大阪の確定7〜9月ADR、シティ−22〜−25%・ビジネス−32〜−34% — 大型イベント翌年のベースラインをどう引き直すか

大阪府のホテル市場で、2026年7〜9月の推定成約ADR(税抜相当)が確定した。確定月同士で前年同月と比べると、シティホテルは7月 −25.1%・8月 −24.4%・9月 −21.8%、ビジネスホテルは7月 −31.9%・8月 −33.6%・9月 −34.0%と、3カ月とも大きなマイナスが並ぶ。ただし比較対象の2025年は、4月13日から10月13日まで大阪・関西万博が開催された年であり、同じ月を2024年と並べるとシティホテルは7月 +1.6%・8月 −0.9%・9月 +15.4%、ビジネスホテルは7月 −3.1%・8月 −5.1%・9月 +1.0%と、ほぼ通常年の水準に戻っていたことが分かる。本稿では、この「前年比の大幅マイナス」をどう読み、何を基準に2026年秋冬以降の価格を組み直すかを、月次の基準ADR・ミニマムレート・曜日ミックスの3点から整理する。

対象: 大阪府のシティホテル N=97施設・ビジネスホテル N=504施設(2026年9月確定値の集計対象)。本記事の価格指標は推定成約ADR(OTA等の販売データから推定される成約価格水準・税抜相当)、稼働率はOTA掲載在庫ベースの推定値。いずれも定義は記事末尾。データ時点: 2026年10月8日。

Key Takeaways

— 前年比はシティ−21.8〜−25.1%・ビジネス−31.9〜−34.0%。2026年7〜9月の大阪府の推定成約ADR(税抜相当・確定月同士)は3カ月とも大幅なマイナスだった。
— 2年前比ではシティ−0.9〜+15.4%・ビジネス−5.1〜+1.0%。2024年と比べると通常年の水準に戻っており、マイナスの正体は万博開催年(2025年)の上振れの剥落と読める。
— 2025年の上振れは大阪だけ。7〜9月合算で大阪はシティ+37.6%・ビジネス+46.1%上振れていたのに対し、東京・京都・兵庫・福岡・北海道は+2.8%〜+17.7%だった。
— 需要は土曜・連休に集中。7〜9月の推定OCC(OTA掲載在庫ベース)はシティ土曜90.0%/月曜80.0%、ビジネス土曜86.7%/日曜74.2%で、曜日の帯ごとの価格設定が有効。
— 11月はまだ前年比マイナスが残る。2024年同月に8%上乗せしても11月はシティ−5.7%・ビジネス−6.2%で、前年比がゼロ前後まで縮むのは12月から。

確定した7〜9月 — シティ−22〜−25%、ビジネス−32〜−34%の意味

まずは確定値を押さえたい。大阪府のシティホテル(N=97)の推定成約ADRは、2026年7月が約1万2,600円、8月が約1万3,100円、9月が約1万3,100円で推移した。前年同月(N=90〜91)はそれぞれ約1万6,800円・約1万7,300円・約1万6,700円だったから、下落率は−25.1%・−24.4%・−21.8%となる。ビジネスホテル(N=497〜504)は7月約8,400円・8月約8,800円・9月約8,900円に対し、前年(N=498〜502)は約1万2,400円・約1万3,200円・約1万3,500円で、下落率は−31.9%・−33.6%・−34.0%とシティホテルよりさらに深い。7〜9月の3カ月を合算した前年比は、シティホテルが−23.8%、ビジネスホテルが−33.2%になる。

ただし、この数字だけを見て「大阪の市場が2〜3割縮んだ」と読むのは早計だろう。比較対象の2025年7〜9月は、大阪・関西万博の会期(2025年4月13日〜10月13日)の真ん中にあたる。2025年の同月を2024年と比べると、シティホテルは7月 +35.6%・8月 +31.0%・9月 +47.6%、ビジネスホテルは7月 +42.3%・8月 +42.9%・9月 +53.1%と、1年で3〜5割の上振れが生じていた。2026年のマイナスは、その上振れがほぼそのまま剥落した結果と読める。

表1 大阪府の推定成約ADR 確定月の3年比較(2024〜2026年7〜9月)
業態・月2024年
(N)2025年
(N)2026年
(N)前年比
2026/20252年前比
2026/2024

