2026年10月3日,大阪・うめきたのコングレスクエア グラングリーン大阪で開催された「OSAKA INDIE GAMES SUMMIT 2026」の会場で,近畿経済産業局の主催による公開セッション「近畿から新しいゲームIPが生まれる環境整備に向けた公開セッション 〜“遊ぶ側”から見たゲームづくりとは〜」が行われた。

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 このセッションは,近畿経済産業局が進める「近畿発ゲーム開発エコシステム形成に向けた調査・実証事業」の第1回検討委員会を,一般公開の形で実施したものだ。
 登壇したのは,異なる立場から近畿のゲーム開発に関わる検討委員6名。進行は,アドバイザーを務める合同会社一筆社代表で,Game Pavilion JPを主催する秦 亮彦氏が担当した。

【登壇者】

(五十音順)
・木村征史氏(株式会社room6 代表取締役)
・松下正和氏(株式会社ヘキサドライブ 代表取締役社長兼CEO)
・水谷俊次氏(株式会社アクティブゲーミングメディア PLAYISM エグゼクティブプロデューサー)
・村上雅彦氏(株式会社Skeleton Crew Studio 代表取締役)
・森 善龍氏(大阪電気通信大学 総合情報学部 デジタルゲーム学科 准教授)
・横田洸哉氏(株式会社ディレクターズ・ユニブ 執行役員 セールス部門統括)

【ファシリテーター】秦 亮彦氏(合同会社一筆社 代表/Game Pavilion JP 主催)

関西のクリエイターは「仲がいい」

 セッションは,登壇者それぞれが近畿のゲームづくりとの関わりを紹介するところから始まった。

 パブリッシャーとして多くのインディーゲームを手がけるroom6の木村氏は,関西のクリエイターの特徴として「仲のよさ」を挙げる。
 関西は長く活動しているメンバーが多く,互いに切磋琢磨しながらも,一緒に山登りに行ったり合宿をしたりする関係にあるという。木村氏は「そうした日々のアクティビティから創作が生まれているのかもしれません」と話した。

京都の片隅,出町柳にある築100年の洋館アパートメントの狭い一室で肩寄せ合いながら和気あいあいとゲーム開発してるというroom6(ShuJu)

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 ヘキサドライブの松下氏は,同社がコンシューマゲームの開発を主業務とする会社であり,インディー的な動きは社内タイトルという位置づけで行っていると説明した。
 大型タイトルの開発ではなかなか経験を積めないスタッフもいるため,「やりたい」と手を挙げた人に職種を問わずゲームを作ってもらう機会を社内に設けているという。実際に,もともとUIデザイナーだった女性スタッフの発案から,女性向けタイトル「MakeS」をリリースした例もあるそうだ。
 ただし企業の中では,業務の調整や予算の確保が欠かせない。「時間やお金を調整するのが,やはりなかなか難しいですね」と,松下氏は日々の業務と作りたいものを両立させる難しさにも触れた。

 PLAYISMの水谷氏は,近畿発のタイトルを紹介した。
 京都のKOTAKE CREATEによる「8番出口」や,インディーの黎明期から活動し,「洞窟物語」や「Kero Blaster」を手がけた京都の開発室Pixel,「Deadly Premonition」「The Good Life」「Hotel Barcelona」などで世界的に知られる大阪のSWERY氏,そして京都の2人組CAVYHOUSEによる「こふんは生きている ーマホロヴァ・クラブの死体さがしー」などだ。
 大阪,兵庫,奈良,京都と,近畿各地にデベロッパーがいるという。

実は8番出口の大元のモデルになったのは大阪の駅です?
専門学生の時に通学で毎日通っていた地下通路がモデルです。

— コタケ / KOTAKE CREATE (@NOTOKEKE) August 12, 2025

「自分を古墳だと思い込んでいる主人公が,自分の中に入れる死体を探すという,企業ではなかなか通らないような企画」としても触れたられた「こふんは生きている ーマホロヴァ・クラブの死体さがしー」

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[2012/07/28 00:00]

作り始めるハードルは下がったが,「作り切る」のは難しい

 続いて秦氏は,世にないものを作る難しさ,つまり「ゲームを作るとはどういうことか」を問いかけた。

 水谷氏は「ゲームを作るのは,地獄のような作業です」と即答する。
 何年にもわたって執着心だけで作り続け,完成しないのではないかという恐怖と戦い,関係者みんなで盛り上げながら奇跡的に完成させる。それでも売れるかどうかは分からない。そうしたストレスと日々戦っているのだという。

