホテルや素泊まり専業の低単価ホテルが混ざると、業態の価格水準の違いが「朝食の価値」に化けてしまうためで、同一施設内の比較に限定することでプランの段差そのものを取り出している。旅館は食事込みが基本で素泊まりとのペアが成立しにくいため対象から外している。
この方法で2026年10月宿泊分を業態別に並べたのが表1である。朝食付と素泊まりの差はシティホテル+16.8%(N=22)、ビジネスホテル+9.5%(N=66)、両業態を含む全体で+12.2%(N=90)となり、単価の高いシティホテルほど朝食の上乗せ率も大きい。一方で朝食付と2食付の差はシティ+22.6%(N=13)、ビジネス+27.3%(N=21)と、ビジネスホテルの方が4.7pt大きく、朝食で見た業態の序列がここで入れ替わっている。素泊まりから2食付までを一気に見た上乗せ率はシティ+43.7%、ビジネス+39.9%(いずれもN=13・21)で、合計ではシティがなお上回るものの、その差は3.8ptまで縮む。
表1 広島県 食事プラン別の上乗せ率(同一ホテル内ペア比較・2名利用・2026年10月)
業態朝食付 vs 素泊まり2食付 vs 朝食付2食付 vs 素泊まり
シティホテル+16.8%(N=22)+22.6%(N=13)+43.7%(N=13)
ビジネスホテル+9.5%(N=66)+27.3%(N=21)+39.9%(N=21)
全体(シティ+ビジネス等)+12.2%(N=90)+23.6%(N=36)+40.7%(N=36)
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成。N=は両プランを販売する施設のペア数。全体には両業態のほか少数のリゾート系施設を含む。
図1 広島県 食事プラン段差の業態比較(2026年10月・2名利用)。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
この逆転をどう読むか。朝食の上乗せ率が単価の高い業態ほど大きいのは、朝食会場や料理の内容が宿泊単価に見合う形で差別化されやすく、素泊まりとの差額も大きく取れるためと考えられる。これに対して夕食は、シティホテルでは館内レストランの単品利用や外食との競合が強く、2食付プランの差額を朝食ほど強気に設定しにくい。ビジネスホテルの2食付は提供施設自体が限られる(N=21と朝食ペアの3分の1)ものの、夕食を付ける施設では素泊まり基準価格が低い分、同じ食事原価でも率としては大きく見えるという算術的な要因も効いている。率で見た「逆転」の背景には、業態ごとの基準価格の違いが織り込まれている点を押さえておきたい。
5〜10月の月次推移 — 朝食はシティが積み増し、2食付はシティが縮んだ
次に、この形が季節で揺れるものなのか、それとも構造的なものなのかを月次で確かめたい。図2は5月から10月の各宿泊月について、朝食付と2食付の上乗せ率を業態別に重ねたものである。朝食付の上乗せ率はシティホテルが5月+13.4%から10月+16.8%へと3.4pt積み増したのに対し、ビジネスホテルは5月+10.3%から10月+9.5%へとわずかに後退しており、業態差は5月の3.1ptから10月の7.3ptへと期間中で最も開いた。ペア数はシティがいずれの月もN=22、ビジネスがN=65〜69で安定しているため、母集団の入れ替わりではなく同じ施設群の設定変化として読める。
図2 広島県 上乗せ率の月次推移(2026年5〜10月宿泊分・2名利用)。シティ朝食 N=22、ビジネス朝食 N=65〜69、シティ2食付 N=12〜14、ビジネス2食付 N=21〜23。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
一方で2食付と朝食付の段差は逆の動きをしている。5月時点ではシティ+27.9%(N=12)とビジネス+27.7%(N=22)がほぼ並んでいたが、シティは6〜7月に+30%台へ上がったあと8月以降に縮み、10月は+22.6%(N=13)まで下げた。ビジネスは5月から10月まで+26.9〜29.7%の狭い帯に収まっており、10月+27.3%(N=21)は5月とほぼ同水準である。つまり10月に見える「2食付の逆転」は、ビジネスが積み増した結果ではなく、シティホテルの夕食段差が秋に向けて薄くなった結果だといえる。
