2026年9月28日 午前7時30分

 【論説】福井県内で近年、小規模で個性的な書店が誕生している。独自に選んだ本を並べる店や、カフェ併設、本棚を貸し出すシェア型などがあり、地域の書店文化を盛り上げる。一方で撤退や閉店も相次いでおり、まちの本屋の経営環境は厳しいのが現実。国は今春、業界関係者らによる研究会で、高コストな流通構造の改善に向けた議論を取りまとめた。業界特有の問題について官民で取り組む意義は大きい。

 福井市の西武福井店に7月開店した「食べる本屋さん」は取次会社を介さず、独自に地方の小さな出版社の本をそろえる。デパートの業界紙が経営し全国で2店目。自費出版の記念会や絵本の読み聞かせ会を開催して、地域の人々の交流の場としたい考えだ。

 8月オープンの鯖江市の「きねの書店」は本棚を貸し出して、人々がお勧めの一冊を販売するシェア型書店だ。県内既存店の中にも店の一角をシェア型にしたり、読み聞かせやワークショップを開いたりして、本を通じて地域に新たなコミュニティーを生み出している。

 出版研究所(東京)によると、2025年の紙の出版物(書籍と雑誌)の推定販売額は、半世紀ぶりに1兆円を割り込んだ。ピークだった1996年の4割弱となり、電子出版を合わせても4年連続の減少。出版不況は深刻さを増している。

 経済産業省は昨年「書店活性化プラン」を打ち出した。書店を「地域の重要な文化拠点」と位置付け、販路開拓や活字文化振興、リノベーション支援などに取り組んでいる。中でも注目したいのは、業界関係者が集まった「出版産業における返品削減研究会」の議論だ。価格を維持する「再販制度」や売れ残り商品を返品できる「委託販売制度」といった流通構造について検討を重ね、書店の大きな負担となっている返品作業の削減に向けた取り組みの方向性を定めた。業界全体の収益向上につながると期待される。

 高校生の55%が1カ月に1冊も本を読まない(25年学校読書調査)など、読書離れも課題だ。プランでは、幼少期から本に親しめるように絵本専門士の養成講座拡大を図る。福井県でも第4次県子どもの読書活動推進計画(25~29年度)で、ジュニア司書や学校図書館サポーターの養成に取り組む。人材が活躍する機会を広げていきたい。

 本屋に集う人たちは、本棚を見渡すことで多様な価値観に触れ、人生の指針となるかもしれない一冊に出合える。まちの書店の多彩な工夫や業界の改革、そして読書文化の振興を組み合わせることで、本屋の未来を開いていきたい。

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