冬のインバウンド、非雪国で厚いのは鹿児島・大分・佐賀・山口 — 12〜2月が年間の27〜29%、旅館稼働は4割前後

観光庁が公表している宿泊旅行統計調査の2025年確定値(1〜12月)を県別・月別に並べ直すと、外国人延べ宿泊者数のうち12〜2月が占める割合が全国平均(24.9%)を上回るのは15道県で、そのうち雪国ではない県は鹿児島・大分・佐賀・山口の4県に絞られた。4県はいずれも冬の外国人宿泊の36.2〜50.5%を韓国からの旅行者が占め、口コミでは温泉への言及が際立っている。本稿では、この4県の冬の単価と客室稼働率を業態別に重ね、冬商戦でどの価格帯に伸びしろが残っているかを読み解く。

本記事における指標の定義

冬の構成比:観光庁「宿泊旅行統計調査」の外国人延べ宿泊者数について、2025年の1月・2月・12月の合計を同年の年間合計で割った値。2025年12月分までが確定値で、2026年1〜7月分は第2次速報値(2026年1月分から層化基準が従業者数から客室数へ変更されており、前年との比較には見直しの影響が含まれる可能性がある)。
非雪国:豪雪地帯対策特別措置法にもとづく豪雪地帯の指定区域を持たない23都府県。指定区域を持つ24道府県を本稿では雪国側として扱う。
ADR(平均客室単価):各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。
客室稼働率:観光庁「宿泊旅行統計調査」が公表する都道府県別・宿泊施設タイプ別の月次値(利用客室数÷総客室数、日本人・外国人の合計)。冬の値は2025年1月・2月・12月の3か月の単純平均。
データ出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」、メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部調べ(口コミ)

Key Takeaways

— 非雪国で全国平均超えは4県 — 2025年確定値で外国人延べ宿泊者数に占める1・2・12月の構成比は鹿児島28.6%、大分28.4%、佐賀27.8%、山口26.8%(全国24.9%)。
— 冬の主役は韓国 — 4県の冬の外国人宿泊の36.2〜50.5%を韓国が占め、全国(14.3%)の2.5〜3.5倍にあたる。
— 冬のADRは年間平均の96.4〜104.7% — 大分(15,300円)と佐賀(13,300円)は冬が年間を上回り、単価が沈みにくい。
— 余力は1万〜2万円台の旅館 — 2025年1・2・12月平均の客室稼働率は旅館が38.1〜45.3%、ビジネスホテルは62.7〜72.8%。
— 足元も堅調 — 2026年1〜2月(第2次速報値)は4県合計で前年同期比+17.3%、全国は−7.4%。

冬の構成比が全国平均を超えるのは15道県 — 雪のない県は九州3県と山口

まずは全体像から確認したい。2025年の外国人延べ宿泊者数は全国で1億7,992万人泊、このうち1月・2月・12月の合計は4,486万人泊で、冬の構成比は24.9%だった(2024年は23.6%)。これを上回った15道県のうち11道県は、北海道(42.1%)や長野(45.0%)、新潟(53.0%)のように豪雪地帯の指定区域を持つ道県で、スキーや雪景色が旅の目的になっている。

一方で、指定区域を持たない23都府県に限ると、全国平均を超えたのは鹿児島(28.6%)、大分(28.4%)、佐賀(27.8%)、山口(26.8%)の4県だけになる。4県は2024年も全国平均(23.6%)を上回っており(鹿児島23.7%、大分29.3%、佐賀29.0%、山口24.6%)、単年の振れとは言いにくい。九州の玄関口である福岡は24.9%と全国平均とほぼ同じ水準にとどまり、冬に厚みが出るのは福岡から先の温泉地を抱える県という構図が読み取れる。

ただし、温暖であれば冬に外国人が集まるわけではない。沖縄は19.2%、香川は20.6%、和歌山は13.1%と全国平均を下回り、ピークは夏や春・秋に置かれている。冬の山は気候そのものよりも、冬に訪れる理由と送客元の組み合わせで決まると考えられる。

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」(2025年確定値)よりホテルバンク編集部作成。灰色は比較の基準線として置いた雪国3道県