表2 広島県 上乗せ率の月次推移(同一ホテル内ペア比較・2名利用)
宿泊月シティ 朝食付/素泊まりビジネス 朝食付/素泊まりシティ 2食付/朝食付ビジネス 2食付/朝食付
2026年5月+13.4%(N=22)+10.3%(N=66)+27.9%(N=12)+27.7%(N=22)
6月+16.9%(N=22)+12.8%(N=69)+30.4%(N=14)+28.9%(N=23)
7月+15.4%(N=22)+11.6%(N=68)+30.3%(N=14)+29.7%(N=22)
8月+14.4%(N=22)+10.5%(N=68)+26.7%(N=14)+27.7%(N=23)
9月+15.7%(N=22)+10.6%(N=65)+26.5%(N=14)+26.9%(N=21)
10月+16.8%(N=22)+9.5%(N=66)+22.6%(N=13)+27.3%(N=21)
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成。10月は現時点の販売状況に基づく値で、月末までに変動し得る。
背景にあるのは、秋の広島に向けた客室単価の動きだろう。参考までに推定成約ADR(税抜相当)を確定月同士で比べると、広島県シティホテルの2026年9月は¥12,900(N=31)で前年同月の¥10,800(N=29)から+18.9%、ビジネスホテルは¥8,600(N=187)で前年同月の¥7,600(N=186)から+12.1%と、いずれも二桁の上昇を確定させている。客室の基準価格が上がる局面では、食事の差額を据え置けば率は自動的に薄くなる。シティホテルの2食付段差が秋に縮んだのは、夕食の差額を削ったというより、客室側の値上げに夕食側の差額が追随していない結果と読むのが自然である。広島県の推定成約ADRが前年比プラスへ転じた経緯と2026年の新規供給の中身は、広島県2026年開業1,003室の供給分析で追っている。
近隣8県との比較 — 広島の朝食は中位、2食付の段差は最も薄い
では広島の段差は周辺と比べてどの位置にあるのか。同じ手法で中国・四国と兵庫・福岡の計9県を2026年10月宿泊分で並べたのが図3と表3である。シティホテルの朝食付上乗せ率は兵庫+21.0%(N=37)を筆頭に鳥取+19.1%(N=7)、島根+18.6%(N=5)と続き、広島+16.8%(N=22)は9県の中で4番目に位置する。下位には山口+11.0%(N=5)、岡山+10.3%(N=14)が並び、瀬戸内の隣県である岡山とは6.5ptの差がある。ビジネスホテルの朝食付は兵庫と鳥取の+13.9%(N=69・21)、岡山+11.3%(N=40)に対して広島+9.5%(N=66)は5番目で、ここでも中位にとどまる。全国47都道府県まで視野を広げると、県の順位が業態をまたいだ途端に入れ替わる様子は朝食プレミアム全国47都道府県の横断比較で確認できる。
図3 朝食付 vs 素泊まりの上乗せ率・9県比較(2026年10月・2名利用)。N=は表3を参照。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
表3 近隣9県の食事プラン上乗せ率(同一ホテル内ペア比較・2名利用・2026年10月)
県シティ 朝食付/素泊まりビジネス 朝食付/素泊まりシティ 2食付/朝食付ビジネス 2食付/朝食付
広島県+16.8%(N=22)+9.5%(N=66)+22.6%(N=13)+27.3%(N=21)
岡山県+10.3%(N=14)+11.3%(N=40)+32.9%(N=10)+26.8%(N=11)
山口県+11.0%(N=5)+6.1%(N=44)—+32.3%(N=23)
島根県+18.6%(N=5)+9.8%(N=26)—+36.4%(N=7)
鳥取県+19.1%(N=7)+13.9%(N=21)—+26.3%(N=13)