シティ 7月¥12,384(88)¥16,798(90)¥12,582(97)−25.1%+1.6%
シティ 8月¥13,203(88)¥17,291(91)¥13,078(97)−24.4%−0.9%
シティ 9月¥11,336(88)¥16,733(91)¥13,077(97)−21.8%+15.4%
ビジネス 7月¥8,698(496)¥12,380(502)¥8,429(497)−31.9%−3.1%
ビジネス 8月¥9,247(495)¥13,211(499)¥8,772(503)−33.6%−5.1%
ビジネス 9月¥8,784(494)¥13,450(498)¥8,872(504)−34.0%+1.0%

推定成約ADR(税抜相当・月次確定値)。(N)は集計対象施設数。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

表で目を引くのは、右端の「2年前比」の列である。2026年の確定3カ月を2024年の同月に重ねると、シティホテルは7月 +1.6%・8月 −0.9%とほぼ横並びで、9月だけが +15.4%と上に出た。ビジネスホテルは7月 −3.1%・8月 −5.1%・9月 +1.0%で、こちらも2024年の水準に戻ったと読める。4〜9月の6カ月平均で見ても、シティホテルは2024年約1万2,100円・2025年約1万6,100円・2026年約1万2,600円、ビジネスホテルは約9,000円・約1万2,800円・約8,900円で、2026年は2025年ではなく2024年の形に近い。つまり、前年比のマイナスが語っているのは市場の収縮ではなく「特異年の翌年」という時間軸の問題だといえる。7月確定値の時点で同じ構図を前年比・前々年比・推定OCCの3点から整理した大阪の推定成約ADRは前年比−25%、前々年比は+1.6% — 万博翌年のYoYをどう扱うかも、評価軸を置き直す際の参考になる。

3年重ねの月次カーブ — 2025年だけが別の形をしている

次に、月次の推定成約ADRを2024年・2025年・2026年で重ねて形を比べる。シティホテルの2024年は1月約1万1,000円から8月約1万3,200円まで緩やかに山を作り、11〜12月に約1万2,600〜1万2,900円で終える、振れ幅の小さい年だった。2025年は3月約1万3,200円から4月約1万6,000円へ一段上がり、7〜9月は約1万6,700〜1万7,300円の高原状態を保ったのち、11月約1万4,500円・12月約1万4,000円へ下りている。2026年は1月約1万4,000円(前年比+25.0%)と高く始まったあと、2〜3月は約1万1,400〜1万2,800円と前年を3%ほど下回り、4〜5月は約1万2,900〜1万3,100円で2024年の形に沿って動き、6月に約1万800円(前年比−26.3%・2年前比−6.0%)まで落ちたあと、7〜9月が約1万2,600〜1万3,100円で推移した。

大阪府シティホテル 推定成約ADR(税抜相当・月次)。2026年10〜12月(点線)は現時点の販売状況に基づく推定で変動し得る。N=83〜97施設。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

ビジネスホテルの3年は、振れ幅の違いがさらに際立つ。2024年は年間を通じて約8,200〜1万円の帯に収まり、2025年は4月約1万2,900円・5月約1万3,400円と春の時点で2024年同月を3〜5割上回り、9月約1万3,500円まで高原が続いたうえで、11〜12月に約1万500〜1万1,600円へ下りた。2026年は1月約9,100円(前年比+3.9%)で始まり、2〜3月は約8,400〜9,300円と前年を1割前後下回ったが、2024年同月との差は−0.9〜−5.0%にとどまる。4月以降は約7,900〜9,800円で推移し、6月に約7,900円の年初来最低を付けたあと、7〜9月は約8,400〜8,900円で横ばいに近い動きだった。

大阪府ビジネスホテル 推定成約ADR(税抜相当・月次)。2026年10〜12月(点線)は現時点の販売状況に基づく推定で変動し得る。N=484〜504施設。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

2つのチャートが共通して示すのは、2025年の線だけが4月に階段状に跳ね上がり、10月まで高原を保ったあと、11月以降に他の2年の帯へ戻っていく形をしている点だ。言い換えると、2026年の前年比は4月から10月まではマイナスが続く構造にあり、11月以降は比較対象が通常年に近づくため自然に縮む。ここを前提に置かず、7〜9月のマイナスを見て価格を一段下げると、本来戻るはずの11月以降まで引きずる可能性がある。なお、2026年10月については、現時点の販売状況に基づく推定でシティホテル約¥15,700・ビジネスホテル約¥10,900(いずれもN=97・497)が示されているものの、確定値との単純比較は月末の確定を待ちたい。10月以降の秋の評価軸を前年比・前々年比・年率トレンドの3つで置き直す考え方は、大阪の秋ADR前年比−15.6%の読み方|10区の前々年比は+8.7〜−18.7%で区単位まで掘り下げている。