表1 非雪国4県の冬の構成比と外国人延べ宿泊者数(2025年確定値・2026年1〜2月は第2次速報値)県冬の構成比
2025年同
2024年外国人延べ宿泊者数
2025年(人泊)うち1・2・12月
(人泊)冬の外国人比率
2025年2026年1〜2月
前年同期比(速報)鹿児島県28.6%23.7%708,960202,7709.9%+27.6%大分県28.4%29.3%1,491,590424,17021.2%+13.2%佐賀県27.8%29.0%251,60070,02012.8%+11.7%山口県26.8%24.6%162,21043,4805.2%+20.9%4県合計28.3%27.6%2,614,360740,440—+17.3%全国24.9%23.6%179,922,13044,857,49029.6%−7.4%

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」よりホテルバンク編集部作成。2025年までは確定値、2026年1〜2月は第2次速報値(層化基準変更の影響を含む可能性がある)。冬の外国人比率=1・2・12月の外国人延べ宿泊者数÷同期間の延べ宿泊者数

山は10〜2月の高原、谷は6〜9月 — 2026年1〜2月は全国−7.4%に対し4県+17.3%

4県を合計した月次の動きを見ると、冬だけが突出しているというより、10月から2月まで高い水準が続き、6〜9月に谷ができる形をしている。2025年の4県合計は261.4万人泊で、10〜2月の5か月がその48.5%(全国は42.5%)を占めたのに対し、6〜9月の4か月は23.9%(同30.8%)にとどまった。夏に山ができる全国の波形とは逆の季節性を持つ市場といえる。

規模感も押さえておきたい。4県の冬の合計は74.0万人泊で、全国の冬(4,486万人泊)の1.7%にあたり、そのうち57.3%を大分が占める。量で東京や大阪と並ぶ話ではなく、県内の宿泊市場にとって冬の外国人が効く、という位置づけになる。実際、大分では冬の延べ宿泊者数の21.2%が外国人で、年間(18.3%)より高い。

直近の動きはどうか。県別の数値が公表されているのは2026年7月分(第2次速報値)までで、このうち2026年1〜2月の4県合計は55.7万人泊と前年同期比+17.3%だった。同じ期間の全国は−7.4%であり、鹿児島(+27.6%)、山口(+20.9%)、大分(+13.2%)、佐賀(+11.7%)はそろって逆方向に動いている。2026年1月分から調査の層化基準が変わっているため幅を持って読む必要はあるものの、冬の厚みは足元でも続いていると読める。

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」よりホテルバンク編集部作成。鹿児島・大分・佐賀・山口の4県合計。2024・2025年は確定値、2026年は1〜7月の第2次速報値

冬の主役は韓国 — 4県の冬の36.2〜50.5%、鹿児島では韓国客の年間宿泊の43.6%が冬に集中

冬に山ができる背景にあるのは、送客元の偏りである。国籍別の内訳(従業者数10人以上の施設)で2025年の1月・2月・12月を集計すると、韓国の構成比は大分50.5%、鹿児島50.0%、山口49.1%、佐賀36.2%で、全国(14.3%)の2.5〜3.5倍に達する。加えて、韓国からの宿泊そのものが冬に寄っており、韓国客の年間宿泊に占める冬の割合は全国の31.1%に対し鹿児島43.6%、大分39.7%と高い。

表2 冬の外国人延べ宿泊者数の国籍別構成比(2025年1月・2月・12月、従業者数10人以上の施設)県冬の外国人延べ宿泊者数
(人泊)韓国台湾香港中国韓国客の年間宿泊に
占める冬の割合鹿児島県168,04050.0%11.1%5.8%12.9%43.6%大分県335,97050.5%17.4%8.5%7.2%39.7%佐賀県67,56036.2%17.9%9.5%14.4%29.8%山口県42,95049.1%10.3%4.1%4.9%32.8%全国38,494,01014.3%14.5%5.5%20.2%31.1%

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年確定値(国籍別・従業者数10人以上の施設)よりホテルバンク編集部作成。冬=2025年1月・2月・12月

