米欧摩擦と認証技術の壁、先行する豪州や米訴訟に続く包括規制の行方

小久保 重信

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2026.10.8(木)

「EU子ども法案」について説明する欧州委員会のフォンデアライエン委員長(9月17日撮影、写真:ロイター/アフロ)

 欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会が9月中旬に提案した「EU子ども法案(EU Kids Act)」は、未成年者の保護を契機としてデジタル空間のルールを抜本的に見直す試みとして大きな反響を呼んでいる。

 13歳未満のSNS利用原則禁止や、15歳未満の個人アカウント作成制限を柱とする新法案は、プラットフォーム側に安全性の証明責任を負わせるなど、従来の規制方針を大きく転換させた。

 ウルズラ・フォンデアライエン欧州委員長が9月中旬の施政方針演説で構想を打ち出してから約3週間が経過した。

 巨大テック企業のビジネスモデルへの打撃や米政権との摩擦、さらには年齢確認を巡る技術的課題など、法制化に向けた論点が浮き彫りになりつつある。

 先行するオーストラリアのSNS禁止法や米国の規制立法、さらには米メタの巨額和解といった動きと連動しつつ、欧州発の包括規制がデジタル市場に投げかける影響を検証する。

段階的アプローチと「立証責任の転換」

 欧州委員会が9月17日に提示した子ども法案の特徴は、一律の遮断ではなく、子どもの発達段階に配慮した「段階的アクセス」を制度案の柱に据えた点にある。

 米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によれば、欧州委員会が招集した専門家パネルが今年初め、子どもの成長に合わせてプラットフォームの利用範囲を段階的に拡大していく施行案をまとめていた。

 欧州委員会の法案によると、12歳以下については、保護者の完全な管理下にあるアカウントを通じ、厳格な安全基準を満たした子ども向けサービスのみを認める。

 13、14歳については、保護者が監督できる制限付きアカウントのみを認め、利用時間を1日最大1時間に制限する。

 個人アカウントの自由な作成は15歳からとし、15歳以上18歳未満の利用に対してもプラットフォーム側へ安全設計(セーフ・デザイン)を義務付ける。実質的に15歳を「デジタル成人年齢」と位置付ける制度設計だ。

 法制面で注目されるのが「立証責任の転換」である。

 従来の規制は、違法コンテンツの通報を受けて事業者が削除するという手順が中心であった。

 これに対し新法案では、未成年者が利用する前に、自らのシステムが心身に有害でないことをプラットフォーム側が事前に証明する義務を課す。

 フォンデアライエン氏は施政方針演説で、「問題は未成年者がSNSにアクセスすることではなく、いつ、どのようにしてSNS側が未成年者にアクセスすることを認めるかにある」と指摘した。

 プラットフォーム側の受動的な管理から、事前予防を求める設計へと大きく舵を切った形だ。

対象はゲームやAIチャットボットへ拡大

 今回の法案は、従来のSNSのみならず、動画共有サイト、オンラインゲーム、AIチャットボット、AIコンパニオンサービスまで広く網羅している。

 背景には、生成AIの普及に伴い、子どもたちの写真が無断で性的画像に加工される被害や、対話型AIに対する不健全な依存が新たな脅威となっている現状がある。

 法案では、過激なコンテンツへの誘導や「無限スクロール」といった中毒性のある機能の排除を要求した。

 AIコンパニオンやチャットボットは初期設定で無効化(オフ)とすることを義務付け、子どもに感情的な愛着を抱かせるような擬似的人間関係のシミュレーションを禁じる。

 さらに、深夜帯のプッシュ通知停止や、利用者が有害コンテンツを容易に通報できる仕組み、保護者向け管理機能の搭載も義務付ける。

 規制の実効性を確保するため、企業側に重い負担を求める規定も盛り込まれた。

 英フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、規則に違反した事業者には、世界年間売上高の最大6%に相当する制裁金を科す規定を設けたほか、規制当局の法執行や監督にかかる費用を賄うための「監督手数料」の支払いを企業側に義務付ける方針だ。

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