月別の前年比を並べる — 下落は4月に始まり、業態差は最大12pt

2026年1〜9月の確定値を月ごとに前年比で並べると、下落の始まりと深さが見える。シティホテルは1月 +25.0%・2月 −3.0%・3月 −3.1%で推移したのち、4月 −18.1%・5月 −16.6%・6月 −26.3%・7月 −25.1%・8月 −24.4%・9月 −21.8%と、4月を境にマイナス幅が一段広がった。ビジネスホテルは1月 +3.9%・2月 −11.1%・3月 −8.9%から、4月 −23.8%・5月 −27.5%・6月 −32.8%・7月 −31.9%・8月 −33.6%・9月 −34.0%へと、同じ4月から下げ幅が拡大し、夏にかけて深まっていった。

推定成約ADR(税抜相当・確定月同士)の前年同月比。網掛けは前年に大型イベントの会期(2025年4月13日〜10月13日)が重なる月。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

注目したいのは業態の差である。4〜9月の前年比は、シティホテルが−16.6〜−26.3%、ビジネスホテルが−23.8〜−34.0%と、どの月もビジネスホテルの方が5.7〜12.2pt深い(最小は4月の5.7pt、最大は9月の12.2pt)。これは2025年の上振れ幅の差を映している。2025年の4〜9月を2024年同月と比べた上昇率は、シティホテルが+27.6〜+47.6%、ビジネスホテルが+35.6〜+53.1%で、単価の低い業態ほど比率で見た上振れが大きかった。結果として、8月の両業態の差は2024年約¥4,000・2025年約¥4,100・2026年約¥4,300と金額ではほぼ一定でも、ビジネスホテルの側から見た比率の振れは大きくなる。前年比を自館の目標に置き換える際には、この「比率の増幅」を業態ごとに補正しておく必要があるだろう。

主要都道府県と並べる — 2025年に跳ねたのは大阪だけだった

大阪の前年比マイナスが「万博の反動」なのか「全国的な単価調整」なのかは、他の都道府県と同じ物差しで並べると切り分けやすい。東京都・京都府・兵庫県・福岡県・北海道のシティホテルとビジネスホテルについて、同じ推定成約ADR(税抜相当)の確定月を7〜9月の3カ月合算で比べたのが表2である。

表2 主要都道府県の推定成約ADR 7〜9月合算の比較(確定月同士)
業態・都道府県2026年7〜9月平均
(N)前年比
2026/20252年前比
2026/20242025年の上振れ
2025/2024

シティ・大阪府¥12,912(97)−23.8%+4.9%+37.6%
シティ・東京都¥22,783(107〜110)−15.9%−2.3%+16.2%
シティ・京都府¥19,087(58〜61)−13.8%−7.6%+7.2%
シティ・兵庫県¥12,745(47)−8.0%+8.3%+17.7%
シティ・福岡県¥17,878(40〜43)+10.1%+13.2%+2.8%
シティ・北海道¥17,368(75)−6.0%+6.9%+13.8%
ビジネス・大阪府¥8,691(497〜504)−33.2%−2.5%+46.1%
ビジネス・東京都¥12,408(913〜915)−3.9%+4.4%+8.7%
ビジネス・京都府¥10,641(325〜327)−10.3%+0.6%+12.2%
ビジネス・兵庫県¥7,868(166〜168)+2.1%+9.3%+7.1%
ビジネス・福岡県¥10,726(340〜342)+5.2%+11.9%+6.5%
ビジネス・北海道¥11,108(432〜438)+5.1%+14.2%+8.7%

推定成約ADR(税抜相当・月次確定値)の7〜9月3カ月合算で比較。(N)は2026年7〜9月の集計対象施設数。愛知県は2026年9月19日〜10月4日に第20回アジア競技大会が開催され当年側にも大型イベントが乗るため除外した。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

