毎週水曜に世界のツーリングカーやストックカーを中心に、ときにはラリーも含めたハコ車の話題をお届けする『WEEKLY ROUND UP』。今週は元F1ウイナーで日本のスーパーGTでは最高峰GT500クラスの2016年王者でもあり、昨シーズン限りでシリーズ通算“4冠”のJRC全日本ラリー選手権を卒業したヘイキ・コバライネンが、ダンロップとともに2026年のイタリア・ラリー選手権に挑戦する話題や、英国最高峰のBTCCイギリス・ツーリングカー選手権では、そのコバライネンの元僚友でF1“7冠”王者ルイス・ハミルトンの実弟、ニコラス・ハミルトンがチャンピオンチーム加入をアナウンスするなど、話題満載の開幕直前情報をお届けする。
【写真】カラーリングが発表されたBTCCの新型マシン『メルセデスAMG A35サルーン』
前述のとおりF1引退後は活動の場を日本のモータースポーツ・シーンに移し、スーパーGTと並行してJRCフル参戦が実現した2021年にはGT86 CS-R3をドライブ。初年度でJN-2クラスチャンピオンを獲得したコバライネンは、コドライバーを務めた北川紗衣とのコンビによるRally Team AICELLOでの7シーズンで通算4度(うち3度がJN-1)のタイトルを獲得した。
そんなコバライネンは、2026年より「海外でラリー参戦を継続していく」とのプランを明らかにしており、引き続きアイセログループも「コバライネンをサポートしていく」としていたが、この4月3日付けでダンロップ、住友ゴム工業よりイタリア・ラリー選手権(CIAR/Campionato Italiano Assoluto Rally)への参戦がアナウンスされた。
「ヨーロッパでふたたびダンロップと協力できることを、とてもうれしく思っている」と全日本でも履きこなしたダンロップとの新たなステージへ、意気込みを語ったコバライネン。
「これまでのキャリアの中で多くのタイヤ開発に携わってきたが、イタリア・ラリー選手権はタイヤをテストするには非常に競争力の高い環境だ。僕らは勝てるタイヤを生み出し、育てていきたいと考えているし、全員の努力と献身があれば必ず実現できると信じている」
「シーズンはすでに始まっており、現状のベースラインを把握し、次に取り組むべき明確な目標も見えてきた。今回のコラボレーションを可能にしてくれたダンロップの皆さん、そして日本のファンの変わらぬサポートに心から感謝している」
そのCIARイタリア・ラリー選手権は欧州域内でも屈指のレベルを誇るシリーズとして知られ、フランスなどと同様に全7戦がターマック(舗装路)で争われる。その各イベントともヨーロッパらしい高速かつテクニカルなステージ構成が特徴で、精密なライン取りや高度なブレーキング技術などドライバーには極めて高い走行性能と判断力が求められる。
カレンダーには現代の『タルガ・フローリオ』をはじめ、かつてWRC世界ラリー選手権も構成した『サンレモ・ラリー』など数々の名物イベントが含まれ、現在はFIA ERCヨーロッパ・ラリー選手権にも組み込まれる『ラリー・デ・ローマ・キャピターレ』など難関ステージ群が待ち受ける。
その構成レベルにより参戦するドライバーもWRC経験者やERCレギュラーが多く、この3月28~29日に迎えた開幕戦『ラリー・イル・チョッコ・ヴァッレ・デル・セルキオ』では、優勝を飾ったアンドレア・クルニョーラ(ランチア・イプシロン・ラリー2)を筆頭に、ロベルト・ダプラ(シュコダ・ファビアRSラリー2)やシモーネ・カンペデッリ(トヨタGRヤリス・ラリー2)など実力派が数多くエントリー。そのほぼ全車がピレリタイヤを装着するなか、ダンロップを履くコバライネンのシトロエンC3ラリー2は総合12位でイタリア初戦を終えた。
「ラリーはシェイクダウンからすべて順調で、タイヤのグリップも良好だった」とチームの公式YouTubeチャンネルで語ったコバライネン。「ステージでいくつか遅延があり初日はとても長かったけど、まだやるべきことはたくさんある。トップドライバーたちはとても速いが、僕らも目標に向かって順調に進んでいる。長いループステージで集中力を維持する必要があるが、クルマはかなり良い状態でタイヤの感触も良い。とにかくプッシュし続け、学び、前進し続けたいね」
■F1“7冠”王者の弟がチャンピオンチームに加入
BTCCの現マニュファクチャラーズ/コンストラクターズチャンピオンとして君臨するエクセラー8モータースポーツは、トム・イングラムとトム・チルトンに並ぶ3台目のドライバーとして、ニコラス・ハミルトンとの契約を発表。新たにチーム・ヴァーチュの28号車ヒョンデi30ファストバックNパフォーマンスのステアリングを託すこととなった。
