創造性豊かで美しいブラジルのフットボールに魅せられ、サンパウロへ渡って30年余り。多くの試合を観戦し、選手、監督にインタビューしてきた沢田啓明が、「王国」の今を伝える。
footballista誌から続くWEB月刊連載の第33回(通算211回)は、オーストラリアとインドに遠征し、北中米W杯後初のテストマッチに臨んだブラジル代表について。2勝1分でも批判が止まらなかった3連戦を、アピールに成功した新顔たちとイタリア人指揮官の各試合後コメント、それに対する国内メディアの論評を中心にレポートする。
[4–2–4]より[4–3–3]だが…「ファンには忍耐強く見守ってもらいたい」
9月25日と29日、セレソン(ブラジル代表)はアウェイでオーストラリア代表と強化試合を行い、1-1で引き分けた後、2-4で勝った。10月3日には、コルカタでインド代表を0-4で下した。
25日の試合で、カルロ・アンチェロッティ監督は守備ではCBマルキーニョス(32、パリ・サンジェルマン)とボランチのブルーノ・ギマランイス(28、アーセナル)、攻撃ではFWビニシウス(26、レアル・マドリー)、FWラフィーニャ(29、バルセロナ)らチームの核となる選手は残しながらも、代表デビューのCBビトール・レイス(20、マンチェスター・シティ)と右SBマテウジーニョ(26、コリンチャンス)をいきなり先発させ、さらに初招集2選手を途中出場させた。
フォーメーションは[4-2-4]だったが、アタッカーの縦へ抜け出す動きが少なく、ボランチ2人との間に大きなスペースが生まれた。ショートパスをつないで攻撃を組み立てることができないためロングパスを多用することとなり、高さのあるオーストラリア守備陣の餌食となった。
代表2戦目のGKウーゴ・ソウザ(27、コリンチャンス)の判断ミスからFKを直接決められて先制を許し、攻撃陣は少ないチャンスを決めきれない。敗北寸前だったが、後半アディショナルタイムに左CKを右ウイングのライアン(20、ボーンマス)が頭で決め、かろうじて引き分けた。
タウンズビルで開催された1戦目のハイライト動画
試合後、アンチェロッティはブラジル人記者から「ほとんど負けていた試合だったが」と聞かれて、「そんなことはない。いくつかの決定機を作り、結果は引き分けだった」と気色ばんだ。
試合内容への自己評価を問われると、「テストの意味合いが大きい試合であり、多くの若手を試すことができたのは有益だった」と成果を強調しながらも、「ファンには忍耐強く見守ってもらいたい」。自分でも満足していないのは明らかだった。
国内メディアは「ボールを握って試合をコントロールすることができなかった」、「ワールドカップのノルウェー戦(1-2で敗れたラウンド16)を彷彿とさせるお粗末な試合だった」と酷評した。
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Profile
沢田 啓明
1986年ワールドカップ・メキシコ大会を現地でフル観戦し、人生観が変わる。ブラジルのフットボールに魅せられて1986年末にサンパウロへ渡り、以来、ブラジルと南米のフットボールを見続けている。著書に『マラカナンの悲劇』(新潮社)、『情熱のブラジルサッカー』(平凡社新書)など。
