朝から降り続いた雨は、JSB1000の決勝を前にさらに強さを増した。

路面には大量の水が残るヘビーウェット。その難しいコンディションの中で、最後まで立っていた者だけが結果を手にできるレースがスタート。

ホールショットは國井勇輝(SDG Team HARC-PRO. Honda)が奪う。野左根航汰(Astemo Pro Honda SI Racing)、中須賀克行(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)、水野涼(SDG DUCATI Team KAGAYAMA)、長島哲太(DUNLOP Racing Team with YAHAGI)の順に1コーナーに進入する。水野はサイティングラップでリアタイヤのグリップ感をつかめず、「タイヤに熱が入るまではペースを落とそう」と判断。結果、オープニングラップで6番手まで後退した。

序盤、國井、中須賀、長島による三つ巴のバトルを展開する。誰かが決定的に速いわけではない。前に出れば逃げられるほどの差もない。國井の背後に中須賀。そのさらに後ろから長島が機会をうかがう。3人とも、勝てる位置にいた。

國井の背後から迫ったのは中須賀。3周目には0.167秒差まで詰めた。雨量が多く、一線を越えれば簡単に転倒へつながるコンディション。それでも中須賀は國井の背後から離れなかった。

だがそこには後ろから様子を伺う余裕はなかった。直線では離され、ブレーキングで詰める。その繰り返しだったという。「あのペースで走るのも自分はいっぱいいっぱいでした」國井を追い、長島を背後に従えながら、今季初めて勝利が現実的な距離にあった。

しかし14周目。その中須賀が転倒した。レースはそこで大きく形を変える。

その2人を後方から追っていたのが長島だった。1分43秒台の予選を見た長島は「ウェットで勝てるとは思っていませんでした」という。しかし決勝が始まると、先頭のペースは1分44〜45秒台。「このぐらいだったら全然チャンスがあるなと思いました」ただし、追いつけば抜けるという単純な状況ではなかった。

國井と長島ではタイヤが違い、速い場所と遅い場所も違った。前のリズムにつられて走れば止まり切れず、リアが流れる。離れては追いつく、の繰り返し。その中でどこで突けるのかを探していた。「抜く時はもう、スパッ!と行かなくてはと思っていました」

16周目の最終コーナー立ち上がりで國井に並びかける。ホームストレートでは國井が前。しかし1コーナーで國井がブレーキングを頑張ることも長島は読んでいた。その立ち上がりを利用し、クロスラインからシケインのブレーキングで一気に前に出る。ここからが長島の“勝つためのレース”だった。

「前に出たら、スパートをかけようと余力は残しておきました」驚くことに終盤の18周目に1分43秒909と43秒台へ入れて一気に國井を引き離した。

今季JSB1000にステップアップした國井にとって、これほど長い時間トップを走り、全日本最高峰のトップライダー2人を従えるレースは初めてだった。序盤の三つ巴のバトル。「中須賀選手を離せれば自分の自信にも繋がりますし価値も上がると思ったのですが、ずっと付いてきた。やっぱり中須賀選手です」

「長島選手もずっと後ろにいるのは分かっていました。但、余裕があるのか、様子を見ているのか分かりませんでした」だからこそ、後ろを見るのではなく自分の走りだけに集中した。

しかし長島にかわされた後に追いかけるだけの余力は残っていなかった。ここからさらにリスクを負って転倒するよりは最後まで走り切ることを選んだ。

今季最高順位の2位。「2位は嬉しいです。でも勝てるかもしれないと言う位置にいながら抜かれてしまったことは本当に悔しいです」と悔しさを滲ます。

長島がトップチェッカー!「長島哲太にしかできない」と言われてダンロップタイヤの開発を始めて3年目。待ち続けた初勝利だった。「素直にすごく嬉しいです」だが、その言葉のあとに続いたのは喜びだけではなかった。

「ドライで勝たないと、本当の意味で証明されないと思います」

前戦もてぎから開発速度と精度が上がり、今回も新しいレインタイヤが投入された。その進化として初めて「勝利」に結びつけた。それでも長島にとって、これはまだゴールではない。

2位でゴールすればチャンピオン決定。しかしこの日の水野には、その条件を追えるだけのフィーリングがなかった。タイヤに熱が入ればペースを上げられると考えていたが最後までリアのフィーリングは改善しない。水野は攻めることではなく、帰ってくることを選んだ。結果は3位。タイトル決定は最終戦鈴鹿へ持ち越された。この冷静さも今季の水野を象徴している。

「今回の現状ベストの走りはできたと思います。転倒だけはなんとしても避けなくてはいけません。チャンピオンに向けて自分でもコントロールできているのかなと思います」

ただ、時間が経つにつれて別の感情も湧いてきた。「こんなに勝てないって悔しいんだなって再確認できました。やっぱり優勝したい」レーシングライダーとしての本能が顔を出した瞬間でもあった。

長島にとって、3年間の挑戦が初めて勝利という形になった岡山。
國井にとって、自分がJSB1000で勝てるところまで来たことを示した岡山。
中須賀にとって、今季初勝利が見えながら、その手からこぼれ落ちた岡山。
そして水野にとって、俯瞰しながらもライダーとしての本能を再認識した岡山。

同じ21周を走った4人に、まったく違う意味が残った。4人それぞれが見えた現在地が、最終戦でどこへ行くのか。2026年シーズンは、いよいよ鈴鹿で最後の答えを迎える。

全日本ロードレース第6戦 SUPERBAIKE RACE in OKAYAMA 決勝レース TOP10は以下の通り

優勝:#45長島 哲太 DUNLOP Racing Team with YAHAGI
2:#92國井 勇輝 SDG Team HARC-PRO. Honda
3:#88水野 涼 SDG DUCATI Team KAGAYAMA
4:#6岩田 悟 Team ATJ
5:#10鈴木 光来 Team ATJ
6:24#吉田 愛乃助 TONE Team4413 BMW
7:#5伊藤 和輝 Team SAKURAI HONDA
8:#46星野 知也 TONE Team4413 BMW
9:#50児玉 勇太 Team Kodama
10:#85津田 拓也 Team SUZUKI CN CHALLENGE

Photo & text:Toshiyuki KOMAI

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