攻撃を受けて煙が上がるバーレーンの製油所(3月9日撮影、写真:ロイター/アフロ)
(英フィナンシャル・タイムズ紙 2026年10月7日付)
イランの政治体制を迅速に転覆させることを狙った戦争が今、8カ月目に入っており、終わる兆しは全く見えない。次はどんな展開になるのか。
筆者がとりあえず下す結論は、人間の愚かさや創意工夫を過少評価すべきではないというものだ。
ここまでは後味の悪い引き分けだ。この状況はこの先どれくらい続くのか。それが問題だ。
人間の愚かさと創意工夫
米シカゴ大学のジョン・ミアシャイマーは手厳しい分析で、イランとの戦争を「すべての戦略的大失策の母」と評している。
その分析では数々の要因を指摘した。
米国はまず、イランが間もなく核兵器を手に入れるという誤った主張に基づいて戦争に突入した。空軍力だけで体制を転換させられると読み、作戦は奏功しなかった。
また、イランがホルムズ海峡封鎖の挙に出た時にどうするかという緊急時対策を用意していなかった。
4つの主な目的――体制の転覆、イランの核濃縮能力の根絶、長距離ミサイル発射能力の根絶、そしてハマス、ヒズボラ、フーシ派のような武装組織への支援根絶――はいずれも達成できていない。
ホルムズ海峡の封鎖は国際経済に甚大な打撃をもたらし、今後もさらにもたらす恐れがある。ペルシャ湾岸やそのほかの地域における国々と米国との同盟関係も損なわれた。
おまけに、ここまで書き連ねても、米国が犯した失策の半分ほどしかまだカバーできていない――。
実際、この愚かさはすさまじい。
この時期になっても、どのように幕が下りるのか見当もつかない。しかし、これには反論もある。
この戦争は確かに戦略的大失策かもしれない。だが、経済的な打撃は驚くほど小規模にとどまっている。
米ジョンズ・ホプキンス大学高等国際研究大学院のヨハネス・ウルペライネンが8月に指摘したように、「多くの専門家は当初、供給の混乱により原油価格が1バレル200ドルに高騰し、高率のインフレと世界的な景気後退が引き起こされると考えていた。
ふたを開けてみると、原油価格は2026年4月の1バレル126ドルがピークとなっている」。
そして今日、原油の実質価格は1972年以降の長期平均に近い水準にとどまっている。
エネルギー危機が管理可能な範囲に収まっているワケ
国際エネルギー機関(IEA)事務局長のファティ・ビロルは今年3月に「史上最大の世界エネルギー安全保障危機だ」と述べていたことを考えると、何がどうすればこんなことが起こり得るのか。
その答えは創意工夫にある。
ウルペライネンは次のように指摘する。
「第1に、世界経済の石油依存度がエネルギー移行によって低下してきた。第2に、サプライチェーンが底堅さと適応力を発揮した。第3に、中東以外の石油生産者が石油と天然ガスの増産に向けて迅速に動いた。そして最後に、世界中で石油の在庫が取り崩されて残りのギャップを埋めた」
湾岸諸国には柔軟性という言葉が特によく当てはまる。
元外交官のモハメド・エルスッカリが記しているように、「9月末までには、湾岸地域からの原油輸出量の暫定推計が日量1630万バレル前後になった。2月は日量1950万バレルで、9月の輸出のうち970万バレルがホルムズ海峡経由だった」。
これは見事な成果だ。しかし、我々が消費するのは石油製品であって、原油ではないことを忘れてはならない。
ペルシャ湾岸の製油所は甚大な被害を被っている。さらに、製油所は特定の産地の原油を処理するように設定されているため、石油製品の不足が始まっている。
なかでも顕著なのはディーゼル油(軽油)の不足だ。
ディール不足を受け、ドナルド・トランプは輸出禁止を検討した(その後、断念した)。だが、天然ガスや硫黄をはじめとするほかの石油製品も、原油以上の価格上昇に見舞われている。
それでも、全体的に見れば、石油の供給とその価格、そして世界経済の混乱は本当に驚くほど管理可能な範囲に収まっている。