愛媛県+14.4%(N=18)+7.6%(N=38)+37.9%(N=8)+30.2%(N=11)
香川県+15.4%(N=9)+7.2%(N=27)+66.7%(N=6)+26.6%(N=10)
兵庫県+21.0%(N=37)+13.9%(N=69)+43.1%(N=25)+30.9%(N=19)
福岡県+15.2%(N=30)+7.7%(N=144)+23.6%(N=18)+29.2%(N=52)
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成。「—」はペア数が5未満のため非表示。
2食付と朝食付の段差に目を移すと、広島の位置はさらにはっきりする。シティホテルではペアが5以上成立した6県のうち広島+22.6%(N=13)は最も薄く、福岡+23.6%(N=18)と並んで20%台前半にとどまる一方、兵庫は+43.1%(N=25)、岡山は+32.9%(N=10)と広島の1.5〜1.9倍の段差を付けている。ビジネスホテルでも広島+27.3%(N=21)は9県中6番目で、島根+36.4%(N=7)や山口+32.3%(N=23)に比べると夕食の差額を控えめに置いている。9月宿泊分で同じ比較をしてもシティ朝食は9県中6番目、シティ2食付は6県中5番目と、順位の大枠は変わらない。広島は「朝食の段差は周辺並み、夕食の段差は周辺より薄い」県だと整理できる。隣県の山口が朝食で薄い段差を夕食側で補う構図については、山口のビジネスホテルの食事プレミアム分析が詳しく掘り下げている。
この薄さの一因は、広島市中心部の外食集積にあると考えられる。お好み焼きや瀬戸内の魚介を目当てに街へ出る宿泊者が多いエリアでは、館内の夕食に高い差額を付けても選ばれにくく、ホテル側も2食付を主力にしにくい。シティホテルの2食付ペアがN=13と朝食ペアの6割にとどまること自体が、夕食を付けて売る施設が限られている事実を示している。
市区別の深掘り — 中区は県平均を上回り、東広島・東区は朝食の段差がほぼない
県単位の平均は、エリアごとの違いを均してしまう。ペアが5施設以上成立した市区に絞って朝食付の上乗せ率を見ると、広島市中区はシティホテル+25.4%(N=6)、ビジネスホテル+14.1%(N=17)、業態をまとめた全体で+18.2%(N=23)と、いずれも県の業態平均(シティ+16.8%・ビジネス+9.5%)を上回っている。広島駅周辺を含む南区も全体+18.5%(N=7)と中区に並ぶ水準で、市中心部の2区は朝食の段差を厚く取れている。
表4 広島県 市区別の朝食付上乗せ率(同一ホテル内ペア比較・2名利用・2026年10月・ペア5以上)
市区業態朝食付 vs 素泊まりペア数
広島市中区シティホテル+25.4%N=6
広島市中区ビジネスホテル+14.1%N=17
広島市中区全体+18.2%N=23
広島市南区全体+18.5%N=7
福山市ビジネスホテル+15.6%N=15
尾道市ビジネスホテル+11.7%N=6
呉市全体+9.6%N=6
広島市東区ビジネスホテル+1.0%N=6
東広島市ビジネスホテル−0.5%N=7
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成。市区の「全体」は当該市区で集計対象となった全業態の合算。
対照的なのが東部と郊外である。福山市のビジネスホテルは+15.6%(N=15)と県のビジネス平均を6.1pt上回り、新幹線駅を抱える出張需要の街で朝食付が定着していることをうかがわせる。一方で広島市東区のビジネスホテルは+1.0%(N=6)、東広島市は−0.5%(N=7)と、朝食付と素泊まりがほぼ同額で売られている。朝食を実質無料に近い形で付けて素泊まりとの差を消す販売は、朝食を集客の道具として使う設計であり、差額で収益を取る中区・福山とは発想が異なる。尾道市は朝食付+11.7%(N=6)と控えめだが、2食付と朝食付の段差は+40.9%(N=6)と県内で唯一ペアが5以上成立した市であり、観光地型の夕食需要が差額に表れている。
1名利用との差 — 朝食は人数に関係なく、夕食は2名で率が倍に開く
