世界のフットボール史上、これほど盛大なオマージュを受け、これほど惜しまれながら代表から引退した選手がかつていただろうか。また、これからも現われるだろうか。

チケットは即完、街はお祭り騒ぎ

 先月24日に発売された約8万5000枚のチケットは、最も安いゴール裏が9万ペソ(約9900円)、最も高いメインスタンド中央が48万ペソ(約5万3000円)。この国の所得、物価水準からすればかなり高額だったが、わずか1時間半で完売。正規の値段の数倍で転売しようとするダフ屋が横行した。

 アルゼンチン北部にある出身地ロサリオの中心地の広場には、30メートル余りの巨大な背番号10の代表ユニフォームが設置された。背中には、「GRACIAS(ありがとう)」の文字。

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 首都ブエノスアイレスの中心部にあるオベリスク(古代エジプトに由来する、上部がピラミッド形の石塔)の近くには、特製の布で制作された高さ14メートルの巨大な胸像が出現。試合前日の夜から試合日早朝まで、オベリスクはアルゼンチン代表のカラーである白と水色の光線に彩られた。

 試合開始は6日の20時だったが、早朝から大勢のファンが試合会場(モヌメンタル・デ・ヌネス)の周辺を占拠。16時にゲートが開くとたちまちスタンドが埋まり、18時の時点ですでに超満員。総立ちで、手を激しく振り回しながら、アルゼンチン代表やメッシのチャントを歌い続けた。

感極まるメッシ、涙の国歌斉唱

 19時20分、メッシを先頭にアルゼンチン代表の選手たちがウォーミングアップのためピッチに姿を現わした。耳を聾するほどの歓声、叫び声、そして盛大な拍手。ピョンピョン飛び上がりながら、メッシコールを繰り返す。涙ぐんでいる人も少なくなかった。メッシは、両手をかざして歓呼に応える。

 選手たちがロッカールームへ引き揚げた際には、再び大きな歓声が上がった。

 無人となったピッチに、巨大な背番号10のユニフォームが置かれた。名前の部分には、ここでも「GRACIAS」の文字。

 突然、場内が暗くなった。けたたましい音を立てて花火が上がり、音楽が流れる中、両チームの選手たちがピッチへ入場した。

 まずベナン国歌が吹奏され、続いてマルビナス戦争(フォークランド紛争)に従軍した経歴を持つ歌手主導のアルゼンチン国歌の斉唱。選手、コーチングスタッフ、観衆が声を張り上げる。メッシはチームメートと肩を組んで国歌を歌い、感極まって両目に大粒の涙を浮かべた。

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