第61回ヴェネチア・ビエンナーレの一般公開期間中(5月9日〜11月22日)、ナショナル・パビリオンのロシア館が公開されない見通しであることが、イタリアの複数メディアの報道で明らかになった。
記録映像のみを上映
報道によると、ロシア館はビエンナーレ開幕前のプレビュー期間中(5月5日〜8日)のみ公開され、展覧会「木は空に根を下ろす(The tree is rooted in the sky)」に関連するライブパフォーマンスを実施する。その後は会期終了まで閉鎖され、パフォーマンスの記録映像のみが館の窓に設置されたスクリーンに映し出されるという。
ロシアによるウクライナへの攻撃が続く中、ここ数週間、イタリアの文化相を含む欧州の文化・政治関係者からはロシア館の閉鎖を求める声が相次いでいた。今回の措置は、そうした圧力を受けて浮上した妥協案とみられる。
この計画は、イタリアのメディアであるOpenとラ・レプッブリカが最初に伝えた。両紙は、ビエンナーレ財団会長ピエトランジェロ・ブッタフオーコ、同ゼネラルディレクターのアンドレア・デル・メルカート、ロシア館コミッショナーのアナスタシア・カルネエワの間で交わされたメールをもとに、その詳細を明らかにしている。
これらの報道によれば、ロシアの参加計画は2025年6月頃から具体化し始め、今年1月にはカルネエワが展示の詳細(企画書や完成予想図など)を提出していた。また、2025年11月のメールの一部には、デル・メルカートがロシア館キュレーターのペトル・ムソエフらの渡航ビザ取得を支援しようとした経緯も含まれており、イタリアの在ロシア外交機関関係者とのやり取りが示されている。
一連の報道を受け、ビエンナーレ財団は4月27日付でイタリア紙イル・ジョルナーレに声明を発表。「ロシアの参加は規則を完全に遵守して進められた」とし、「適用される国内法および国際法を厳格に守り、権限と責任の範囲内で行動した」と説明した。
さらに声明は、「報道で指摘されているような欧州制裁違反は一切なかった」と強調し、「制裁は厳格に適用された」と述べた。また、ジャルディーニにある他のナショナル・パビリオンと同様に、「ロシア連邦のプロジェクトの実現可能性と現行規則への適合性は厳密に審査された」としている。
ロシア参加をめぐり、イタリア上層部が分裂
ロシアがヴェネチア・ビエンナーレに参加するのは、2022年2月のウクライナ侵攻以降初めてとなる。ブッタフオーコ会長はこれを支持したが、イタリア国内では強い反発を招き、イタリア文化相アレッサンドロ・ジュリは今週、ロシア館への抗議として5月9日の開幕式をボイコットすると表明した。また、文化省の財団理事会代表であるタマラ・グレゴレッティに対しても、「ロシアの参加について文化省に報告せず、問題の国際的な機微を認識しながら参加に賛意を示した」として辞任を要求。これに対しグレゴレッティは、理事会の独立性を理由に辞任を拒否。一方、同国副首相マッテオ・サルヴィーニもロシア参加への支持を改めて表明している。
4月初めにはEUもロシアの復帰に反発し、是正に応じない場合には次回の約200万ユーロ(約3億7000万円)の資金提供を撤回する意向を示していた。欧州委員会副委員長のカヤ・カラスは、「ロシアがウクライナの美術館を爆撃し、教会を破壊し、文化の消去を試みている状況で、自国の展示を行うべきではない」と述べ、その参加を「道義的に誤りだ」と非難している。
なお、ウクライナも今回のナショナル・パビリオンに参加している。同国のウォロディミル・ゼレンスキー大統領は4月10日、ロシア館に関係する5人に制裁を科したと発表し、参加者のビザ取り消しを求める働きかけを行っている。(翻訳:編集部)
from ARTnews
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