韓国からの冬の需要を支えているのは航空座席の季節配分だ。鹿児島空港では、大韓航空とチェジュ航空がソウル(仁川)線を2025年10月26日からの冬ダイヤでそれぞれ週4往復・週3往復から週7往復へ増やした(Aviation Wire、2025年8月22日)。鹿児島県の観光動向調査も、2026年1月の外国人延べ宿泊客数(調査対象78施設)が30,690人で前年同月比+13.8%となった理由として、定期便の増便・再開や釜山からのチャーター便による「ゴルフ目的などの韓国からの宿泊客」の増加を挙げている(鹿児島県「観光動向調査」令和8年1月)。

つまり、雪のない4県の冬は「近い・暖かい・温泉がある・冬に便が増える」という条件が韓国市場でそろった結果と整理できる。2026年冬ダイヤ(10月25日開始)の増便空港と周辺の客室ストックは別稿でまとめており、本稿では空港圏ではなく県単位の季節構成と単価・稼働に対象を絞っている。

冬の単価は年間平均の96.4〜104.7% — 大分・佐賀は冬が年間を上回る

需要の山は単価にどこまで反映されているのか。メトロエンジンリサーチのデータで2025年の1月・2月・12月のADRを平均し、同年の12か月平均と比べると、大分は15,300円で年間平均(14,600円)の104.6%、佐賀は13,300円で同104.7%と、冬が年間を上回った。鹿児島は6,800円で100.2%とほぼ年間並み、山口は7,200円で96.4%まで戻している。

夏(7〜8月)との比でも同じ傾向が出る。大分と佐賀は冬のADRが夏の104.5%・106.0%と夏を上回り、鹿児島は96.2%、山口は86.4%だった。夏が明確な最高値期になる沖縄(冬は年間平均の93.9%、夏の75.0%)や、県全体の中央値では夏型になる北海道(同92.6%、72.5%)と比べると、4県は冬に単価が沈みにくい市場であることがわかる。なお北海道もリゾートに限れば冬は年間平均の111.4%で、雪国の冬高は業態を絞ると現れる。

直近の冬(2025年12月〜2026年2月)を前年の冬と比べると、大分は16,500円で前年同期比+13.9%、鹿児島は7,200円で+10.0%、山口は7,600円で+6.5%だった。佐賀は県全体の中央値が13,000円で−4.8%だったが、業態別に見るとビジネスホテルが+1.0%、旅館が22,600円で+12.2%といずれも前年を上回っており、県全体の中央値は施設構成の影響を受けやすい点に留意したい。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成。冬(2025年1月・2月・12月)のADR平均が同年12か月平均を何%上回るか・下回るかを表示(いずれも確定月)

表3 県別の冬のADRと年間平均・夏との比(推定成約ADR、2025年および直近の冬)県冬のADR
2025年1・2・12月年間平均
2025年冬÷年間冬÷夏
(7〜8月)直近の冬
25年12月〜26年2月前年同期比対象施設数
N鹿児島県6,755円6,739円100.2%96.2%7,214円+10.0%312〜317大分県15,310円14,633円104.6%104.5%16,523円+13.9%437〜467佐賀県13,279円12,682円104.7%106.0%13,026円−4.8%146〜155山口県7,241円7,509円96.4%86.4%7,564円+6.5%189〜195(参考)北海道9,022円9,744円92.6%72.5%10,119円+18.9%875〜924(参考)沖縄県10,161円10,826円93.9%75.0%11,844円+22.5%482〜491

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成。ADRは推定成約単価(税抜相当・エリア中央値)。Nは各月の対象施設数の範囲

余力は1万〜2万円台の旅館に — 冬の客室稼働率は38.1〜45.3%、ビジネスホテルは62.7〜72.8%

単価が沈みにくい一方で、客室にはどれだけ余力が残っているのか。観光庁の客室稼働率(2025年確定値)で冬の3か月を平均すると、県全体では鹿児島52.5%、大分54.5%、佐賀51.9%、山口53.4%だった。年間平均との差は鹿児島+0.8pt、大分+0.2pt、佐賀−0.6ptと小さく、全国(冬58.2%、年間比−3.4pt)のような冬の落ち込みがほとんど見られない。山口は−3.6ptで、4県のなかでは冬の伸びしろが最も大きい。