「今季、このチーム・ヴァーチュとエクセラー8という強力なチームに加わることができ本当に光栄だ。これまでキャリアを通して資金や予算の制約に苦労し、競争力の低いマシンでレースに臨まざるを得なかったからね」と現在33歳のハミルトン。
F1チャンピオンの弟として、脳性麻痺を抱えながらBTCCで通算160戦に出場してきたハミルトンは、この8シーズン目でついにチャンピオンチームへ合流することになり、2023年ドニントンパークでの自身最高位である6位を更新することを目標としている。
「2026年の支援企業、そして長年のパートナーであるドレイパー・ツールズのおかげで、より競争力のあるマシンに乗ることができ、僕にとって本当に特別な、そしてワクワクする瞬間だ」と1年半のBTCC休養も経験したハミルトン。
「この冬は障害を克服するため、これまで以上に筋力と体力を向上させるべく努力してきた。できる限りの力を出し切って、最高のパフォーマンスを発揮できるよう全力を尽くしたい。この素晴らしい機会を与えてくれたジャスティナ、そしてエクセラー8の皆に心から感謝している」
そう名前の挙がったエクセラー8チームオーナーのジャスティナ・ウイリアムズも、「ニコラス(・ハミルトン)が障がいを抱えながらも、レーストラックで戦うという夢を実現するために、いかに困難に立ち向かってきたかは広く知られています」とチーム加入に歓迎の意を示した。
「決して夢を諦めない彼の姿勢は、多くの人々にインスピレーションを与えています。私たちは、ニコラスが今シーズン、その実力を存分に発揮できるよう必要なツールを提供できると確信しています。そして彼が目標とする一年、チームもBTCCの表彰台に立つという目標達成に向け、ともに努力していくことを楽しみにしています。その実現に向け、彼と全力で取り組んでいきます!」
■新型メルセデスAMGマシンがアンベイル
そして今季2026年よりBTCCに新規参入を果たすプラト・レーシングは、公式テストの2日間を経て新型『メルセデスAMG A35サルーン』のデビューシーズンで採用するカラーリングを発表。ステアリングを握るダニエル・ロウボトムとアダム・モーガンがアンベイルを担当した。
正式名“カタクリーン・プラト・レーシング”のエントリー名で参戦するこの新チームは、改めてパープル、ホワイト、グレーのスキームをまとった名門RML(レイ・マロック・リミテッド)製の前輪駆動NGTC規定ツーリングカーの本戦仕様を公開した。
「ダン(・ロウボトム)とアダム(・モーガン)が今シーズン使用する最終カラーリングを発表できることを、大変誇りに思う」と挨拶したチームオーナーのジェイソン・プラト。「ここ数カ月で成し遂げたことは言葉では言い表せない。完成したマシンはまさにセンセーショナルだ。数多くのブランドがスポンサーとして参加してくれたことは、我々が本気で取り組んでいるという証でもある。彼らは世界的に認知された最高レベルの事業を展開しており、我々もそれを誇りに思っている。シーズン開幕が待ち遠しくてたまらないね!」
同じく先のクロフト公式テストでは、まだ正式契約発表前の状況で2台のBMWを走らせていた古豪ウエスト・サリー・レーシング(WSR)は、デビューシーズンで初優勝、3回の表彰台、3回のファステストラップを記録した27歳のチャールズ・レインフォードと、イギリスとフィリピンの二重国籍を持つダリル・デレオンの残留をアナウンス。ジャック・シアーズ・トロフィー獲得者のデレオンは、昨季最終2戦でポールポジションを獲得し、先月のクロフトではトップタイムを記録するなど、2026年もその勢いを維持している。
「2025年にBMWでレースに参戦できたことは、あらゆる面で非常に貴重で実り多い経験になった。ジャック・シアーズ・トロフィーのタイトル獲得は、僕たち全員が誇りに思える成果で、新シーズンが間近に迫っている今、その成功を再現することに全力を注いでいきたい」とデレオン。
同じく「2026年もWSRで2シーズン目を迎えられることを発表できて、本当にうれしい」と語ったレインフォードも「ルーキーシーズンで多くのことを学び、ドライバーとして大きく成長することができた」と手応えを口にする。
「ブランズハッチでの優勝とノックヒルでのポールポジション獲得は、2025年のハイライトだった。WSRのサポートも素晴らしかったし、苦戦した時期も僕たちをより強く成長させてくれたと思う。これまでのテストでは非常に良い結果を出せているし、新シーズンに向けて高い目標を掲げていきたい」
[オートスポーツweb 2026年04月08日]