最も差が出るのは右端の「2025年の上振れ」である。大阪は2025年7〜9月が2024年同期をシティホテルで+37.6%、ビジネスホテルで+46.1%上回っていたのに対し、他の5都道府県はシティ+2.8%〜+17.7%・ビジネス+6.5%〜+12.2%にとどまる。前年比で見ても、大阪のシティ−23.8%・ビジネス−33.2%に対し、5都道府県は−15.9%〜+10.1%の範囲に収まっており、2〜3割の下落は大阪に固有の動きといえる。一方で2年前比に置き直すと、大阪はシティ+4.9%・ビジネス−2.5%で、5都道府県の−7.6%〜+14.2%の帯の中に入る。前年比の深いマイナスは市場全体の調整ではなく、前年の上振れが大阪に集中していたことの裏返しであり、ベースラインを2024年側に置く判断の裏付けになる。

曜日ミックスの現在地 — 7〜9月の推定OCCは土曜が突出し、月曜・日曜が谷

ベースラインを引き直す際、価格と並んで点検したいのが需要の曜日構成である。大阪府の推定OCC(OTA掲載在庫ベース)を2026年7〜9月の92日分について曜日別に平均すると、シティホテル(対象34〜40施設/客室7,848〜9,042室・主要予約サイト掲載ベース)は土曜90.0%に対し月曜80.0%・日曜81.1%で、土曜と月曜の差は10.0ptだった。ビジネスホテル(対象282〜300施設/客室47,378〜49,130室)は土曜86.7%・木曜83.4%に対し、月曜75.6%・日曜74.2%と、週末と週明けの落差が12.5ptまで開いている。

表3 大阪府の曜日別 推定OCC(2026年7月1日〜9月30日の宿泊日・92日)
曜日シティホテル
推定OCCビジネスホテル
推定OCC業態差
(シティ−ビジネス)

月曜80.0%75.6%+4.4pt
火曜81.7%80.8%+0.9pt
水曜82.0%81.7%+0.3pt
木曜83.3%83.4%−0.1pt
金曜84.3%80.3%+4.0pt
土曜90.0%86.7%+3.3pt
日曜81.1%74.2%+6.9pt

2026年7月1日〜9月30日(92日)の宿泊日について、曜日ごとに推定OCC(OTA掲載在庫ベース・直近観測)を平均。シティ 対象34〜40施設、ビジネス 対象282〜300施設。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

月別の平均で見ると、シティホテルは7月83.9%・8月83.6%・9月82.0%、ビジネスホテルは7月81.1%・8月80.1%・9月80.0%と、いずれも8割台で安定しており、単価が2024年水準に戻った一方で稼働の側は厚みを保っていたことになる。日別で高かったのは、シティホテルでは7月11日(土)93.7%・8月1日(土)94.1%・9月20日(日)100.0%、ビジネスホテルでは7月11日(土)92.0%・8月8日(土)88.3%・9月20日(日)100.0%で、9月19〜23日の5連休は両業態とも9月21日(月・祝)に98%超を記録した(9月20日の100.0%は掲載残室がほぼゼロになった観測で、販売停止による掲載取り下げも消化側に数える定義のため、実客室稼働率の上限を示す値ではない)。一方で低かったのは、シティホテルの8月31日(月)65.3%、ビジネスホテルの8月31日(月)64.2%・9月6日(日)65.4%で、夏休み明けの週明けと連休の無い日曜が谷になっている。土曜・連休に需要が集中し、月曜・日曜が緩むという型は、価格の引き直しを「全日一律」ではなく「曜日の帯ごと」に行う根拠になる。ビジネスホテルの日曜の谷が連休の影響を除いても残る点は、大阪のビジネスホテル、9月は土曜83.7%・日曜67.9% — 連休を除いても残る15.8ptの日曜の谷が日別・リードタイム別に検証している。

11〜12月の基準ADRをどこに置くか — 2024年同月×上乗せ率の感度

インサイトに進む前に、「2024年を基準に引き直す」と決めた場合に11〜12月の基準ADRがどの水準に来るのかを、上乗せ率ごとに置いたのが表4である。2024年同月の確定値に0〜8%を上乗せした各水準と、それが2025年同月の確定値に対して何%の前年比になるかを併記した。

表4 11〜12月の基準ADR感度 — 2024年同月確定値 × 上乗せ率(括弧内は2025年同月確定値に対する前年比)
業態・月2024年同月
±0%+3%+5%+8%参考
2025年確定値参考
2026年現時点推定

