西田亮介の週刊時評

【西田亮介の週刊時評】「選挙無効」の苦い記憶を上書きできるか、8自治体がタブレット端末投票に挑戦、試金石に

西田 亮介

西田 亮介
日本大学危機管理学部教授、社会学者

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2026.9.25(金)

2024年大阪府四條畷市長選の電子投票で導入されたタブレット端末の見本(写真:共同通信社)

わずか8自治体、されど8自治体

 来春4月の統一地方選で、タブレット端末を使った電子投票の実施を決めた自治体が現時点で8自治体にとどまるという。千葉県流山市、愛知県みよし市、同県東浦町、大阪府四條畷市、香川県善通寺市、福岡県志免町、同県新宮町、宮崎県新富町である。

◎共同通信『電子投票、8自治体止まり 来春統一選、普及進まず』(2026年9月23日)

 都道府県と市区町村をあわせれば、自治体の数は1700を超える。そのなかで実施予定が8程度というから、実施数はまだまだ少ない。

 実は電子投票は、日本ではまだ解禁されていないネット投票や、2013年公職選挙法改正で実現したネット選挙(運動)に先行して導入されたが、一度、事実上「死んだ」制度である。それがタブレットを利用することで蘇り、ようやく複数の自治体が同じ選挙で横並びに実施するところまで来たのである。これは、大きな前進だ。

 筆者はネット選挙に関して複数の著作や論文があり、専門のひとつとするが、自宅などからスマホやPCで投票するネット投票は、不要か、少なくとも慎重であるべきだと考えている。

 だが投票所での電子投票は別物であり、将来、コンビニ等での電子投票やネット投票の導入を視野に入れるのであれば(前者は筆者も賛成である)、むしろいっそうの推進が期待されるところである。

 そもそも電子投票の正式名称は「電磁的記録式投票」という。地方選挙について、条例により電磁的記録式投票機を用いた投票を行えるよう公職選挙法の特例を定めた電磁記録投票法は、第153回国会で成立し、2001年12月7日に公布、2002年2月1日から施行された。

◎総務省「電磁的記録式投票制度について」

 対象は地方議会の議員と首長の選挙に限られ、国政選挙では使えない。実施するかどうかは自治体が条例で決める「手挙げ方式」である。しかも電子化できるのは投票所及び期日前投票所における投票であり、点字投票、不在者投票、郵便投票及び仮投票は除かれる。

◎総務省「電磁記録投票法の概要」

 投票機が満たすべき条件は、総務省が技術的条件として示している。

【電磁的記録式投票機が具備すべき条件について】

○ 電磁的記録式投票機は、次に掲げる条件を具備したものでなければならない。

 ① 選挙人が一の選挙において二以上の投票を行うことを防止できるものであること。

 ② 投票の秘密が侵されないものであること。

 ③ 電磁的記録媒体に記録する前に、選択した候補者の氏名を電磁的記録式投票機の表示により選挙人が確認することができるものであること。

 ④ 電磁的記録式投票機の操作により候補者のいずれを選択したかを電磁的記録媒体に確実に記録することができるものであること。

 ⑤ 予想される事故に対して、電磁的記録媒体の記録を保護するために必要な措置が講じられているものであること。

 ⑥ 電磁的記録媒体が電磁的記録式投票機から取り出せるものであること。

 ⑦ 権限を有しないものが電磁的記録式投票機の管理に係る操作をすることを防止できるものであること。

 ⑧ ①から⑦までのほか、選挙の公正かつ適正な執行を害しないものであること

○ 電磁的記録式投票機は、電気通信回線に接続してはならない。

(総務省選挙部「電子投票システムに関する技術的条件及び解説」(令和6年6月、第三次改定版)より引用。強調は引用者による)

 つまり、ここでいう電子投票はネットにつながらない。投票所の記載台に置かれた端末で候補者を選び、記録媒体に保存して開票所に運び、集計する。紙の投票用紙と鉛筆を、画面とタッチペンに置き換えたものと考えればわかりやすい。

 スタートは悪くなかった。2002年の岡山県新見市の選挙を皮切りに導入が始まり、以来、全国の10自治体が地方選挙で計25回、電子投票を実施していたという。

◎日経クロステック『大阪府四條畷市が全国で8年ぶりの電子投票、円滑に完了も浮上した課題』(2025年4月1日)

 流れを決定的に変えたのが、岐阜県可児市の事件である。

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