挨拶する金子さん
サンパウロ市リベルダーデ地区のサンパウロ日本移民史料館で1日晩、関係者約80人が集まる中、長編アニメ映画『Eu e Meu Avô Nihonjin(私と日本人のおじいちゃん)』の特別展の開幕式が行われ、翌2日から一般公開が始まった。文化省(Lei Rouanet)や三菱UFJ銀行などの後援のもと、アニメ制作会社 Pinguim Content が主導する本展は、歴史的遺産の保存と現代ポップカルチャーの融合を図る試みだ。同特別展は1月末まで。
2012年にジャブチ賞を受賞したオスカール・ナカザト氏の小説を原作とする本作は、10歳の少年ノボルが祖父ヒデオとの対話を通じてルーツを探求する物語だ。史料館にアニメの世界観を再現し、日伯両国の文化的アイデンティティと世代間の対話を架橋する意義は大きい。
開幕式では日系社会のリーダーらが集い、移民史継承の重みを語り合った。ブラジル日本文化福祉協会の西尾ロベルト会長は、「当協会の使命はブラジルにおける日本文化の保存と普及。責任感や誠実さといった日本の価値観を尊重しており、私も孫と一緒にこの映画を鑑賞し、大変感銘を受けた。史料館でこのような展示までしてもらい感謝している。そうした大切な教えや価値観が次世代の心に深く残ることに期待したい」と述べた。
史料館副運営委員長の岩山明郎(としろう)氏は、自らも戦後移民の一人として「私も横浜から船に乗り、50日以上かけて到着した」と強調。「血の中に移民の歴史がある」と語り、移民史を生き抜いた誇りを表現した。岩山氏は、日本企業勤務時代は厳しい人柄で知られたが、「孫娘との関係性を通して頑固だった自分自身が和らぎ、映画の祖父と孫の対話に深く共感した」と明かした。
家族の情感と歴史が交差する本作の魅力は、日系社会を超え、ブラジル社会にも波及している。非日系制作陣が描く本作の鍵は、文化の真正性の追求だ。プロデューサーのリカルド・ロジノ氏やセリア・カトゥンダ監督は、平野恭子氏の時代考証や史料館での取材を通じ、展示の移民の家や生活用品をアニメへ反映させたと明らかにした。
祖父役の声優を演じた在伯65年余りのベテラン俳優・金子謙一氏は「私は日本人でもブラジル人でもなく、世界人だ」と普遍的な人間観を示し、「『ありがとう』とは『滅多にない貴重な出来事への感謝を意味する』」と前置きした上で、「このような映画に参加する機会を与えてもらい、アリガトウ」と語った。
現在、日本やフランスでも同映画は巡回ロードショー中で、NHKラジオ等からの取材も受けるなど、注目を浴びているという。フランスでは学校教材に採用されるなど、本作は多文化共生や寛容性を提示する世界的価値を高めている。
本特別展と連動して、10月7日(水)には文協大講堂で無料上映会「文協シネマ」が開催され、同作が上演される。
