令和8年9月18日(金)、愛媛大学南加記念ホールにおいて、日本学術会議・愛媛大学未来価値創造機構共同公開シンポジウム『人口減少社会における地方都市の未来価値 ―「縮充」という新しい地域モデル―』を開催しました。
開会にあたり、日本学術会議連携会員・農学委員会地域総合農学分科会委員長も務める仁科弘重愛媛大学長から、日本学術会議地域研究委員会縮小社会の地域構想分科会、農学委員会地域総合農学分科会及び愛媛大学未来価値創造機構の設置趣旨や活動について紹介がありました。日本学術会議の社会科学系と農学系という異なる分野の分科会と、地域や社会の未来価値について議論・発信する未来価値創造機構が、「人口減少社会における地方都市」という共通の課題のもとにつながり、学術的知見と地域の実践を結び付けながら地域の未来について議論する本シンポジウムの意義を強調しました。
続いて、日本学術会議第一部会員・地域研究委員会縮小社会の地域構想分科会の中澤高志委員長(明治大学経営学部教授)が、「縮小社会を前提とした持続可能な国土・地域を構想するために」と題して報告を行いました。人口減少と東京一極集中が進む社会を前提に、地域生活圏の形成や、地域間の相互依存関係を踏まえた国土・地域政策の必要性を説明するとともに、地方都市や小規模自治体が食料生産や環境保全などの面で果たす役割を紹介しました。
さらに、日本学術会議連携会員・農学委員会地域総合農学分科会の武山絵美幹事(愛媛大学未来価値創造機構副機構長・農学研究科教授)が、「多極分散型社会の実現に向けた農の役割」と題して報告を行いました。人口10万~20万人規模の地方都市と周辺農山村との関係に着目し、農業が持つ多面的機能や地域内循環の重要性について説明しました。地方都市と農山村が近接していることで生まれる相互補完的な関係が、多極分散型社会の基盤となる可能性が示されました。
開会挨拶及び趣旨説明をする仁科学長
報告を行う中澤委員長
報告を行う武山幹事
会場の様子
パネルディスカッションでは、「人口減少社会における地方都市のあり方をめぐって―多様な立場から考える地域の可能性と実践―」をテーマに、中澤委員長、武山幹事、今治市産業部産業政策局海事都市今治推進課海事都市今治推進係の山本貴之係長、いよぎん地域経済研究センターコンサルティング部の山之内崇特任部長、愛媛大学未来価値創造機構の大久保武准教授(地域レジリエンス学環准教授)が登壇しました。モデレーターは、愛媛大学未来価値創造機構の井口梓副機構長(社会共創学部教授・日本学術会議連携会員・地域研究委員会縮小社会の地域構想分科会委員)が務めました。実際の生活圏と行政区域の関係、地方都市と農山村のつながり、地域産業を支えるエコシステム、人と人とのネットワークの重要性など、多様な観点から地域の未来について議論が行われました。
山之内特任部長からは、人口減少社会においては「一つの都市がすべての機能を持つ」という前提を見直し、それぞれの都市が暮らしを「支える」機能、地域間で「つながる」機能、地域固有の強みを「尖らせる」機能を担いながら連携していく必要性が示されました。山本係長からは、今治市の海事産業を例に、企業、行政、教育機関等のつながりや企業間連携が地域産業を支える基盤となっていることが紹介されました。さらに、大久保准教授は、行政区域だけでなく、実際の暮らしや地域コミュニティに着目して地域の将来を考える必要性を指摘しました。また、異なる事情を抱える地域や住民同士が対話を重ね、互いに支え合いながら、地域全体の持続可能性を考えることの重要性を述べました。
山之内特任部長
山本係長
大久保准教授
パネルディスカッションの様子
武山幹事は、農山村や地域社会に蓄積された知識や関係性は貨幣価値だけでは測れないことを指摘するとともに、島国であり、美しい山並みを有する日本の風景や暮らしを、将来の世代にも引き継いでいきたいと語りました。また、人口減少によって人と人との距離が広がる中、地域の活動や交流の場を意識的につくり、人と人とのつながりを育てていくことの必要性を述べました。
議論の終盤で、中澤委員長は、「こうならないようにするための未来」ではなく、「こういう暮らしがしたい」「こういう社会を実現したい」という希望やビジョンから未来を語ることの重要性を指摘しました。人口減少を前提とする時代だからこそ、地域の価値や可能性に積極的に目を向け、目指したい未来の姿から地域づくりを考えていく必要性が示されました。
モデレーターを務めた井口副機構長
山下機構長による閉会挨拶
これらの議論を受け、井口副機構長は、地方都市の価値は一つではなく、大都市や農山村との関係、食料、国土、環境、生態系など、さまざまな視点から捉えられることを総括しました。また、異なる分野や立場の人々が同じ場で対話を重ねること自体が、人口減少社会における地域の未来を考える上で重要であると述べました。
閉会にあたり、愛媛大学未来価値創造機構の山下政克機構長は、人口減少社会における地方都市の未来について、学術的知見と地域での実践を結びつけながら、多様な視点から議論できたことへの謝意を述べました。また、今回の議論を一過性のものとせず、地域構想推進プラットフォーム等を通じて、地域の未来をともに考える取組につなげていきたいと述べ、シンポジウムを締めくくりました。
<学長室>