 木村氏も「インディーは売ろうと思って作るものではなく,作りたいがスタート」と話す。
 通常のゲーム開発では市場調査を経て企画が立つが,インディーではその順番が逆になる。だからこそ完成させること自体が難しく,計画を立てて進行管理まできちんとしているチームはめったにいない。
 room6では現在,進行管理を非常に重視しており,専任の人材を新たに採用したという。

 松下氏は,ゲームエンジンの普及や,ここ1〜2年のAIの登場によって「作り始める」ハードルは明らかに下がったと指摘する。しかし,その先には「完成させる」という壁があり,さらに「売れるところまで持っていく」という壁がある,と語った。

 水谷氏は,完成のラインそのものが分からないことも課題だと付け加えた。
 初めての1本では,どこが完成なのかが分からない。何本か作ったり会社で鍛えられたりするうちに,「ここまでできれば商品になる」という基準が自分の中にできてくるという。
 「クリエイターは孤独に作っていることが多いので,こうした経験値や知見を共有する場は絶対に必要。これまではなかなか機会がありませんでした」と述べ,国による支援への期待をのぞかせた。

イベントは開発の「セーブポイント」

 話題は,近畿のゲームコミュニティへと移る。

 京都で毎年開催されているインディーゲームの祭典「BitSummit」を運営する村上氏によると,2013年に始まったBitSummitは,もともとイベントを開こうとしたものではなかったという。
 個人で作品を作る人たちは孤独なので,作ったものを見せ合い,遊んでもらい,意見を言い合う場として集まったのが始まりで,いわばコミュニティベースのイベントだ。

 一人で開発していると,どこまで登り切ればいいのか分からず苦しい。イベントがあれば,自分の作っているものがどのレベルにあるのかを知ることができ,同じように苦労している人の姿を見て勇気をもらえる。
 一方で村上氏は,「イベントがあるからゲームができるわけではありません」とも強調した。
 日々の努力の結果としてイベントで作品が評価され,楽しんでもらえる。そこに集まることで次のステップに進むきっかけが生まれる。イベントはそうした「セーブポイント」のような役割を担っている,というのが村上氏の考えだ。

 村上氏は,イベント運営者として考えを改めたエピソードも明かした。
 BitSummitを始めて8年目ごろ,ある出展者から「出展できました。ゲームも作っています。この次はどうしたらいいですか」と聞かれ,衝撃を受けたという。BitSummitへの出展を目標に開発する人が出てきたことで,イベントとしてその先をどう作るかを考えるようになった。
 現在は,インフルエンサーを招いた外向けの配信,パブリッシャーを重点的に招いたBtoBのマッチング,BitSummitとしての海外イベントへの出展など,出展者の作品を広げる取り組みを意識しているそうだ。

 大阪電気通信大学の森氏は,BitSummitやGame Pavilion JPといったイベントに合わせて開かれる懇親会の価値を挙げた。登壇の場では話せない制作の裏側を共有したり,新しい知識や仲間を得たりできるからだ。森氏が指導する学生も,そうした場で生まれた縁からインターンシップにつながった例があるという。

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学校の垣根を越えるゲームジャム

 森氏によると,大学や専門学校には,それぞれ独自の文化圏ができる。それ自体はよいことだが,内に閉じこもってしまう場合もある。そのブレイクスルーになっているのが,2019年から実施されている「BitSummit Game Jam」だ。

 学生を対象に,大学や専門学校の垣根を越えてチームを組み,約3か月かけて1本のゲームを作るというもので,一般的なゲームジャムと比べるとかなり長い。
 たとえば理系大学の学生が,美術系に強い学校の学生と組むことで,優れた作品が生まれることもある。今回のOSAKA INDIE GAMES SUMMIT 2026にも,BitSummit Game Jamで生まれた作品を展示している学生がいるそうだ。

 2日程度で終わる通常のゲームジャムとは違い,イベント後も付き合いが続き,就職活動の相談をしたり,同じ会社に就職したりするケースもあるという。森氏は「ゲームジャムの文化が,今関西でいい形で元気になっている」と話した。