シティ 11月¥12,643
(−12.7%)¥13,022
(−10.1%)¥13,275
(−8.3%)¥13,654
(−5.7%)¥14,484¥15,233
シティ 12月¥12,886
(−7.6%)¥13,273
(−4.9%)¥13,530
(−3.0%)¥13,917
(−0.2%)¥13,951¥13,802
ビジネス 11月¥10,035
(−13.1%)¥10,336
(−10.5%)¥10,537
(−8.8%)¥10,838
(−6.2%)¥11,554¥10,951
ビジネス 12月¥9,940
(−5.7%)¥10,238
(−2.9%)¥10,437
(−1.0%)¥10,735
(+1.8%)¥10,546¥10,167

推定成約ADR(税抜相当)。上乗せ率は試算上の仮定値。2026年現時点推定は2026年10月8日時点の販売状況に基づく推定で、月末の確定までに変動し得る。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

表4から読めるのは、11月と12月で前年比の見え方が大きく違うことだ。11月は2025年にまだ上振れが残っており(シティ約1万4,500円・ビジネス約1万1,600円)、2024年同月に8%上乗せしてもシティ−5.7%・ビジネス−6.2%と前年比はマイナスにとどまる。一方の12月は2025年の上振れがほぼ抜けており、2024年同月そのままならシティ−7.6%・ビジネス−5.7%だが、8%上乗せすればシティ−0.2%・ビジネス+1.8%と、前年比はゼロ前後まで縮む。つまり「11月以降は前年比が自然に縮む」とはいえ、11月の時点ではまだ数%〜1割強のマイナスが残る前提で目標を置く必要がある。なお、現時点推定の11月はシティが¥15,233と2025年確定値を上回る一方、ビジネスは¥10,951と下回っている。先の月ほど販売状況に応じて大きく動くため、基準の設定には確定値を使い、現時点推定は進捗の確認用にとどめたい。

大阪のシティホテル・ビジネスホテルを運営するレベニューマネジャーへ — 示唆とアクションプラン

インサイト1: 前年比の目標を「2年前比」に置き換えて点検する。 本稿の確定3カ月は、前年比ではシティ−21.8〜−25.1%・ビジネス−31.9〜−34.0%でも、2年前比ではシティ−0.9〜+15.4%・ビジネス−5.1〜+1.0%に収まっていた。自館の月次実績を前年比で評価し続けると、通常年ベースで健全な結果まで「未達」に見えてしまう。予算・目標・評価の軸を2024年実績(または2024年と2026年確定値の平均)に一度引き直したい。

インサイト2: 前年比マイナスは10月まで続き、11月以降は自然に縮む構造にある。 2025年の線は4月に跳ね上がり10月まで高原を保ち、11月(シティ約1万4,500円・ビジネス約1万1,600円)・12月(約1万4,000円・約1万500円)で他の年の帯に戻っている。10月の前年比だけを見て11〜12月や年明けの基準レートを下げると、比較対象が通常年に戻る時期まで安値を引きずることになる。月次の基準ADRは、月ごとに「前年が特異月か通常月か」を判定してから設定したい。

インサイト3: ミニマムレートは2025年の実績ではなく、2024年と2026年の確定値で引き直す。 2025年に引き上げたフロア価格をそのまま残すと、通常年の需要水準では稼働を取りこぼし、逆に前年比に反応して下げすぎると2024年の帯(シティ4〜9月平均約1万2,100円、ビジネス約9,000円)を割り込む。2026年の確定値(同約1万2,600円・約8,900円)が2024年とほぼ同じ帯にある事実は、フロアの再設定にそのまま使える参照点になる。

インサイト4: 曜日ミックスは「土曜・連休で取り、月曜・日曜で埋める」型を前提に組む。 7〜9月の推定OCCは、シティで土曜90.0%/月曜80.0%、ビジネスで土曜86.7%/日曜74.2%と差が開いていた。基準ADRを一律に下げる代わりに、土曜・連休前日の帯は通常年の上限側に据え、月曜・日曜の帯だけフロアに近づける組み方が、全体の平均単価を守りつつ稼働の谷を埋める余地を残す。