食事の差額は1人あたりで設定されるのが普通なので、2名利用と1名利用では上乗せ率が変わる。表5は同じ10月宿泊分を1名利用で集計し直したものである。朝食付の上乗せ率はシティホテルが1名+16.6%(N=22)、2名+16.8%(N=22)とほぼ同じで、ビジネスホテルは1名+6.4%(N=70)から2名+9.5%(N=66)へ3.1pt上がる。朝食の差額は1人あたりで設定されるため人数が倍になれば差額も倍になる一方、分母となる客室価格も人数に応じて上がる。両者の比率がどう設定されているかが率の差として表れており、シティホテルでは人数に関わらず朝食の段差をほぼ同率に揃えている一方、ビジネスホテルでは2名の方が率が厚い。
表5 広島県 利用人数別の上乗せ率(同一ホテル内ペア比較・2026年10月)
業態・比較1名利用2名利用
シティ 朝食付 vs 素泊まり+16.6%(N=22)+16.8%(N=22)
ビジネス 朝食付 vs 素泊まり+6.4%(N=70)+9.5%(N=66)
シティ 2食付 vs 朝食付+4.1%(N=11)+22.6%(N=13)
ビジネス 2食付 vs 朝食付+18.3%(N=21)+27.3%(N=21)
シティ 2食付 vs 素泊まり+22.1%(N=11)+43.7%(N=13)
ビジネス 2食付 vs 素泊まり+25.9%(N=21)+39.9%(N=21)
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成。1名と2名ではペアが成立する施設が一部異なる。
夕食側は人数の影響がはるかに大きい。シティホテルの2食付と朝食付の段差は1名+4.1%(N=11)に対して2名+22.6%(N=13)と5倍以上、ビジネスホテルも1名+18.3%から2名+27.3%(いずれもN=21)へ9.0pt開く。1名利用のシティホテルでは2食付がほとんど上乗せになっておらず、夕食付の1名プランは単身客を館内レストランへ誘導する販促価格に近い位置づけだと読める。段差の設計を考える際には、2名利用の率だけを見て1名プランにそのまま当てはめると、1名の夕食が実質的に無償に近づく点に注意が要る。
広島のシティ・ビジネスホテルを運営するレベニューマネージャーへ — 示唆とアクションプラン
運営目線のインサイト
第一に、自館の朝食付と素泊まりの差額を率に直し、業態の市場値と市区の値の両方に当ててみたい。県のシティ+16.8%・ビジネス+9.5%が基準線で、中区のシティ+25.4%・ビジネス+14.1%、福山のビジネス+15.6%が市区の物差しになる。自館の率がこれらを大きく下回るなら、朝食の差額が客室の値上げに追随していない可能性があり、逆に大きく上回るなら朝食付の選択率が落ちていないかを確かめる余地がある。
第二に、率は分母である客室価格で動く。広島県の推定成約ADRは9月確定で前年比シティ+18.9%・ビジネス+12.1%と上がっており、食事の差額を円で据え置くと率は自動的に薄くなる。シティホテルの2食付段差が5月+27.9%から10月+22.6%へ縮んだのはその典型で、差額を円で管理しているなら、客室の改定と同じ周期で食事差額も見直す運用を検討したい。
第三に、夕食の段差は広島が周辺で最も薄い領域である。兵庫+43.1%や岡山+32.9%の水準をそのまま持ち込むのは現実的ではないが、尾道の+40.9%が示すように観光動機の強い日程や客層では差額を厚く取れる場面がある。平日の出張客と週末の観光客で2食付の差額を分ける、あるいは館内の夕食に広島らしい食材を明示して外食との比較に耐える内容にするなど、段差を一律にしない設計に余地がある。
第四に、1名プランは別の物差しで見る必要がある。シティホテルの2食付段差は1名で+4.1%しかなく、2名の率をそのまま1名に写すと夕食がほぼ無償に近づく。1名の食事差額は1人分の原価に対して率がどうなるかを個別に確認したい。