業態別に分けると、余力の所在がはっきりする。ビジネスホテルの冬の客室稼働率は62.7〜72.8%、シティホテルは53.9〜69.9%まで埋まっているのに対し、旅館は鹿児島38.1%、大分45.3%、佐賀39.9%、山口39.7%と4割前後にとどまる。全国の旅館(34.9%)よりは高いものの、客室の5〜6割に販売余地が残っている計算になる。リゾートホテルも39.6〜60.9%で、旅館に次いで余地が大きい。

これを単価と重ねたのが下の表である。旅館の冬のADRは鹿児島の10,100円から佐賀の21,500円まで1万〜2万円台に分布し、4県とも冬は年間平均を4.8〜6.7%上回っている。価格は冬に上がっているのに客室は埋まり切っていない、というのがこの価格帯の特徴といえる。対照的に、5,900〜6,500円のビジネスホテルは稼働が6〜7割に達しており、冬の上積みは単価側で取りにいく局面にある。

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」(2025年確定値)よりホテルバンク編集部作成。2025年1月・2月・12月の客室稼働率の単純平均

表4 業態別の冬のADRと客室稼働率(2025年1月・2月・12月)県業態冬のADR
(推定成約)冬÷年間対象施設数
N冬の客室稼働率
(観光庁)年間平均との差鹿児島県旅館10,084円106.7%82〜9038.1%+2.3ptリゾートホテル13,385円99.0%48〜5039.6%−1.2ptビジネスホテル5,959円98.9%153〜15969.5%+0.6ptシティホテル7,949円93.1%21〜2367.1%+6.6pt大分県旅館19,213円106.0%296〜31645.3%+2.0ptリゾートホテル18,353円99.8%36〜3859.0%−0.5ptビジネスホテル6,045円98.5%91〜9263.5%−1.5ptシティホテル10,698円101.7%13〜1469.9%−0.9pt佐賀県旅館21,452円104.8%83〜8939.9%+1.8ptリゾートホテル14,548円102.7%6〜7(参考値)60.9%−0.4ptビジネスホテル6,453円99.0%46〜5072.8%−1.4ptシティホテル9,729円103.3%7〜8(参考値)67.0%−2.3pt山口県旅館16,994円105.4%70〜7139.7%−2.3ptリゾートホテル11,222円105.9%12〜1552.3%−7.9ptビジネスホテル5,888円95.2%96〜9762.7%−4.1ptシティホテル7,425円95.8%1053.9%−6.2pt

出典:ADRはメトロエンジンリサーチ、客室稼働率は観光庁「宿泊旅行統計調査」(2025年確定値)よりホテルバンク編集部作成。いずれも2025年1月・2月・12月。業態区分は両データで定義が異なるため、対応は目安

月別では1月が伸びしろの大きい月になる。県全体の客室稼働率は1月が47.9〜52.5%で、2月(55.2〜57.3%)を2.7〜9.4pt下回った。旧正月は年によって1月下旬から2月中旬のあいだを動き(2025年は1月29日、2026年は2月17日、2027年は2月6日)、連休が2月に入る年の1月は平日を中心に在庫が残りやすい。

口コミの裏づけ — 韓国語・繁体字レビューの温泉言及は大分で2割超

冬に外国人が訪れる理由を、宿泊者の口コミから確かめておく。ホテルバンク編集部が直近24か月の宿泊者口コミを言語別に集計したところ、大分県の施設に寄せられた韓国語の口コミ9,166件のうち23.0%が温泉に言及しており、繁体字中国語(4,987件)でも22.2%、英語(8,941件)でも15.0%にのぼった。同じ九州でも都市型の福岡県では韓国語2.8%・繁体字2.7%にとどまり、雪国の基準線として置いた北海道(韓国語9.7%・繁体字9.9%)と比べても2倍を超える。

中身を細かく見ると、求められている体験の輪郭が浮かぶ。大分の韓国語口コミでは露天風呂(9.3%・853件)、貸切風呂(6.3%・581件)、会席料理(6.1%・558件)への言及が続き、英語では露天風呂付客室(7.2%・647件)、繁体字では貸切風呂(8.7%・432件)が上位に入った。佐賀(8.8%)、山口(7.7%)、鹿児島(5.0%)の韓国語口コミでは大浴場への言及が目立ち、温泉そのものに加えて「大きな風呂に入れる宿」であることが評価につながっていると読める。韓国語・繁体字の口コミが大浴場や露天風呂にどう言及しているかは、温浴文化は「韓国・台湾」が支持でも言語別に整理している。

