2026年10月10日
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夜景写真家/夜景ジャーナリスト 中村勇太

台湾・台北市の総統府で、双十国慶日を記念した「2026国慶総統府建築プロジェクションマッピング」が、2026年10月7日(水)から10日(土)まで開催されています。総統府の外壁をスクリーンに、台湾の街並みや文化、民主化の歴史などを光と映像で表現するイベントです。
総統府は、台湾の総統が執務する建物で、日本の首相官邸に近い役割を持つ施設です。日本統治時代の1919年に台湾総督府庁舎として完成し、戦後は中華民国の総統府として使用されています。赤いレンガタイルと白い装飾を組み合わせた外観が特徴で、中央には高さ約60mの塔がそびえています。
今年は台湾初の総統直接選挙から30周年、国慶日の総統府プロジェクションマッピングが始まって10周年の節目にあたります。テーマは「民主的台灣,世界的心跳(民主台湾、世界の鼓動)」。夜景FAN編集部では10月9日(金)に現地を訪れ、プロジェクションマッピングと会場周辺の国慶日装飾を取材しました。
総統府の建物全体を使った光の演出
会場となる総統府前のケタガラン大通りには、多くの観客が集まっていました。総統府の建物全体がスクリーンとなり、色鮮やかな映像と夜空に伸びるサーチライトによる演出が展開されます。
上映開始前には総統府の外壁にカウントダウンの数字が大きく映し出され、観客がスマートフォンやカメラを構える姿も見られました。

▲ 総統府の建物全体に映し出されたカウントダウン
今回の演出は全4章で構成され、台湾の日常風景から世界に広がる文化、自由と民主主義を守ってきた歴史、そして未来への思いへと物語が展開していきます。各章には台湾の音楽が使用され、映像とともに台湾の歩みを伝えています。
第1章 台湾の街並みや日常風景を表現
第1章「路上觀察學・風土的轉身」では、台湾の街並みや人々の日常がテーマとなっています。市場の看板や寺廟の軒先、路地裏など、台湾の街を歩いていると出会う風景が、色鮮やかな映像で表現されます。
この章では、台湾のロックバンド・濁水溪公社の楽曲「晚安台灣」(2009年)が使用されています。

▲ 台湾の街並みや看板をモチーフにした色鮮やかな演出
鉄道が総統府の外壁を横切るように映し出される場面もありました。建物の横長の外観を生かした映像演出が印象的です。

▲ 総統府の外壁に映し出された鉄道の演出
第2章 世界に広がる台湾文化とテクノロジー
第2章「世界的台味・百花齊放國家隊」では、台湾の文化や創造力が世界へ広がる姿を表現しています。タピオカミルクティーなどの身近な食文化から、世界をリードする半導体産業まで、台湾の多彩な魅力を紹介。自由に愛し、自分らしく生きることのできる社会の姿も描かれています。
冒頭では、作家・楊双子の小説「臺灣漫遊錄(TAIWAN TRAVELOGUE)」を取り上げた演出が登場。台湾の文学作品が世界へ広がる姿を、色鮮やかな映像で表現しています。

▲ 第2章の冒頭に登場した「臺灣漫遊錄(TAIWAN TRAVELOGUE)」
第2章でも、濁水溪公社の「晚安台灣」(2009年)が使用されています。台湾の食文化や文学、テクノロジーなど、世界に広がる台湾の魅力を音楽とともに紹介する構成です。
第3章 自由と民主主義を守ってきた台湾の歴史
第3章「台味的守護・手寫的民主刻度」では、台湾が歩んできた民主化の歴史を振り返ります。自由な選択や言論の自由を守るため、人々が声を上げてきた歴史を、写真や資料を通して紹介する内容です。
冒頭では、建物や風景を写した複数の写真が総統府の外壁に映し出されました。写真や記録資料を重ねるような演出から、台湾の民主化の歩みをたどる物語が始まります。

▲ 第3章の冒頭では、台湾の歴史を伝える写真や資料が総統府の外壁に映し出された
その後、1989年の鄭南榕事件に関する映像が登場しました。鄭南榕は台湾の言論の自由や民主化を求めて活動した人物です。1989年4月7日、当局による逮捕に抵抗し、自ら命を絶ちました。この事件は、台湾の言論の自由と民主化の歴史を語るうえで重要な出来事として知られています。

▲ 1989年の鄭南榕事件を紹介する映像
続いて登場したのが、1996年に実施された台湾初の総統直接選挙です。それまでの総統選出方法から大きく転換し、市民が直接投票によって総統を選ぶようになった歴史的な出来事です。2026年は、この総統直接選挙から30周年にあたります。

▲ 1996年に実施された台湾初の総統直接選挙を紹介
2013年の大埔事件に関する映像も映し出されました。台湾北西部の苗栗県大埔地区では、2010年から土地収用をめぐる抗議活動が続き、2013年7月には住宅4戸が強制撤去されました。この出来事をきっかけに、抗議活動はさらに広がりました。