こうした段差を客室改定のなかでどう扱うかを、数字で確かめておきたい。上乗せ率は「食事差額(円)÷基準プラン価格」なので、食事差額を円で据え置いたまま基準プランの価格だけが上がると、率は「現在の率÷(1+値上げ率)」へ機械的に薄まる。表6は2026年10月の業態別の率を起点に、基準プランの価格が0〜20%上がった場合の率を並べたものである。9月確定の推定成約ADRの前年比(シティ+18.9%)を当てはめると、シティの朝食付は+16.8%から+14.1%前後へ、2食付の段差は+22.6%から+19.0%前後へ下がる。ビジネスの2食付段差は基準価格が20%上がると+22.8%となり、現在のシティ(+22.6%)とほぼ同じ水準まで薄くなる。率を維持するには、食事差額も客室と同じ率で引き上げる必要がある。
表6 食事差額を円で据え置いた場合の上乗せ率の感度(基準プラン価格の上昇率別・2名利用・2026年10月起点)
業態・比較(起点のペア数)基準価格 +0%基準価格 +5%基準価格 +10%基準価格 +15%基準価格 +20%
シティ 朝食付/素泊まり(N=22)+16.8%+16.0%+15.3%+14.6%+14.0%
ビジネス 朝食付/素泊まり(N=66)+9.5%+9.0%+8.6%+8.3%+7.9%
シティ 2食付/朝食付(N=13)+22.6%+21.5%+20.5%+19.7%+18.8%
ビジネス 2食付/朝食付(N=21)+27.3%+26.0%+24.8%+23.7%+22.8%
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成。算式は 据え置き後の率=現在の率÷(1+基準プラン価格の上昇率)。食事差額(円)は一定、施設構成は2026年10月のペアのまま変わらないと仮定した機械的な試算で、将来の値を予測するものではない。
表7 アクションプラン(時間軸別)
時間軸打ち手判断トリガー(記事中の数値)狙い
今日〜今週自館の朝食付・素泊まり・2食付の差額を2名・1名それぞれ率に換算する朝食付の率がシティ+16.8%・ビジネス+9.5%(中区ならシティ+25.4%・ビジネス+14.1%)から5pt以上離れている市場との乖離の方向を把握する
今日〜今週11月宿泊分の客室改定に合わせて食事差額も円ベースで見直す9月確定の推定成約ADRが前年比シティ+18.9%・ビジネス+12.1%で上がる一方、食事差額を春から据え置いている率の目減りを防ぐ
2週間以内朝食付の選択率と差額の組み合わせを月別に並べ、率を上げても選択率が落ちていないかを確認するシティの朝食段差は5月+13.4%→10月+16.8%と市場全体で上がっている値上げ余地の有無を数で判断する
2週間以内2食付の差額を平日・週末、または出張・観光の客層で分ける広島シティの2食付段差+22.6%は近隣6県で最も薄く、尾道では+40.9%が成立している夕食需要の強い日程で段差を厚くする
来月に向けて1名プランの食事差額を1人分の原価と率で別途点検するシティの2食付段差が1名+4.1%・2名+22.6%と人数で5倍以上違う1名の夕食が無償同然になるのを避ける
来月に向けて朝食をほぼ無償で付けている場合、その目的(集客か口コミか)と効果を数字で検証する東区+1.0%・東広島−0.5%のように、素泊まりと同額で朝食を付けるエリアがある朝食を収益源にするか集客装置にするかを決める
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
まとめ — 広島の食事段差を測る3つの物差し
ここまでを整理すると、広島の食事プランの段差は次の3点で測れる。第一の物差しは朝食の業態差で、シティ+16.8%(N=22)とビジネス+9.5%(N=66)の7.3ptは5月の3.1ptから広がった。第二は夕食の段差の薄さで、シティの2食付と朝食付の差+22.6%(N=13)は近隣で最も小さく、兵庫や岡山の1.5〜1.9倍の段差とは設計思想が異なる。第三はエリアと人数の補正で、中区は朝食の段差が県平均より厚く、東広島・東区はほぼゼロ、1名利用では夕食の段差が大きく縮む。自館の率をこの3つに当てはめれば、食事プランの値付けが市場のどこに位置するかが見えてくるだろう。他県の同じ手法による分析は京都や沖縄の記事も参照されたい。