表5 レベニューマネジャー向けアクションプラン
時間軸打ち手判断トリガー(記事中の数値に紐づく)狙い

今日〜今週7〜9月の自館ADRを、前年比と2年前比の両方で並べ直す自館の前年比が市場(シティ−21.8〜−25.1%/ビジネス−31.9〜−34.0%)より浅く、2年前比が市場(シティ−0.9〜+15.4%/ビジネス−5.1〜+1.0%)を上回っているなら、通常年ベースでは健全と判断できる評価軸のズレを解消し、不要な値下げを避ける
今日〜今週月曜・日曜と土曜・連休で販売レートの帯を分ける自館の曜日別稼働差が市場の帯(シティ 土曜90.0%/月曜80.0%、ビジネス 土曜86.7%/日曜74.2%)より大きいなら、谷の曜日だけフロア寄りに調整する平均単価を守りながら谷を埋める
2週間以内11〜12月・年明けの月次基準ADRを2024年実績と2026年確定値から再設定する現在の基準が2025年11〜12月(シティ約1万4,500円・約1万4,000円/ビジネス約1万1,600円・約1万500円)を参照したままなら、2024年同月(シティ約1万2,600円・約1万2,900円/ビジネス約1万円・約9,900円)との中間帯に置き直す比較対象が通常年に戻る時期に合わせた価格形状にする
2週間以内ミニマムレートを業態の通常年帯で見直す自館のフロアが市場の2024年・2026年4〜9月平均(シティ約1万2,100〜1万2,600円/ビジネス約8,900〜9,000円)を大きく下回っているなら、フロアの引き上げ余地を検討する通常年需要の下でも単価の底を守る
来月に向けて10月確定値が出た時点で、2026年4〜10月を1つの「通常年ベースライン」として確定させる10月の確定値が現時点推定(シティ¥15,668/ビジネス¥10,876)と大きくずれた場合は、秋の需要形状を2024年10月(シティ約1万2,500円/ビジネス約9,300円)とも照合して基準を微修正する2027年予算の母数を特異年ではなく通常年に揃える
来月に向けて2027年4〜9月の予算を「2026年確定値 × 季節係数」で組み、前年比目標は補助指標に下げる予算策定の前提に2025年4〜9月(シティ平均約1万6,100円/ビジネス約1万2,800円)が残っているなら、2026年平均(約1万2,600円/約8,900円)へ差し替える翌年に同じ「前年比ショック」を繰り返さない

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

まとめ — 大型イベント翌年のADRを読む3つの物差し

ここまでを整理すると、大阪府の2026年7〜9月の確定ADRは、前年比ではシティ−21.8〜−25.1%・ビジネス−31.9〜−34.0%と深いマイナスに見える一方、2年前比ではシティ−0.9〜+15.4%・ビジネス−5.1〜+1.0%と通常年の帯に戻っていた。この読み方を自館に持ち込むための物差しは3つある。第一に、前年に大型イベントが乗っていた月は「2年前比」を主指標に置き、前年比は補助に下げること。第二に、月次の基準ADRとミニマムレートは、特異年の実績ではなく通常年(2024年)と直近確定値(2026年)の帯から引き直すこと。第三に、推定OCCの曜日差(土曜と月曜・日曜で10.0〜12.5pt)を前提に、価格の引き直しを曜日の帯ごとに行うことである。前年比の数字に反応して全日一律に価格を下げる前に、まずは比較対象の年が何年だったかを確かめたい。

よくある質問

Q. 大阪のホテルADRは2026年に下がったのか?

A. 前年同月比ではシティホテル−21.8〜−25.1%、ビジネスホテル−31.9〜−34.0%(2026年7〜9月・推定成約ADR・確定月同士)と大きく下がっています。ただし2024年同月と比べるとシティ−0.9〜+15.4%、ビジネス−5.1〜+1.0%で、通常年の水準に戻ったと読むのが妥当です。

Q. なぜ前年比ではなく2年前比を見るのか?

A. 比較対象の2025年4月13日〜10月13日は大阪・関西万博の会期で、2025年7〜9月の推定成約ADRは2024年同期をシティで+37.6%、ビジネスで+46.1%上回っていました。特異年を基準にすると通常年として健全な実績まで「未達」に見えるため、前年に大型イベントが重なる月は2年前比を主指標にします。

Q. 他の都道府県でも同じ下落が起きているのか?

A. 東京都・京都府・兵庫県・福岡県・北海道の7〜9月合算の前年比は−15.9%〜+10.1%で、2〜3割の下落は大阪に固有です。2年前比では大阪(シティ+4.9%・ビジネス−2.5%)も5都道府県の帯(−7.6%〜+14.2%)の中に入ります。

