米運輸省は米国時間9月28日、新たな規則「Freedom Means Affordable Cars」を発表し、企業平均燃費(CAFE)基準をバイデン前大統領らが主導した規制の導入前の水準に戻した。

 Sean P. Duffy運輸長官は、米国人が望まない電気自動車(EV)の製造を自動車メーカーに強いてきた「違法な義務付け」に終止符を打ったと述べた。しかし、燃料価格が高騰する中、燃費の悪い車をメーカーが造りやすくする今回の規則は、あまりにも現実を見ていないように感じられる。

 全米自動車協会(AAA)によると、本稿執筆時点の米国の平均燃料価格は、1ガロン(約3.79L)当たりレギュラーガソリンが4.48ドル、軽油が6.45ドルとなっている。主な要因は、イランでの紛争とホルムズ海峡の封鎖に伴う不安定な情勢だ。給油所での価格は紛争開始以来、50%以上上昇している。

 天然資源保護協議会(NRDC)でクリーン自動車担当ディレクターを務めるKathy Harris氏は、今回の発表を受けた声明で、「米国人が1ガロン4ドルを超えるガソリン代の支払いに苦しんでいる中、トランプ政権は給油の負担をさらに増やそうとしている」と述べた。「燃費基準が骨抜きになれば、石油会社には思わぬ利益が転がり込む。その一方で、私たちは懸命に働いて得た給料の、さらに多くを給油に回すことになる」

新規則の内容

 運輸省によると、正式名称を「The Safer Affordable Fuel-Efficient (SAFE) Vehicles Rule III」とするこの新規則は、新車の平均価格を1300ドル引き下げ、今後5年間で米国民の支出を1380億ドル削減するものだ。また、新車販売を促すことで、重傷者を30万人、死者を1900人減らせるとしている。

 新規則は、2022~2031年モデルの燃費基準を緩和する。米運輸省道路交通安全局(NHTSA)は、緩和後も2031年モデルの車両全体の平均燃費は34.9マイル/ガロン(約14.8km/L)に達すると推計している。2024年モデルの30.1マイル/ガロン(約12.8km/L)よりは改善するものの、バイデン政権時代に乗用車と小型トラックに設定された最低平均燃費の約50.4マイル/ガロン(約21.4km/L)には、遠く及ばない。

 NRDCの担当者は米CNETへの電子メールで、34.9マイル/ガロンという目標は「自動車メーカーがすでに達成している平均値を下回っている」と指摘した。筆者には、この新規則は緩やかな改善を目指すというより、単に現状を維持するものに見える。

 新規則では、2030年モデルから車両の分類方法も変更する。運輸省はこれにより、メーカーが小型クロスオーバー車の設計を変えたり装備を追加したりして、燃費基準が緩い小型トラックに分類させる行為を抑えたい考えだ。同省は発表資料で、この変更によって「現在、小型トラックが約70%、乗用車が約30%となっている車両構成を、乗用車が約70%、小型トラックが約30%へと逆転させる」ことを目指し、ハッチバックやワゴン、小型車の復活を促したいとしている。

 新規則はまた、2028年からCAFEクレジット取引制度を廃止する。これにより、連邦の燃費基準を上回る性能を達成した自動車メーカーが、基準達成に充当できるクレジットを獲得することはできなくなる。このクレジットは、将来に備えて繰り越したり、自社の乗用車部門と小型トラック部門の間で移転したり、他のメーカーに売却したりできるものだ。この抜け道が閉じられると、余剰の規制対応クレジットの売却で2024年度には約27億6000万ドルを得たTeslaは、主要な収入源を失うことになる。

米国のドライバーに恩恵はあるのか

 燃費目標の緩和によって起こり得るのは、従来の厳しい基準を満たすために投入されるはずだった燃費の良い車種が棚上げされたり、開発の承認を得られなくなったりすることだ。メーカーは製造費用が安く済むことの多い、燃費の悪い車の生産を選ぶかもしれない。燃料価格が今後も上昇するかどうかは、ホルムズ海峡を通じた石油の輸送がいつ再開するかに大きく左右される。高騰が続けば、購入者は高い維持費と、燃費の良い車の選択肢の減少との板挟みになりかねない。その後10年間にかかる維持費が増えるのであれば、車両の購入価格が多少下がっても、大した慰めにはならない。

 専門家からも、失望を伝える声が米CNETに寄せられている。

 全米消費者連盟で消費者保護と製品安全を担当するシニアディレクターのDaniel Greene氏は、電子メールで寄せた声明で次のように述べた。「本日、トランプ政権は、家計の負担軽減と常識に対して、おそらくこれまでで最大の打撃を与えた。ガソリン価格が急騰し、エネルギー危機が迫る中で、連邦の燃費基準を骨抜きにしたのだ。国内のクリーンエネルギーに対する約2年にわたる継続的な攻撃と、前例のないエネルギー効率基準の弱体化が、この混乱を招いた一因となっている。給油の負担を増やし、生活費の高騰を一層深刻にする失敗した政策をさらに推し進めても、現状を打開することはできない」

 理屈の上では、筆者も車両の再分類には賛成だ。使われることもなさそうな、不要なオフロード走行用や貨物運搬用の装備を付けて燃費を悪くした車が、より緩い基準を適用される恩恵を受けるべきではない。セダンやハッチバックの復活を促すという考え方も好ましい。ただし現実的には、メーカーも米国の消費者も、SUVを造り、乗ることにあまりにも深く傾倒している。分類の変更がどこまで状況を変えられるのかは分からない。また、クレジット取引制度の廃止も、悪いことだとは思わない。メーカーが金を払って排出基準の順守を免れることができなくなるのは、少なくとも悪い話ではない。

 筆者が話を聞いた専門家たちは、Freedom Means Affordable Carsは後退だという点で一致している。この政策は、良くても残念な現状の維持にとどまる。最悪の場合、車購入の選択肢は減り、ドライバーのガソリン代は増える。そうなる可能性は高そうだ。

この記事は海外Ziff Davis発の記事を4Xが日本向けに編集したものです。

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