 和歌山での取り組みを紹介したのが,ディレクターズ・ユニブの横田氏だ。
 同社は,Discord上でゲーム制作コミュニティを運営している。和歌山には基本的にゲーム会社がなく,クリエイターや学生が活躍できる場が少ないことが課題だったという。
 そこでコミュニティを通じてクリエイターを発掘し,学生が作りたいものを実現できるよう支援している。和歌山はこれまで大阪や京都のコミュニティとつながりにくかったため,和歌山にコミュニティを作り,関西全体で回る形にしたいと考えたそうだ。和歌山のゲームジャムは学生だけでなく社会人にも門戸を広げており,レベルの高い作品が生まれているという。

 学生はイベントでの活躍についても,村上氏は「めちゃめちゃ助かっています」とのこと。BitSummitは,ボランティアの数が多く質も高いと評価されることが多いが,その担い手はすべて学生だという。
 イベント運営から企業ブースのスタッフまで手伝う学生たちは,自分が目指す業界の先輩と出会えることもあってモチベーションが非常に高い。実際に,ゲームジャムへの参加やボランティアを経てゲーム企業に就職した人や,独立してパブリッシャーと仕事をしているという報告もあるそうだ。

 学校側の立場から,森氏は「ゲームは,作った後に誰かに触ってもらってなんぼのもの」と語る。
 学生は作ったゲームを販売する必要はないが,BitSummitや東京ゲームショウといったイベントで来場者に遊んでもらうことを一つのマイルストーンにできるのは,教育の観点からもありがたいという。加えて,来場者への対応を通じて社会人基礎力のようなソフトスキルも身につく。学校の外でも学べる機会を積極的に活用していきたい,と話した。

近畿で続々と開催されるイベント

 セッション中盤に入ると,この場を借りて登壇者からは今後開催予定のイベントの告知が次々と飛び出した。ここにまとめて載せておこう。
・「Indie Developers Conference 2026」@東京
 インディーデベロッパー同士の知見共有を目的としたカンファレンス。
 開催日程:2026年11月28日(土)
 会場:esports 銀座 studio
 公式サイト:https://indiedevconf.jp/

・「ええかんじのゲームガッカイ(EGG)」@大阪
 学生の作品に焦点を当てた展示イベント。入場無料の事前登録制。
 開催日程:2026年12月5日(土)
 会場:大阪電気通信大学 寝屋川キャンパス
 公式サイト:https://eekanji-gg.com/

・「京都ゲームホリデー」@京都
 京都市役所前の複合施設「QUESTION」と地下街「ゼスト御池」の2会場。room6とQUESTIONの共催で,room6としては初の主催イベント。
 開催日程:2026年12月12日(土)
 公式サイト:https://kyotogameholiday.com/
 
・「GGX Games Showcase」@和歌山
 インディーゲームや学生作品を和歌山で展示。
 開催日程:2027年1月24日(日)
 会場:和歌山城ホール
 公式サイト:https://gamesshowcase.gamegrove-x.com/

・「GAME CREATORS CONFERENCE ’27」@大阪
 近畿最大級のゲーム開発者向け勉強会。
 開催日程:2027年3月12日(金)
 会場:大阪府立国際会議場(グランキューブ大阪)10F
 公式サイト:https://gc-conf.com/

・「Game Pavilion JP」@大阪
 学生や海外の開発者も参加するインディーズ展示会
 開催日程:2027年3月13日(土)
 会場:梅田スカイビル
 公式サイト:https://gamepavilion.jp/

・「BitSummit 2027」@京都
 開催日程:2027年5月21日(金)〜 5月23日(日)
 会場:京都・みやこめっせ
 公式サイト:https://bitsummit.org/

 村上氏は,BitSummitの会場をこれ以上大きくできないため,規模ではなくコンテンツを成長させたいと話し,「自分たちで自分たちの首を絞めるように,新しいことをどんどんやっていきます」と意気込んだ。
 水谷氏も,Indie Developers Conferenceについて「大阪や近畿でもやれたらいいなと思っています」と語っている。

 秦氏は,これらの告知はイベントの宣伝が目的ではないと前置きしたうえで,「関西にはこれだけの場がある」ことを強調した。このほかにも開発者が集まる報告会や,毎年1月に行われる「Global Game Jam」のようなゲームジャムも各地で開かれており,ゲームを作ることがいよいよ身近になってきていると感じるという。