Q. 前年比のマイナスはいつまで続くのか?

A. 2025年の上振れは4月から10月まで続き、11月以降に縮みました。2024年同月に8%上乗せした基準を置いても、11月はシティ−5.7%・ビジネス−6.2%と前年比マイナスが残り、ゼロ前後まで縮むのは12月からです。

Q. ミニマムレートは何を基準に引き直すべきか?

A. 2025年に引き上げたフロアではなく、2024年と2026年の確定値の帯を参照します。4〜9月平均はシティが2024年約1万2,100円・2026年約1万2,600円、ビジネスが約9,000円・約8,900円で、両年がほぼ同じ帯にあることがフロア再設定の参照点になります。

データについて

推定OCC(OTA掲載在庫ベース)OTA掲載在庫ベース稼働率 = 100 − 100 × OTA掲載残室数 ÷ 総客室数。対象は総客室の30%以上をOTAに掲載する施設で構成したコホート(宿泊日によって対象施設数がわずかに異なるため、対象施設数を範囲で併記)。OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、実客室稼働率とは定義が異なる(掲載外の客室を消化済み側に数えるため高めに出る)。本記事の曜日別集計は2026年7月1日〜9月30日の宿泊日を対象とし、大阪府シティホテル 34〜40施設(客室7,848〜9,042室)、ビジネスホテル 282〜300施設(客室47,378〜49,130室)で構成。
ブッキングカーブ宿泊日の45日前から直近までの観測に基づく。本記事の推定OCCは各宿泊日の直近観測値を用いた。
推定成約ADROTA等の販売データ(最安プラン水準×業態別係数・複数チャネルのアンサンブル)から推定した成約価格水準(税抜相当)。過去月は確定値、現在・未来月は現時点の販売状況に基づく推定値。公表運営実績との照合で誤差中央値6.6%。本記事の前年比・2年前比はすべて確定月同士の比較であり、2026年10〜12月の値のみ現時点推定として区別して示した。
対象施設数(N)推定成約ADR: 大阪府シティホテル 2024年83〜88施設・2025年89〜91施設・2026年91〜97施設、ビジネスホテル 2024年484〜499施設・2025年487〜503施設・2026年487〜504施設(月により変動、表中に月別N)。業態区分はホテルバンクのカテゴリ分類に基づく。
データ時点データ時点: 2026年10月8日。販売状況・在庫は日々変動するため、本記事の数値は取得時点のスナップショットである。

参考資料・出典一覧

■ データソース

推定成約ADR(税抜相当・月次)は、大阪府および比較5都道府県(東京都・京都府・兵庫県・福岡県・北海道)のシティホテル・ビジネスホテルについて、2024年1月〜2026年9月の確定月と2026年10〜12月の現時点推定を集計した。推定OCC(OTA掲載在庫ベース)は大阪府の2026年7月1日〜9月30日の宿泊日(92日)の直近観測値。大阪・関西万博の会期は公式サイト、アジア競技大会の会期は大会公式サイトで確認した。

■ 試算前提

前年比・2年前比はすべて確定月同士の比較。7〜9月合算は3カ月の推定成約ADRの単純合計どうしの比。4〜9月平均は6カ月の単純平均。表4の基準ADR感度は2024年同月確定値に0・3・5・8%を上乗せした仮定値で、前年比は2025年同月確定値に対する比率。曜日別推定OCCは各宿泊日の値を曜日ごとに単純平均した。

■ 限界・留意点

推定成約ADRは販売データからの推定値で、公表運営実績との照合で誤差中央値6.6%。集計対象施設数(N)は月により変動する。推定OCCはOTA掲載在庫ベースで、販売停止による掲載取り下げも消化側に数えるため実客室稼働率より高めに出る。2026年10〜12月の値は現時点推定で、月末の確定までに変動し得る。比較5都道府県は大阪との対比のための選定で、全国平均を示すものではない。

2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)公式サイト — 会期 2025年4月13日〜10月13日https://www.expo2025.or.jp/
第20回アジア競技大会(愛知・名古屋)公式サイト — 会期 2026年9月19日〜10月4日https://www.aichi-nagoya2026.org/
推定成約ADR・推定OCC(大阪府・比較5都道府県)出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

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