「郡山城跡」(奈良県大和郡山市)の「追手門」には、観光バスツアーも度々到着し、平日の昼間に人だかりができていた(3月5日撮影/Lmaga.jp)
JR大阪駅から約1時間で到着する、奈良・大和郡山。大河ドラマ『豊臣兄弟!』で、440年ほど前にこの地を治めた豊臣秀長が主人公となり、街の注目度も急上昇。ゆかりの地には、平日にも多くの人が訪れ「秀長さんフィーバー」が巻き起こっている。
3月2日には「豊臣兄弟! 大和郡山 大河ドラマ館」がオープン。開館から約20日間で、早くも来場者数が1万人を突破し、関係者も反響に驚いているそうだ。そんな大和郡山で巡る、豊臣秀長の“聖地巡礼”コースをご紹介する。
■ 1万人突破!見応えたっぷり「大河ドラマ館」
「豊臣兄弟! 大和郡山 大河ドラマ館」がある「DMG MORI やまと郡山城ホール」外観(写真提供:豊臣兄弟! 大和郡山 大河ドラマ館 主催:秀長さんプロジェクト推進協議会)
JR「大阪駅」から「近鉄郡山駅」へは、2回の乗換を経て行くことができる。所要時間は約1時間。近鉄のほか、徒歩13分の場所にはJR「郡山駅」があり、JR「大阪駅」から大和路快速を使って、直通46分で到着する。
まずは、「近鉄郡山駅」から徒歩約5分、「DMG MORI やまと郡山城ホール」内にある「大河ドラマ館」を訪問。
「近鉄郡山駅」から「大河ドラマ館」へ向かう道中。随所に看板があるので迷わない(3月5日撮影/Lmaga.jp)
ホールのロビーは、秀長の居城「郡山城」の石垣の、実際の図面をモチーフにしたデコレーションがされている。ちなみに『豊臣兄弟!』のロゴマーク、よく見ると文字の上にヒビのようなものが入ってるが、実はこちらも郡山城の石垣がデザインされたもの! その辺りの詳細を解説したパネルの展示は、複数ある「大河ドラマ館」のなかでも、ここだけだそうだ。
「豊臣兄弟! 大和郡山 大河ドラマ館」入口。壁面には、石垣のデザインが施されている(写真提供:豊臣兄弟! 大和郡山 大河ドラマ館 主催:秀長さんプロジェクト推進協議会)
「誘致活動もしていなかったので、秀長さんが主人公になると聞いた時はビックリしました。大河ドラマでは『秀吉』(1996年・NHK)で一度脚光が当たっただけでしたし、こんなに早く(来場者が)1000人を超えるのは予想外です」と、担当者は語る。「平日にこんなにいらっしゃっていただけるなんて・・・」と驚きを見せた。
大河ドラマ『豊臣兄弟!』で実際に使用された小道具(写真提供:豊臣兄弟! 大和郡山 大河ドラマ館 主催:秀長さんプロジェクト推進協議会)
館内では、ドラマの撮影で実際に使われた、小道具や衣裳などを展示。秀長の衣裳の襟元をよく見ると、撮影用のファンデーションと思われるベージュ色に染まっている部分もあり、主演の仲野太賀が、一生懸命汗を流して撮影を行ったことがうかがわれる。
大河ドラマ『豊臣兄弟!』で豊臣秀長(仲野太賀)が実際に着用した衣装(写真提供:豊臣兄弟! 大和郡山 大河ドラマ館 主催:秀長さんプロジェクト推進協議会)
各所で、オリジナルの陣羽織を着たスタッフたちが案内をしている。記念撮影パネルの前では、同じ陣羽織を着用して撮影することも可能だ。
また、ドラマ撮影の舞台裏とともに、市内の秀長関連の名所を紹介する、4Kシアターでのオリジナル映像の上映も。この後の聖地巡礼の参考になるので、ぜひ腰を落ち着けて見ておきたい。
「豊臣兄弟! 大和郡山 大河ドラマ館」の様子。奥には「4Kシアター」がある(写真提供:豊臣兄弟! 大和郡山 大河ドラマ館 主催:秀長さんプロジェクト推進協議会)
約30分ほどかけて「大河ドラマ館」を見学した後は、エントランスホールに特設された「やまと郡山・秀長物産館−大和大納言−」に立ち寄ろう。秀吉や秀長関連のグッズに混じって、大和郡山の特産品の販売もある。
そのなかの一つ、老舗和菓子屋「本家菊屋」の「御城之口餅(おしろのくちもち)」は、訪れた12時頃には早くも完売していた人気商品だった。
■ 豊臣秀長の時代から400年続く「本家菊屋」
老舗和菓子屋「本家菊屋 本店」(奈良県大和郡山市)。豊臣秀長がいた1585年に創業以来、400年以上続く。店頭にはイートインスペースも(3月5日撮影/Lmaga.jp)
「DMG MORI やまと郡山城ホール」から徒歩3分の「本家菊屋」本店では、「御城之口餅」をイートイン(無料のほうじ茶付き!)で食べることもできる。
この御城之口餅も、実は秀長とゆかりの深い和菓子。秀長が秀吉をもてなす茶会をする時、初代店主に「なにか新しい菓子を作って」とリクエストして誕生し、現代ではポピュラーな和菓子「鶯餅」の原型ともいわれている。
「本家菊屋 本店」のイートインで食べられる「御城之口餅」(ほうじ茶付き・500円)(3月5日撮影/Lmaga.jp)
一口大の粒あんを餅でくるみ、さらにきな粉をまぶしたもので、言わば、あん餅ときな粉餅のいいところ取り。注文を受けてから成型するお餅は、スッと口の中で溶けていくような優しい口当たりで、豊臣兄弟に絶賛されたのも納得だ。