年々ミチミチになってきているBitSummit

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ヒットの陰で激しさを増す競争

 秦氏が「ここ数年,インディーの流れが加速している印象はあるか」と尋ねると,木村氏は「特にここ1〜2年はすごい」と応じた。
 作る人が増えただけでなく,昨年から今年にかけて,毎月のように新しいパブリッシャーが参入しているという。木村氏は「戦々恐々としています」と笑いつつも,ライバルという意識はないと話す。
 インディーゲームの市場はまだこれから伸ばさなければならず,一般のゲームユーザーにもまだ知られていない面があるため,盛り上がり自体はありがたいという。

 松下氏は,パブリッシャーは数多くいても互いにつながっていないことが多いとし,両者をつなぐうえでもイベントは有効だと指摘した。
 木村氏も,OSAKA INDIE GAMES SUMMIT 2026を主催するPhoenixxとはイベントのたびに顔を合わせる間柄だと明かし,パブリッシャー自身がイベントを主催することは,パブリッシャー同士の交流にもなると話した。

 水谷氏は,ここ数年の変化のきっかけとして,「天穂のサクナヒメ」「パルワールド」「8番出口」「都市伝説解体センター」といった,目に見えるインディー発のヒットが出始めたことを挙げる。
 「8番出口」は映画化にまで至った。数名の力で強力なIPを生み出せることが実証されたのは,ビジネスとして非常に大きいという。会話の中では,「8番出口」が半年ほどで開発され,数百万本規模のヒットになったことにも触れられた。

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[2026/10/02 19:30]

 一方で,競争は激しさを増している。かつてSteamで1日に数本だった新作のリリースは,今や1日に30〜50本に達している。その日のランキング上位に入らなければ食べていけない状況だという。
 水谷氏は「望ましい状態ではありつつも,脱落していく人がこれからものすごく増えていく。我々自身も脱落するのではないかと思いながら戦っています」と率直に語った。

 AIの進化によって,数年後には誰でもゲームを作れるようになるかもしれない。
 しかし,遊ばれるゲームや売れるゲームといったクオリティの高い作品を作れる人は,結局は一握りだ。裾野が広がったからといって,ピラミッドの頂点が上がるとは限らない。
 水谷氏は,作る人を増やすだけでは足りず,それをビジネスとして上の段階に引き上げる仕組みが必要だと指摘する。「今は仕組みがなさすぎて,偶発的なヒットをみんなで待っている状態に近い。そこをどう作るかに,今回の委員会がつながるといいと個人的には思っています」

海外とのつながりと,「作家性」とのバランス

 秦氏によると,近年は国内の売上比率が1割,あるいは5%程度で,残りはすべて海外というタイトルも増えており,海外とどう接続するかが課題になっている。BitSummitのBtoBマッチングの会場では,ずらりと並んだ商談用の机で英語や中国語が飛び交っているという。
 村上氏は,BitSummitでは「MeetToMatch」というヨーロッパのBtoBマッチングシステムを使い,パブリッシャーと開発者が直接出会えるようにしている。
 海外から日本のコンテンツを求めてやってくるパブリッシャーがいる一方で,日本の開発者は,海外から自分の作品を売り込みに来た開発者とも競争しなければならない。パブリッシャーは当然,売れるものを選ぶからだ。

 だからこそ,挑戦する人の数を増やし,成功の確率を上げることが大事だと村上氏は語る。
 ゲームジャムは,ただ集まって楽しく作るだけのものではなく,ゲーム作りの全体をごく短期間で体験できる貴重な機会だ。作品を作ること以上に,作品を作るための基礎体力をつける「筋トレ」になり,新しい仲間と出会うきっかけにもなる。

 ただし村上氏は,「底上げだけをしていても,面白いものが生まれる保証はない」とも付け加える。一人で考え抜いて何かを生み出す情熱は絶対に必要だが,一人で抱え込んで倒れてしまうのもよくない。
 コミュニティや他者との協業と,個人の作家性のバランスが大事であり,個人の作家性が強い日本だからこそ,それを失うのはもったいない。そこに日本らしいコミュニティやインディーのあり方があるのではないか,と語った。

