日本アニメーション本社スタジオの作画室。部屋では動画や原画を担当する社員らが作業している=東京・多摩市


 テレビや配信でたくさんのアニメーションを楽しめる時代になった。アニメ制作には、多くの人たちが関わっている。五泉市出身のアニメーター・近藤喜文さんが所属したほか、新潟市出身の漫画家・水島新司さん原作のアニメを制作するなど新潟にもゆかりがあり、ファミリーで楽しめる作品を多く手がける日本アニメーション(東京)の協力で、アニメの作り方を紹介する。

笑いや感動を視聴者に 制作工程を追う

 アニメーション作品ができるまでにはどのような手順を経ていくのだろうか。1990年から日本アニメーション(日アニ)が手がけるテレビアニメ「ちびまる子ちゃん」を参考に、大まかな工程を追ってみた。

 まずはどのような作品にするか「企画」を練る。原作が漫画や小説だったり、オリジナルだったりさまざまだが、作品の全体的な枠組みを決める。

 続いて「シナリオ」。放送時期に合わせて構成を考え、脚本家が台本を書く。その後、キャラクターや背景など作品の世界観をつかさどる「デザイン作業」が行われる。

 それらを基に、作品の設計図となる「絵コンテ」が描かれ、各部門の素材制作が始まる。

 まずは「原画」だ。アニメの重要なポイントとなる絵を描いていく。

 その原画と原画の間の絵を描き、動きを生み出すのが「動画」だ。ちびまる子ちゃんの場合、30分間の1話分で約3500枚の動画が必要だという。デジタルでの制作も進んでいるが、原画や動画のほとんどは専用用紙に鉛筆で描いている。

 次に行われるのは「仕上げ(彩色)」。日アニでは紙に描かれた絵をスキャニングした後、色彩設計が決めた色に合わせて、パソコンで色付け作業を行う。

 それぞれの場面が描かれたら、キャラクターのほか日アニの場合は外部に発注している背景などの素材を一つに合成して映像化する。「撮影」と呼ばれる工程だ。「編集」では撮影でできたシーンをつなぎ合わせ、調整する。

 その後、声優がキャラクターの動きに合わせてせりふを入れる「アフレコ」や、BGMや効果音を入れる「ダビング」、テロップを入れる「ビデオ編集」が行われ、ようやく1作品が完成する。

 1話に対し、約70人のスタッフが関わり、シナリオから出来上がりまで約5カ月かかる。日アニは「完成したアニメを視聴者に楽しんでもらい、笑いや感動を届けられることにやりがいを感じる」としている。 

デジタル以前、セル画時代の作業とは?

 日本アニメーション(日アニ)には、セル画時代の制作過程を物語る資料や、アニメ制作を支えた機械が残っている。その一部を紹介する。

 日アニでは1999年ごろ、セル画からデジタルの制作に移行し始めた。


世界名作劇場「ロミオの青い空」のセル画と背景画 (C)NIPPON ANIMATION CO., LTD


 「ちびまる子ちゃん」では現在も、レイアウトや絵コンテなどは鉛筆で描いている。

 セル画時代と大きく違うのは、撮影以降のプロセスだ。高さ3メートル以上の撮影台は、台の上にキャラクターなどを描いたセル画と背景画を重ね、足元のシャッターで一コマごと撮影していた。デジタル化が進み現在は、パソコン上でキャラクターと背景を合成し、特殊効果を組み合わせている。


大型の撮影台。セル画と背景画を置き、1枚ずつ撮影していた=東京・多摩市


 撮影が終わると、編集作業に取りかかる。

 昔は、撮影したフィルムを手作業で切り張りしていた。作業の過程で机の下に落とすなどして、見失うこともあったという。

 日アニ本社スタジオには、フィルムがうまくつながっているか、確認する専用の機械「ビュアー」や上映機材が残っている。


フィルムの編集作業を再現する名取信一さん=東京・多摩市


 編集を担当する名取信一さん(63)は、フィルム時代の作業が分かる唯一の社員だ。名取さんは「世界名作劇場シリーズは、海外でも放送していたので、画質がよい35ミリフィルムを使っていた。4Kリマスターも美しく再現できる」と振り返る。「ちびまる子ちゃん」は99年までフィルムだったが、「デジタル制作への移行は早かった」と振り返る。