▲ 2013年の大埔事件を取り上げた映像
さらに、2016年に行われたLGBTQ+の権利や平等を求める運動も紹介されました。同性婚の法制化を求める声が高まっていた当時の台湾社会を振り返り、多様性や人権を尊重する社会を目指してきた歩みが描かれています。

▲ 2016年の平等を求める社会運動を紹介する映像
民主化の歩みを振り返る場面では、投票の歴史を表現したグラフィックも登場。総統府の外壁には、選挙の年号とともに多くの手が描かれ、民主主義が積み重ねられてきたことを伝えていました。

▲ 選挙の年号や多くの手を描き、台湾の民主主義の歩みを表現
第3章では、9m88の「大濛的暗眠」(2025年)と、交工樂隊の「菊花夜行軍」(2001年)が使用されています。歴史的な写真や記録映像に音楽が重なり、自由と民主主義を守ってきた人々の歩みを伝えています。
第4章 総統直接選挙30周年と台湾の未来
最後の第4章「你想要什麼台味?掌中的未來」では、総統直接選挙30周年を振り返りながら、台湾の民主主義と未来への思いを表現します。
30年間の総統直接選挙で投じられた1億票以上の投票用紙を積み重ねると、台湾最高峰の玉山約3座分に相当する高さになるという「民主造山」の考え方が、この章の中心となっています。一人ひとりの投票が積み重なり、現在の台湾の民主主義を形づくってきたことを伝える内容です。
第4章では、戴曉君(Sauljaljui)の楽曲「為彼此歌唱」(2016年)が流れます。台湾の未来をテーマにした映像に合わせて、力強い歌声が会場に響きました。

▲ 第4章の冒頭では、台湾の山並みが総統府の外壁に広がった
また、台湾の画家・陳澄波による《玉山積雪》を紹介する場面も見られました。台湾を象徴する山々や芸術作品を通じて、台湾の自然や文化にも触れることができます。

▲ 台湾の画家・陳澄波による《玉山積雪》を紹介する演出
終盤には、総統府の外壁いっぱいに色鮮やかなグラフィックが広がりました。

▲ 色鮮やかなグラフィックが総統府全体を彩る

▲ 次々と変化する色鮮やかな映像演出

▲ 総統府の外壁に広がる映像と夜空を照らすサーチライト
演出の最後には、今回のテーマ「民主的台灣,世界的心跳」が表示され、主催者や協賛企業などのクレジットも映し出されました。

▲ プロジェクションマッピングのテーマ「民主的台灣,世界的心跳」

▲ 総統府の外壁に映し出された主催・協賛企業などのクレジット
会場では多くの観客がスマートフォンやカメラで撮影していました。少し離れた台北賓館付近からも総統府を眺めることができ、周辺の通りでも撮影する人の姿が多く見られました。

▲ 台北賓館付近から撮影した総統府のプロジェクションマッピング
総統府周辺も国慶日を祝う装飾に
プロジェクションマッピングの会場周辺でも、双十国慶日を祝う装飾が見られました。総統府近くにある台湾銀行の建物もライトアップされ、夜の街並みに浮かび上がっていました。

▲ 総統府近くにある台湾銀行のライトアップ
総統府前のケタガラン大通り周辺には、中華民国の国旗や国慶日を祝う旗が掲げられ、街路樹にはイルミネーションが施されていました。遠くには台北101の姿も見え、台北の夜景と国慶日ならではの装飾を一緒に楽しむことができました。

▲ 国旗やイルミネーションで彩られた大通り。遠くには台北101も見える
台湾の街並みや文化、自由と民主主義を守ってきた歴史、そして未来への思いを、総統府の建物全体に映し出すプロジェクションマッピング。2026年の開催は10月10日(土)が最終日です。
2026国慶総統府建築プロジェクションマッピング 開催概要
イベント名
2026國慶總統府建築光雕展演
会場
総統府前・ケタガラン大通り(台湾・台北市中正区)
開催日程
2026年10月7日(水)~10日(土)
上映時間
19:00~21:30(30分ごとに上映、最終回21:30開始)
上映時間の長さ
約10分
テーマ
民主的台灣,世界的心跳
主催
中華文化総会
観覧料金
無料

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ライター情報

中村勇太
夜景写真家/夜景ジャーナリスト
日本夜景オフィス株式会社代表取締役。日本と台湾を取材する夜景写真家。夜景コンサルタント®。夜景情報サイト「夜景FAN」編集長。夜景撮影セミナー講師、ガイド・解説、テレビ・ラジオ番組出演、記事執筆、企画監修等、夜景に関することであれば何でもお任せ下さい。
対応可能な仕事
夜景撮影、執筆、解説・ガイド、講師、イベントの企画・監修
出演番組
日本テレビ「ZIP!」「ヒルナンデス!」、テレビ朝日「大下容子ワイド!スクランブル」「じゅん散歩」、NHK「ひるまえほっと」など
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配信情報
配信日
2026年10月10日 10:53
更新日
2026年10月10日 12:04
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