特集です。いわてのコメを海外に売り込もうと奮闘する県内の農家のグループがこのほど、待ちに待った稲刈りを迎えました。メンバーは様々な思いを胸に、初めての挑戦に向き合っています。
こがね色に染まった田んぼ。この日、雫石町の農家、砂壁純也さんが稲刈りをしていました。刈り取ったのは、県のブランド米『銀河のしずく』。手塩にかけて育てた自慢のコメを今年度、初めて海外へ売り込みます。
砂壁純也さん
「全量『一等』になってますんで、量は少ない中でモノはいいなというふうに感じています」「工業製品と同じように日本の素晴らしい製品というものを海外に売り込めるチャンスは農業にまだまだあるのかなと、それを示したいというふうに思っています」
コメを輸出するプロジェクトが本格的に動き出したのは去年の冬でした。メンバーは砂壁さんのほか、かねてからの知り合い、雫石町の農家、小野寺建太さん。それに、紫波町の農家、吉田辰巳さんの3人。3人とタッグを組むのは、事業としてコメの輸出を手掛ける大阪の大手農機具メーカー、「クボタ」です。
クボタ 神田悠太さん
「コメの需要というのが年々下がってしまってきていたところもあるので、そこに対して何か手立てを打ってですね、私たちクボタグループの農業機械を使っていただいている生産者のために何かできないか」
日本国内のコメの需要は、人口の減少や食生活の多様化などを背景に減り続けています。
一方、国内で生産されたコメの輸出は、年々増えています。国のまとめによると、去年の輸出量はおよそ4万6500トン、直近5年間で2倍以上に増えました。これは、アジアを中心に日本食のレストランなど、海外での需要の開拓が進められたことによるもので、政府も交付金の制度をつくり、国策としてコメの輸出を後押ししています。
砂壁純也さん
「もう農家も任せっきりじゃなくて、ブランド化していかないと生き残る道ってだんだん数少なくなってきているので、そういう取り組みもできればしたい」
砂壁さんが手掛ける酒米の輸出を「クボタ」がサポートしていることが縁で始まった今回の挑戦。「クボタ」が玄米で輸出し、現地の工場で精米することで、安全で新鮮なコメを海外の消費者に提供できます。
初年度は、香港、シンガポール、ハワイにあわせて15トンを輸出する予定です。
神田さん
「個人的に本当に『銀河のしずく』はおいしいなと思っているところもあるので」「海外の消費者の方にも絶対うけるんじゃないかなと思っている」
雫石町。砂壁さんたちと一緒にコメの輸出に挑む小野寺さんの田んぼです。ことしは5月下旬に田植えが始まりました。グループ最年少の小野寺さんが、この道に進んだのはこんな理由でした。
小野寺さん
「大学3年生ぐらいの時に夏休みにアルバイトして農業いいなと思って…」
大学で、経営学を学んでいた小野寺さん。雫石町内の農家でアルバイトした時、コメや野菜作りの面白さを知りました。大学を卒業後、2年間の研修を経て農家としての一歩を踏み出した小野寺さん。少子高齢化や後継者不足で年々、農家の数が減る中、今回の挑戦に特別な思いを抱いています。
小野寺さん
「自分の作ったお米を海外の人に 食べてもらうっていうのはすごくやりがいのある仕事で魅力的だと思うので」「新しく農業を始める人から見ても農業って面白そうだなって思えるような取り組みをもっとしていきたい」
8月、苗は夏の陽ざしをたっぷり浴びて順調に育っていました。出来秋に期待が高まりますが、自分たちのコメが海外でどう評価されるのか…。ことし3月にハワイを視察した砂壁さんは、品質で勝負できることを肌で感じました。
砂壁さん
「スーパーに行った場合に中国だとかタイ、アメリカ、そういったお米が日本のお米と 一緒に並んでいましたが、価格的にはもう日本のお米は倍近い値段で販売されてるんです」「生活レベルの高い裕福層の人たちは値段じゃなくて好んで日本米を買っていくっていうことで、売れ行きは好調だっていうことでした」「自信をもって送り届けたいと思いました」
資材価格の高騰に「令和のコメ騒動」。市場では「コメ余り」の状況が続き、販売価格が下がり続けています。農業を取り巻く環境が厳しさを増す中での挑戦。目指すのは、農業の「存在感」を高めること、そして、安定した経営の実現です。
砂壁さん
「岩手のお米の評価を海外で得て、 国内で再評価されて、全体の農家が盛り上がるような市場になればいいなっていうふうな思いから『銀河のしずく』にこだわっています」「まだまだ世界は広いので、(日本のコメを)求めている国はあると思います。そこに徐々に輸出を増やしていけばより安定した経営、持続して拡大できる農業になるんじゃないのかなと」
農業の新しい未来を切り開く挑戦。たくさんの希望が詰まった「銀河のしずく」は年内に海を渡る予定です。
