インドのモディ首相(4月29日撮影、写真:AP/アフロ)

 世界の重心は、いま静かにインドへと移動している。インドを、生産拠点と大市場を兼ね備えた「次の中国」と呼ぶべきではない。「次の世界」と見るべきである。

 トヨタ自動車はインドに新たに3つの工場建設を計画しているという。5月1日付の日本経済新聞が報じた。

 また、住友不動産はムンバイ中心部で新たに2つのオフィスビル用地を取得し、既存3物件と合わせてムンバイで計5物件を展開する計画で、総事業費は約1兆円規模に及ぶという。これも日本経済新聞が2025年5月8日付記事で伝えている。

 なぜ今、世界はインドに注目し大規模な投資を行っているのか。

 この問いに対して、私は「天・地・人」の3つの視点から解き明かしたい。

地:地政学がインドを押し上げる

 第1は「地」、すなわち地政学である。

 インドは西洋と東洋を結ぶ戦略的要衝に位置し、日本の約9倍の国土を持つ。ヒマラヤから熱帯までの多様な自然条件を内包するこの国は、地理的にも経済的にも極めて大きな潜在力を持つ。

 現在の世界は、米中対立、中東情勢の緊張、ロシア・ウクライナ戦争の長期化といった不安定な構造にある。

 これまで世界の製造業の中核を担ってきた中国に対し、サプライチェーンの再編が不可避となる中で、インドは「もう一つの中核」として急速に浮上してきた。

 これは単なる新興国の成長ではない。世界経済の重心が移動しつつあることを意味している。

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