ビュアーという機械を使い、フィルムのつながりを確認する名取さん=東京・多摩市


 完成したフィルムは、キー局に運びこんだ。時には青森県など地方局に運んだこともあったという。 


「赤毛のアン」の納品用フィルム


「赤毛のアン」「フランダースの犬」名作を生み出した日アニ


「赤毛のアン」の場面写真(C)NIPPONANIMATIONCO.,LTD.“AnneofGreenGables”TMAGGLA


 日本アニメーション(日アニ)は1975年に創業した。看板ブランドのテレビシリーズ「世界名作劇場」は同年の「フランダースの犬」を皮切りに日曜夜に名作を届け、96年の「家なき子レミ」で一区切りをつけた。

 日アニは、新潟県とも縁がある。近藤喜文さんは、高畑勲さんが演出した「赤毛のアン」に参加。宮崎駿さんの初演出作品「未来少年コナン」も手がけた。


世界名作劇場シリーズの「赤毛のアン」のレイアウト。制作には宮崎駿さんや近藤喜文さんらが関わった(C)NIPPONANIMATIONCO.,LTD.“AnneofGreenGables”TMAGGLA


 日アニは水島新司さん原作の「ドカベン」のほか、新発田市出身の漫画家・聖悠紀さん原作の劇場版アニメ「超人ロック」も生み出した。

 国民的作品として知られるのが「ちびまる子ちゃん」だ。90年に放送がスタート。その年の10月にはテレビアニメの歴代最高視聴率39・9%(ビデオリサーチ調べ、77年以降)を記録するなど社会現象を巻き起こした。


近藤喜文さんに師事したベテランアニメーターの佐藤好春さん=東京・多摩市


地域活性化にもキャラクターが一役「ラスカル子ども映画祭」


ラスカル子ども映画祭ではラスカルの着ぐるみが登場し、人気を集めた=2月、東京・多摩市


 日本アニメーション(日アニ)は、半世紀にわたり本社スタジオを置く東京都多摩市と連携した取り組みにも力を入れる。

 世界名作劇場「あらいぐまラスカル」のキャラクターなどが登場する「ラスカル子ども映画祭」は、2015年から年1回、最寄りの京王・聖蹟桜ケ丘駅の周辺で開いている。


ラスカル子ども映画祭で行われたキャラクターのお面を作るワークショップ=2月、東京・多摩市


 ことしは1月末から2日間の日程で、年齢別にプログラムを提供。「うっかりペネロペ」や劇場版アンパンマンなどを上映。子どもたちはリラックスした様子で楽しんでいた。「赤毛のアン」のお面を作るワークショップも人気を博した。

 聖蹟桜ケ丘駅周辺を歩いて楽しむ「まち歩き」は、秋に行っている。参加者は日アニのキャラクターを使った謎解きやスタンプラリーをしながら、街を散策。ラスカルがデザインされたポストカード配布のほか、飲食店ではラスカルのコラボメニューが楽しめる。

 このほか、マンホール、市職員の名刺にもラスカルの図柄があしらわれている。


ラスカルの図柄をデザインしたマンホールのふた=東京・多摩市



ラスカルデザインのマンホールのフタ。桜やイチョウなど多彩な図柄がある=東京・多摩市


 多摩市商業・観光担当課長の永井陽介さん(46)は「日アニのキャラクターは物語性があり、街のイメージを変える大きな力がある。シビックプライドの向上や、関係・来街人口の増加につながっている」としている。

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