送検のため那覇署を出る米海兵隊上等兵デビン・ジェイコブ・バラード容疑者=10月5日(写真:共同通信社)
全国の米軍専用施設面積の約7割が集中する沖縄でまた、米兵の関与が疑われる重大事件が起きた。
10月4日、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)に所属する米海兵隊上等兵、デビン・ジェイコブ・バラード容疑者(20)が強盗殺人容疑で逮捕された。バラード容疑者は容疑を否認しているが、那覇市の女性(39)の首を圧迫して窒息死させ、財布などを奪った疑いが持たれている。
米軍準機関紙「星条旗新聞(Stars and Stripes)」によると、バラード容疑者はオハイオ州出身の戦闘工兵で、2024年8月に海兵隊に入隊、米国内で新兵訓練や工兵教育を受けた後、沖縄に配属された。2025年10月1日付で上等兵に昇進している。米海兵隊の戦闘工兵は、戦闘部隊が展開できるように、爆破や障害物の除去、道路・橋の構築などを担う。
9月30日に就任した古謝玄太知事は5日には在沖米軍トップのベンジャミン・ワトソン四軍調整官(中将)らを県庁に呼び、抗議。那覇市議会は6日、再発防止や日米地位協定の見直しなどを求める抗議決議を全会一致で可決した。9日、沖縄県議会でも抗議決議を可決し、県庁前では急きょ抗議集会が開かれるなど、抗議の動きは県内に広がっている。
一方、沖縄県内に広がる緊迫感や怒りに比べ、県外での関心は必ずしも高いとはいえない。
なぜ沖縄県民は、米兵による重大事件にこれほど強い憤りや切実な恐怖を抱くのか。沖縄戦の終結以降、女性たちが背負ってきた米軍犯罪の記憶、復帰後も事件のたび県民の前に立ちはだかってきた日米地位協定の壁——。今回の事件を手がかりに、その背景をひもときたい。
性暴力と殺人、沖縄の女性たちに残る被害の記憶
米兵による重大事件が起きるたび、沖縄では「またか」という声が上がる。
アジア太平洋戦争末期の沖縄戦が終わってから80年余り、米軍人・軍属による殺人や性暴力などの事件が繰り返され、その記憶が沖縄社会に積み重なっている。
「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」が新聞、市町村史、書籍、証言などを基にまとめた記録には、1945年4月の米軍上陸以降、女性たちが受けた暴力の数々が連綿とつづられている。1946年には、暴行や殺人など女性に関連した事件が439件、翌47年にも242件あったとされる。連日のように女性たちが狙われ、時には命を落とし、自ら命を絶った者もいた。
被害者には若い女性だけでなく、少女や乳幼児なども含まれていた。
同会の年表には、こんな記録もある。
「生後9カ月の赤ちゃんが米兵に連れ出され、乱暴される」
「入院していた少女が父親の前で米兵に乱暴される」
沖縄の各地域では住民による自警団が結成され、米兵が集落に入ると鐘を鳴らして知らせ、女性たちを隠したという記録も残る。