出典:ホテルバンク編集部調べ(宿泊者口コミの言語別集計・直近24か月、2026年10月時点)。言及率=各言語の口コミ件数に占める温泉に言及した口コミの割合

表5 言語別にみた口コミの温泉言及率と件数(直近24か月、2026年10月時点)県韓国語
温泉言及率口コミ件数
N繁体字中国語
温泉言及率口コミ件数
N英語
温泉言及率口コミ件数
N鹿児島県10.4%2,6718.8%1,3956.2%4,815大分県23.0%9,16622.2%4,98715.0%8,941佐賀県14.3%2,06314.3%9089.0%1,251山口県12.0%84117.4%2478.1%1,106(参考)北海道9.7%28,3379.9%21,4627.2%53,435(参考)福岡県2.8%43,7252.7%20,024—27,421

出典:ホテルバンク編集部調べ(直近24か月、2026年10月時点)。「—」は当該言語の上位項目に入らなかったもの。言及率は評価の高低ではなく話題にのぼった頻度を示す。口コミの言語は投稿者の国籍と一致するとは限らない

冬の受け皿として伸ばしたい3つの方向

ここまでを整理すると、4県の冬は「需要は来ており、単価も年間並み以上を保っているが、1万〜2万円台の旅館とリゾートホテルに客室の余地が残る」という姿になる。この余地を成長機会として取りにいくうえで、データから導ける方向は3つある。

1つ目は、1月の平日に向けた商品づくりである。客室稼働率が2月より2.7〜9.4pt低い1月は、冬ダイヤで座席が増えている時期でもあり、2泊3日の温泉滞在や、鹿児島県の調査が指摘するゴルフ目的の滞在と組み合わせた連泊設計が有効といえる。旧正月が2月6日となる今冬も、1月は早めに在庫と価格を見える状態にしておきたい。

2つ目は、旅館の強みを外国語で具体的に伝えることだ。口コミで言及が多いのは露天風呂・貸切風呂・大浴場・会席料理であり、いずれも旅館がすでに持っている資産にあたる。貸切風呂の予約方法や利用時間、露天風呂付客室の有無、夕食の内容を韓国語と繁体字で明示するだけでも、冬の指名理由を増やせる余地がある。加えて、夕食を付けない朝食付き・素泊まりの選択肢を冬の平日に用意すれば、福岡など都市部に泊まりながら温泉地へ足を延ばす旅行者を、宿泊に引き込む可能性が広がる。

3つ目は、送客元の広がりである。4県の冬は韓国が36.2〜50.5%を占める一方、台湾は10.3〜17.9%、香港は4.1〜9.5%にとどまる。全国では台湾からの宿泊の27.9%、香港の32.4%が冬の3か月に入っており、温泉への言及率が高い繁体字圏は、韓国に次ぐ冬の柱として育てる余地がある市場と考えられる。台湾からの宿泊が県別にどこへ厚みを持っているかは、台湾の訪日客はどこに泊まる?地方が54.6%で整理している。福岡で全国並みにとどまっている冬の構成比を、福岡から先の温泉地でどう受け止めるかが、九州北部と山口に共通するテーマになるだろう。

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大分県の旅館で公開されている温泉関連のプラン名(N=731)に多い訴求要素 ——

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まとめ

冬のインバウンドは雪国の話として語られやすいが、2025年の確定値で見るかぎり、雪のない県でも鹿児島・大分・佐賀・山口の4県は12〜2月の構成比が26.8〜28.6%と全国平均(24.9%)を上回っていた。背景にあるのは韓国からの冬の旅行需要と温泉であり、2026年1〜2月の速報値でも4県合計は前年同期比+17.3%と、全国(−7.4%)とは違う動きを見せている。

単価は冬でも年間平均の96.4〜104.7%を保ち、ビジネスホテルやシティホテルは6〜7割まで埋まっている。伸びしろが残るのは、冬の客室稼働率が38.1〜45.3%の旅館を中心とした1万〜2万円台の価格帯と、連休のかからない1月である。冬ダイヤが始まる10月下旬から11月は、この余地に向けた在庫と情報発信を整える時期になる。

