イスラエル、欧州極右に接近 元ナチスに設立された政党とも

米ニューヨークの国連本部で開催された第81回国連総会で演説するイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相(2026年9月24日撮影)。(c)TIMOTHY A. CLARY/AFP

【AFP=時事】パレスチナ自治区ガザ地区での軍事作戦をめぐり国際社会で孤立を深めるイスラエルは、一部に過去の反ユダヤ主義の負の遺産が残されているにもかかわらず、欧州の極右と急速に接近している。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ政権は外国の政治家について、ガザでの戦闘における同国の振る舞いを批判すれば「ユダヤ人に対する憎悪をあおっている」と批判する一方、イスラエルを支持さえすれば、その過去やイデオロギーにかかわらず受け入れてきた。

フランスの調査報道サイトが9月28日、極右政党「国民連合」のジョルダン・バルデラ党首が10代の頃にユダヤ人を侮辱するような発言をしたと報じたことを受け、イスラエルのアミハイ・シクリ・ディアスポラ・反ユダヤ主義闘争相がバルデラ氏を擁護する事態となった。

シクリ氏は、来年のフランス大統領選に関する世論調査で支持率トップを走るマリーヌ・ルペン氏が勝利した場合に首相就任が有力視されるバルデラ氏について、「イスラム組織ハマスに対抗する欧州において、最も毅然とした声を上げる人物の一人だ」と評価。

「バルデラ氏は(2023年10月7日にハマスの襲撃を受けた)音楽フェスティバル『スーパーノバ』の現場や(同日に蹂躙されたイスラエル南部のパレスチナ自治区)ガザ地区との境界周辺のコミュニティーを訪問してくれた」「彼はサバイバーらと面会し、エルサレムで反ユダヤ主義と闘う姿勢を訴えた」と付け加えた。

イスラエルは2000年、オーストリアで元ナチス党員らによって設立された極右政党「自由党」を含む連立政権が発足した際、駐オーストリア大使を本国に召還し、同国に対する国際的なさらし上げ運動を支持した。

だが、ネタニヤフ政権はこの自由党との関係正常化に乗り出した。

シクリ氏は今年9月、自由党のヘルベルト・キクル党首が、政権を獲得した際の政策綱領に「反ユダヤ主義および反シオニズムとの闘い」を盛り込むと表明したことを受け、「歴史的転換点」だと称賛した。

■極右への「コーシャ認証」

イスラエルは、スウェーデンやスペイン、英国など、欧州の他の極右指導者にも接近し、イスラム教徒移民の流入という共通の懸念を通じて絆を深めている。

イスラエルはさらに遠く離れた中南米のアルゼンチンやコロンビアに強硬右派かつ親イスラエルの大統領が誕生したことを歴史的転換点として称賛している。

ただし、少なくとも現時点において唯一の例外はドイツで、イスラエル当局はドイツの極右政党「ドイツのための選択肢」との接触を依然として避けている。

AfDが台頭しつつあった2017年から2022年までイスラエルの駐ドイツ大使を務めたジェレミー・イサカロフ氏は、欧州の極右政党の一部が過去の反ユダヤ主義からの脱却を証明する方法を模索していると指摘する。

イスラエルとの関係を構築することによって、「彼ら(欧州の極右)は一種の『コーシャ認証(食品や原材料、製造工程がユダヤ教の食事規定に適合していることを、第三者の認証機関が審査・証明する制度)』を手に入れている」とイサカロフ氏はAFPに語った。

同氏は「極右側のメリットは明確だ。しかしイスラエル側にとって、自らの価値観や国際的地位を損なうデメリットしかない」と指摘。

「過去3年間、(欧州の)中道派や左派からイスラエルに対する批判が強まる中、イスラエルの右派政治家の間には、共通の要素を持つ勢力と接近することでその批判に対抗しようという動機が生まれている」と付け加えた。

イサカロフ氏は、ドイツのみならずフランスやオーストリアを含む他の欧州諸国においても、イスラエルは極右勢力を支援することが「現地のユダヤ人コミュニティー」にどのような影響を与えるかをまず最初に考慮すべきだと訴えた。

英国では昨年、イスラエルが極右の扇動者トミー・ロビンソン氏を歓迎し、イスラム過激派に対する同氏の見解を称賛したことを受け、地元のユダヤ人団体が懸念を表明した。 

■欧州の分断に見出す利益

イスラエル当局は、自国を批判する欧米の指導者に対し、極めて非外交的な言葉を投げかけている。

イスラエルのギドン・サール外相は最近、占領するパレスチナ自治区ヨルダン川西岸のユダヤ人入植地産品に対する英国の輸入禁止措置に反対したとして、英国の反移民を掲げる強硬右派政党「リフォームUK」のナイジェル・ファラージ党首に電話をかけ、その立場を称賛した。

イスラエルは同時に、ユダヤ人難民の息子であるエド・ミリバンド英外相を非難し、シクリ氏に至っては同外相の髪型までやゆした。

イスラエルと欧州の関係を研究するプラハ国際関係研究所のアズリエル・バーマント准研究員は、ネタニヤフ氏による欧州極右の抱き込みについて、欧州内部に「くさび」を打ち込む狙いもあると分析する。

「ネタニヤフ氏の認識としては、イスラエルを支持し、欧州全体のコンセンサスに異を唱えてくれる国が存在するならば、それは望ましいことだ」とバーマント氏は語る。

同氏は例として、今年選挙で敗北して退陣したハンガリーのオルバン・ビクトル前首相とネタニヤフ氏との親密な関係を挙げた。

オルバン氏は、大富豪で慈善家のジョージ・ソロス氏に対するネガティブキャンペーンが反ユダヤ主義的な陰謀論を利用していると批判を浴びる中でも、一貫してイスラエルを支持し続けた。

10月27日のイスラエル総選挙でネタニヤフ氏が敗北して下野した場合、同国のこうした外交アプローチが転換する可能性があるとバーマント氏は予想する。ただし、ネタニヤフ氏のライバルたちも、次期大統領になる可能性があるルペン氏のような指導者との接触は保つ可能性が高いが、イスラエルそのものを極右勢力と同一視させるような振る舞いは避けるだろうという見解を示している。

匿名を条件に取材に応じた元駐欧イスラエル大使は、ルペン氏やバルデラ氏が来年フランスの政権を握る可能性を考慮すれば、イスラエルがバルデラ氏を非難しない理由は理解できると語った。

しかし同氏は、イスラエルは分断をあおる人物と不用意に結びつくのではなく、より現実的でバランスの取れた外交姿勢を取るべきだと強調した。

「いつか政権は右派から左派へ、左派から右派へと交代する。もし極右に肩入れしすぎると、自らに特定のイメージを定着させてしまうことになる」と警告した。
【翻訳編集】AFPBB News

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