■ 最後の6年間を過ごした「郡山城跡」
「郡山城跡」(奈良県大和郡山市)。右奥の「東多聞櫓」では、展覧会『秀長と郡山のあゆみ』を開催中(3月5日撮影/Lmaga.jp)
つづいて「大河ドラマ館」の眼の前にある、「郡山城跡」へ行ってみよう。秀長が兄とともに天下統一を推し進める1585年から、逝去する1591年までの6年間を過ごした城だ。
少し高台にあるのでずっと坂道を登ることになるが、それでも「大河ドラマ館」からは、ゆっくり歩いても5分ほどで到着できる。
「東多聞櫓」では、秀長や大和郡山にまつわる貴重な出土品を集めた展覧会『秀長と郡山のあゆみ』を、2027年1月31日まで開催しているので、時間があればぜひ立ち寄りたい。
「郡山城跡」(奈良県大和郡山市)の「天守台」。急峻な石垣が、攻め入る者を阻んでいた(3月5日撮影/Lmaga.jp)
天守台は、大阪城などと比べたらさほど大きくはなく、割とこぢんまりとした天守だったことがうかがえる。しかし天守台からは、今でも東大寺や興福寺などを望むことができ、当時奈良で大きな権力を振るっていた寺社勢力に睨みを効かせるには、絶好の場所だったことが実感できた。
「郡山城跡」(奈良県大和郡山市)の「天守台」からの景色。正面には、現在でも若草山、東大寺を眺めることができる(3月5日撮影/Lmaga.jp)
秀長は彼らを押さえつけてはいたが、秀長が亡くなったときは、寺社関係者たちも大いに嘆いたという記録が残っているので、ここでも最高の調整役となっていたのだろう。
また、「大河ドラマ館」でもしばしば見られた自慢の石垣も、「こんな城攻めるの嫌だ」と思いたくなるほど立派なもの。
大阪城では、海が近く、各地から切り出された巨石を容易に運び込めた一方で、大和郡山ではなかなか石を調達できなかったそうだ。そのため、秀長が城を改修する時には、石の地蔵や石塔、墓石までも徴収されて「転用石」として活用された。現在も地蔵の顔や梵字などが確認できる個所があるので、宝探し気分で目を凝らしてほしい。
■ 約400年…地元住民に守られる「大納言塚」
「大納言塚」(奈良県大和郡山市)には、木漏れ日が差し込み、清々しい空気が流れている(3月5日撮影/Lmaga.jp)
郡山城跡で城主気分をしばし味わったところで、次は聖地巡礼には欠かせない、墓所にお参りに行こう。郡山城跡からは徒歩10分ぐらい。上り下りの多い住宅街がつづくので「地図合ってる?」と少し不安になったところで、ふいに白壁と大木に囲まれた墓所「大納言塚」が現れる。
「大納言塚」(奈良県大和郡山市)の周りは、白壁が取り囲む(3月5日撮影/Lmaga.jp)
専有面積が広くて、壮麗な造りの武将の墓も多いなか、秀長の墓所は10m四方ぐらいで、造りも本当に必要最小限。入口の門は「さあ、どうぞどうぞ!」と言わんばかりに、大きく開かれている。
しかもお参りのあと、墓前にある石の箱に願い事をしながら三回白砂を通すと、その願いを叶えてくれるというから、なんというサービスの良さ。すがすがしい空気に包まれた場所だった。
秀長の子孫は早くに途絶えてしまったため、大和郡山の庶民たちが代々墓を守ってきたという。時が徳川の世となり、豊臣の名を出すのがはばかられる時代になっても、それは続いてきたそうだ。
地元の人から「名前に“公”を付けなさい!」なんて言われる武将が多いなか、秀長に対してはみんなが「秀長さん」呼びだった。「街を作った偉い人」というよりも、「街作りに協力してくれた同志」という意識が、今もなお強いのかもしれない。
■ 所要時間・約3時間で4カ所、ほかにも…
「紺屋町」エリアは、中心に水路が流れ、通りの両端に町家が広がる(3月5日撮影/Lmaga.jp)
4カ所のコースを回るのに、徒歩でだいたい3時間ぐらい。
さらに余裕があるのなら、道の真ん中に細い川が流れる「紺屋町」エリアにも立ち寄ってみたい。通りの両端に、秀長が独占営業権を出した「箱本館 紺屋」をはじめ、古い町家が残っている。
「箱本館 紺屋」の外観。藍染め体験をすることができる(3月5日撮影/Lmaga.jp)
そのほか、秀長の有名な肖像画がある菩提寺「春岳院」。秀長の命で作られた、歌舞伎三大名作『義経千本桜』に登場する狐を祀る「源九郎稲荷神社」なども周辺にある。
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「郡山城跡」で桜の季節の「追手向櫓」(写真提供:大和郡山市観光協会)
豊臣秀長がこの地を治めたのは最晩年なので、『豊臣兄弟!』に登場するのはまだまだ先。その時が来たら、今以上のフィーバー状態となることが予想されるので、郡山城跡が一番美しい季節の間にじっくり「大河ドラマ館」と、秀長が作った街の魅力を味わいに行っておこう。
取材・文/吉永美和子 写真(一部提供)/Lmaga.jp編集部