 秦氏は余談として,10年ほど一人で同じ作品を作り続け,ある日発売するというケースも個人開発では珍しくないと紹介した。
 また,海外にも同様のコミュニティは多いが,海外ではゲームを産業として捉え,税金を開発費に充てて支援する例も少なくない。とはいえ,お金だけでは解決しない。コミュニティも必要だし,一人で作るだけでも足りない。このバランスこそがエコシステムであり,それを関西で作っていけたら,とまとめた。

 村上氏は,近畿という地域の面白さにも言及した。
 広大な東京と比べ,近畿は狭い範囲に異なる文化を持つ府県が密集しており,それぞれを行き来できるコミュニティを作れば非常に面白い場所になるという。

 滋賀県出身の村上氏は,「たとえば鮒寿司を作るゲームのような,個人の体験や価値観から生まれたものが,海外でハマったりする」と例を挙げ,そうした作品が生まれる土壌作りはまだまだこれからだと話した。

近畿ではないものの,OIGS2026にも出展されている,地域的な体験から生まれた「うどんプレッシャー」

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 和歌山での取り組みは現在2年目を迎えている。横田氏によると,1年目はコミュニティの種まきが中心で,現在はDiscordに数百人のクリエイターが参加しているという。
 運営は和歌山県の補助を受けて行っているが,行政の資金がいつまでも続くわけではない。3年目,4年目を見据え,学生やコミュニティメンバーを中心としたサポートチームを作り,彼ら自身でイベントを企画してもらう取り組みを進めているという。行政が関わることで,ゲーム業界は変わってしまうのか

 セッションの最後には,会場との質疑応答が行われた。
 「ゲーム業界は行政の支援がなくても,グローバルに通用するコンテンツとして拡大してきた。行政が関わることで,行政とのパイプを持つ人やコミュニケーション能力の高い人が強くなり,業界が変わってしまうのではないか。クリエイターファーストであるべきだと考えるが,どう思うか」と問いかけられた。

 木村氏は,パブリッシャーとしてクリエイターファーストで活動するなかで,いつも考えるのは「1本目は出せても,2本目,3本目と作り続けるのが一番難しい」ということだと答えた。
 1本目がヒットしてその収益で次を作れれば理想的だが,センスはあってもセールスに結びつかないクリエイターは大勢いる。そうした人を支援したくても,パブリッシャー単独では難しい。だからこそ,継続して作り続けるための公的支援には意味がある,という考えだ。

 村上氏も,お金があるからゲームを作れるわけではないとしたうえで,作り続けられる場所や環境づくりに公的な支援が充てられるとよいと話す。
 本当に作りたいものがある人に,少しでも作るチャンスが与えられれば,挑戦できる人の数が増える。その意味でむしろポジティブに捉えている,と述べた。

 秦氏は,経済産業省がSteam上で日本のゲームを目立たせる施策や,海外イベント「gamescom」への出展支援を行っていることを紹介し,「コミュニケーションが上手な人だけが恩恵を受けるのではなく,むしろ公平性が求められる役所が関わることで,平等さが保たれるのではないか」と述べた。

 水谷氏は,質問者の懸念に「すごく共感してしまった」と切り出した。行政がゲームを売るのに役に立つのか,という思いは自分にもある。
 返済不要の開発費を出してくれるならありがたいが,そういう取り組みでもない。「我々は日々,血で血を洗うような戦いをしている。その中で“裾野を広げよう”とはなかなか言えません。でも,せっかく税金を払っているのだから役に立ってほしい」

 そのうえで水谷氏は,パイプの強い人が得をする仕組みは嫌だとし,「本当に才能のある人が出てくることに役立ててほしいと思って,この委員会に参加しています。何年か経って“結局パイプか”と言われたらごめんなさい。そうならないようにしたいと思って,めちゃくちゃ忙しいですが協力しています」と,参加の動機を率直に語り,セッションを締めくくった。

 近畿にはすでに数多くのイベントやコミュニティがあり,クリエイター同士の距離も近い。
 一方で,作り続けるための資金や,ヒットを偶然に頼らないための仕組みは,まだ十分とはいえない。行政の関与が「パイプのある人」ではなく「才能のある人」に届く形になるのか。今回の検討委員会の議論が,今後どのような具体策につながっていくのか注目したい。

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