データの時点に関する注意:外国人延べ宿泊者数と客室稼働率は2025年12月分までが確定値、県別の速報値は2026年7月分(第2次速報値)までを使用した。ADRは2026年2月までの確定月を対象とした推定値であり、2026〜27年の冬の水準を示すものではない。今冬の価格は調査時点以降の掲載・予約動向によって変動する。

よくある質問

Q. 冬のインバウンドが厚い、雪国以外の県はどこですか?
A. 観光庁「宿泊旅行統計調査」の2025年確定値では、豪雪地帯の指定区域を持たない23都府県のうち、外国人延べ宿泊者数に占める1月・2月・12月の構成比が全国平均(24.9%)を上回ったのは、鹿児島(28.6%)、大分(28.4%)、佐賀(27.8%)、山口(26.8%)の4県です。4県は2024年も全国平均(23.6%)を上回っていました。

Q. なぜこの4県は冬に外国人宿泊が厚くなるのですか?
A. 韓国からの旅行者が冬の外国人宿泊の36.2〜50.5%(全国は14.3%)を占めており、韓国からの宿泊そのものが冬に寄っているためです。鹿児島空港では2025年の冬ダイヤでソウル(仁川)線が増便されました。口コミでは温泉への言及が多く、大分県では韓国語の口コミの23.0%、繁体字中国語の22.2%が温泉に触れています。

Q. 4県の冬の宿泊単価は、年間平均と比べてどの水準ですか?
A. 2025年の1月・2月・12月の推定成約ADR(税抜相当・エリア中央値)は、大分が15,300円で年間平均の104.6%、佐賀が13,300円で104.7%、鹿児島が6,800円で100.2%、山口が7,200円で96.4%でした。大分と佐賀は冬が年間を上回り、4県とも冬に単価が沈みにくい市場といえます。

Q. 冬に客室の余力が残っているのは、どの業態・どの時期ですか?
A. 観光庁の2025年確定値で1月・2月・12月を平均すると、旅館の客室稼働率は4県で38.1〜45.3%、ビジネスホテルは62.7〜72.8%でした。旅館の冬のADRは10,100〜21,500円に分布しており、1万〜2万円台の旅館に伸びしろが残っています。月別では、県全体の客室稼働率が47.9〜52.5%の1月が、2月(55.2〜57.3%)より余地の大きい月になります。

Q. この記事のデータはいつ時点のものですか?
A. 外国人延べ宿泊者数と客室稼働率は2025年12月分までが確定値で、県別の速報値は2026年7月分(第2次速報値)までを使っています。ADRは2026年2月までの確定月を対象とした推定値で、2026〜27年の冬の水準を示すものではありません。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

観光庁「宿泊旅行統計調査」の推移表(都道府県別・月別の外国人延べ宿泊者数、宿泊施設タイプ別の客室稼働率)と2025年確定値の集計結果(国籍別・従業者数10人以上の施設)、メトロエンジンリサーチの推定成約ADR(2025年1月〜2026年2月の確定月・県別および業態別の中央値)、ホテルバンク編集部による宿泊者口コミの言語別集計(直近24か月)と公開プラン名の集計(N=731)を用いた。

■ 試算前提

冬は2025年の1月・2月・12月の3か月(暦年ベース)とし、冬の構成比は同3か月の外国人延べ宿泊者数を2025年の年間合計で割って算出した。非雪国は豪雪地帯の指定区域を持たない23都府県。冬のADRは3か月の単純平均、年間平均は12か月の単純平均で、直近の冬のみ2025年12月〜2026年2月の連続3か月を用いた。客室稼働率の冬の値は、観光庁が公表する月次値の単純平均である。

■ 限界・留意点

2025年の冬は1月・2月と12月を合算しており、連続した一冬の値ではない。2026年1月分以降は第2次速報値で、層化基準の変更により前年との比較には見直しの影響が含まれる可能性がある。国籍別の内訳は従業者数10人以上の施設が対象で、県全体の値とは母数が異なる。ADRは推定値であり、対象施設数が10未満の業態は参考値として扱った。旅館は食事付きプランの比重が高く、推定の幅が他の業態より広くなりやすい。ADRと客室稼働率は出典ごとに業態区分の定義が異なるため、対応は目安となる。口コミの言語は投稿者の国籍と一致するとは限らない。

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