よくある質問
Q. 上乗せ率はどのように計算していますか。
A. 同じホテルが同じ宿泊月に比較対象の両方の食事プラン(例: 素泊まりと朝食付)を販売している場合に限り、その施設内での差額を率に直し、ペアが成立した施設の平均を取っています。全ホテルの単純平均ではないため、業態の価格水準の違いが混ざりません。
Q. 旅館はなぜ含まれないのですか。
A. 旅館は2食付が基本で、素泊まりや朝食付との同一施設内ペアがほとんど成立しないためです。本記事の対象はシティホテルとビジネスホテルを中心とするホテル業態に限られます。
Q. 10月の数値は確定値ですか。
A. 10月宿泊分は現時点で販売中のプランに基づく値で、月末までに変動し得ます。5〜9月は宿泊月を経過した値です。
Q. 広島の朝食の上乗せ率は近隣県と比べて高いですか。
A. 2026年10月宿泊分(2名利用)で、シティホテルの+16.8%は近隣9県の4番目、ビジネスホテルの+9.5%は5番目で、いずれも中位です。一方で2食付と朝食付の段差はシティ+22.6%と、ペアが5以上成立した6県で最も薄くなっています。
Q. 客室単価を上げたとき、食事の差額はどう扱えばよいですか。
A. 食事差額を円で据え置くと、上乗せ率は「現在の率÷(1+客室の値上げ率)」に薄まります。シティの朝食付+16.8%は基準価格が+18.9%上がると+14.1%前後になるため、率を保つには食事差額も客室と同じ率で見直す必要があります。
データについて
・食事プランの上乗せ率: OTA等で販売される食事プラン別の価格を、同一ホテル内で両プランを販売している施設だけについて比較したペア比較。N=(ペア数)は両プランが成立した施設数で、本記事ではN=5以上の値のみを引用している。旅館は対象外。1名利用・2名利用は別々に集計し、両者でペアが成立する施設は一部異なる。
・推定成約ADR: OTA等の販売データ(最安プラン水準×業態別係数・複数チャネルのアンサンブル)から推定した成約価格水準(税抜相当)。過去月は確定値、現在・未来月は現時点の販売状況に基づく推定値。公表運営実績との照合で誤差中央値6.6%。本記事では確定月(2025年9月・2026年9月)同士の前年同月比のみを参照している。
・対象N=の内訳(2026年10月・2名利用・朝食付 vs 素泊まり): 広島県シティホテル22施設、ビジネスホテル66施設、全体90施設。近隣県・市区・1名利用・他の食事ペアのN=は各表に記載。
・データ時点: 2026年10月15日。販売状況・在庫は日々変動するため、本記事の数値は取得時点のスナップショットである。
参考資料・出典一覧
■ データソース
メトロエンジンリサーチ「食事プラン別価格のペア比較」(広島県ほか近隣8県・2026年5〜10月宿泊分・1名/2名利用、シティホテル・ビジネスホテル中心、旅館は対象外)、同「推定成約ADR」(広島県シティホテル・ビジネスホテル、2025年9月・2026年9月の確定値)。いずれも2026年10月15日取得、ホテルバンク編集部が集計。
■ 試算前提
上乗せ率=同一ホテル内で比較対象の両プランを販売する施設の平均価格の比(例: 朝食付÷素泊まり−1)。N=はペアが成立した施設数で、N=5以上の値のみ引用。表6の感度は 据え置き後の率=現在の率÷(1+基準プラン価格の上昇率) とし、食事差額(円)とペア構成を2026年10月時点で固定した機械的な試算。推定成約ADRは税抜相当、前年同月比は確定月同士。
■ 限界・留意点
10月宿泊分は販売中の価格に基づき月末までに変動し得る。ペアが成立する施設は月・利用人数・食事ペアごとに一部異なり、市区別はN=5〜23と小さいため個々の施設の設定で数pt動き得る。掲載価格の比較であり、プランの販売数量(選択率)や食事原価は反映していない。上乗せ率の差の背景(外食集積・客層など)は編集部の解釈である。
■ 市場データ
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(本文の図1〜3・表1〜7)。
