
香港とシンガポール、金取引のハブ目指す−中国との関係は是か非か
(ブルームバーグ):香港とシンガポールが今週、アジアの金トレーディングの中心地となる計画をイタリアでの業界会議でそれぞれアピールした。新規ビジネスの獲得競争が激しさを増す中で、旺盛な金需要を取り込もうとする動きが加速している。
アジアを代表する金融センター2都市は、新たな先物や中央銀行の準備資産保管などのサービスを提供することで、既存の金地金市場とつながることを目指しており、すでに地元の銀行や国際銀行の参加を確保している。香港は7月、金取引清算システムの試験運用を開始し、新たな価格指標も導入した。
ロンドン貴金属市場協会(LBMA)がソレントで開いた会合でのパネル討論で、香港財経事務・庫務局の許正宇局長は「スーパーコネクターであると同時に、スーパーバリューアダー(付加価値提供者)としての香港を位置付けている」と述べた。
トレーダーや投資家ら1000人を超える参加者が集まった業界最大級のこの会合は、香港とシンガポールの代表がそれぞれの構想を示す貴重な機会となった。
許局長によると、香港は年末に向けオフショア人民元建て金先物の詳細を公表するとともに、銀行が現物取引をリアルタイムかつ複数通貨で決済できるようにする。
シンガポールも同じような野心を抱いている。シンガポール通貨庁(MAS、中銀に相当)金融市場開発局のリム・チェン・カイ局長は同じパネル討論で、ロンドンの店頭取引とニューヨークの先物市場、アジアの産金国を挙げ、「われわれはさまざまな流動性プールをつなごうとしている」と語った。
香港とシンガポールは中銀の誘致にも動いている。中銀は、民間金融機関への貸し出しを通じて重要な流動性を供給できるためだ。シンガポールは中銀向けの金保管サービスを導入する計画。一方、中国人民銀行(中銀)はここ数カ月、香港で金準備を積み増している。
香港とシンガポールが着目しているのは、資産分散を進める世界的な動きだ。ここ数年で金を自国に移す通貨当局もあり、ロンドンやニューヨークといった歴史ある取引拠点の地位を揺さぶっている。
TBS CROSS DIG with Bloomberg
世界の中銀が保有する3万9000トンの金のうち、わずかな割合でも取り込めれば、地域のどの金融センターであっても影響力の強化につながる。
ドイツ連邦銀行(中銀)のナーゲル総裁はこの会合で、政府債務の増大も中銀が金保有を増やす根拠を強めているとの考えを示した。ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)が6月に公表した中銀74行を対象とした調査では、45%が今後1年間に金を購入する方針だと回答した。2018年の調査開始以来、過去最高の割合となった。
香港の許局長は会合の合間に、「われわれがやろうとしていることは、まったく新しいものではない」とした上で、「むしろ、分散化の必要性というこの流れに乗ろうとしている」と語った。
LBMAの会合に参加した一部の関係者からは、香港もシンガポールも金融センターとして共に発展する余地があるとの声も出たが、最大の課題は、すでに確立された拠点から取引を移す必要性を市場参加者に納得させることかもしれない。
センタリオンの貴金属シニアトレーダー、グレゴリー・フリス氏は別のパネル討論会で、「価格は何を基準にするのか世界中の誰に聞いても、LBMAフィックスだ」と述べ、「そこからどう進化していくのか。先手を打つ努力が必要だ」と指摘した。
香港の計画は、政策色が強い。すでに世界最大のオフショア人民元市場である香港は、金を活用して人民元の利用拡大を促すことを目指している。また、ウズベキスタンなど中国と友好的な関係にある金産出国との連携が見込めるという利点もある。
一方、中国との関係がリスクと見なされる可能性もある。センタリオンのフリス氏は、香港の人民元建て先物を評価しているとしつつ、一部のトレーダーはシンガポールでの取引の方が安心できるかもしれないとし、「企業や大手トレーダーは結局、先物に行き着く。自分が最も安心できるのはどこか、ということだ」との見方を示した。
原題:Hong Kong, Singapore Pitch Rival Gold Hubs to Bullion Market (1)(抜粋)
–取材協力:Jack Ryan、Jack Farchy、Kiuyan Wong.
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