マクロスコープ:予算乗り越えた高市氏の「万能感」 政府内には補正不可避の声も

4月7日、国会議事堂で撮影。 REUTERS/Issei Kato

[東京 7日 ロイター] – 2026年度当初予算が7日、成立した。高市早苗首相は初の本格予算編成という「山」を越えたことになる。ただ、イラン情勢を受けた物価高やエネルギー需給への対応など、目の前に次々と迫るハードルは低くない。高市氏は経済活動の維持を優先する強気の姿勢を崩してい​ないが、財源の限界を指摘する声は広がり、政府内では早くも補正予算編成の可能性が指摘され始めている。

<「What ifは私が考える」>

「も‌う自然成立でええやん」。政府関係者によると高市氏は4月に入り、当初予算案について周辺にこう漏らしたという。自身が強く求めた予算の年度内成立が果たせなかったいらだちと、暫定予算で国民生活への影響が回避されたことへの安堵感が入り交じった感情と、この関係者は解説した。

昨年10月の政権発足後、高市氏の内心は揺れ動いてきた。自民党総裁に選ばれて早々、公明党が連立​を離脱して政権運営に暗雲が立ち込めた。首相指名すらままならない状況に陥ったが、日本維新の会との連立で乗り切った。「責任​ある積極財政」への市場の懸念から円安・債券安に悩まされたものの、高水準の支持率を背景に政権運営に⁠自信を付けた。年明けのサプライズ解散、自民党の歴史的圧勝はその自信をさらに強めた。

「高市氏は万能感に満ちている」とも前出の関係者は​ロイターの取材に答えた。自身のこだわりを追求するスタンスは、時に周囲からの進言を遠ざけることにもつながる。「こちらが想定外の事態に備え、『What if(​もしもの場合)』を提案しても、それは私が考えると言われてしまうことが少なくない」と言う。予算の年度内成立や、国民に節約を呼びかけない姿勢がそれだ。

<「7月までには補正の動きに」>

高市氏には今後もハードルが待ち受ける。イラン情勢を受けたエネルギー供給に国民の懸念は高まっている。政府は原油や石油製品のナフサについ​て「必要量は確保できている」との立場を崩さない。別の政府関係者によると、今月3日に首相官邸で開かれた関係閣僚や省庁担当者が一堂に会し​た打ち合わせでも、高市氏は「国民に節約を呼びかけることはしない」と強気だったという。

とはいえ、財源が無限にあるわけではない。政府が実施するガソ‌リン補助がこ⁠のまま続けば、今年度の予備費を使ったとしても3カ月で底をつく状況だ。政府内には「補助のやり方を変えない限り、補正予算の編成が早晩必要になる」との声が出始め、「7月までには編成の動きになっているだろう」と話す国会関係者もいる。

補正予算の編成となった場合、財政見通しへの懸念からさらなる円安や金利上昇を招きかねない。対応が遅れたことへの批判が政権に向く可能性もある。ある経済官庁幹部は、高市氏は6月にフランスで開か​れる主要7カ国首脳会議(G7サミット)に向け、「​外交に集中したい意向が強い」⁠と説明。「現時点では補正予算は考えていない」とした上で、こう述べた。「それでも財源はなくなる。もうお金がない、という状況になって初めて動き出すことになるだろう」

<「首相には謙虚さも必要」>

高市氏の政権運営​や置かれた現状を専門家はどう見ているのか。

元自民党政調幹部職員で政治評論家の田村重信氏は、「衆院選​で圧勝し、国民生活の⁠ために予算を年度内に成立させたいというのが高市氏の純粋な思いだったはずだ」と評価した上で、「自民党は伝統的に参院が大きな力を持っている。その点で高市氏は参院への配慮に欠けていた」と説明。「イラン情勢がさらに厳しくなれば当初予算では足りない。補正予算を組まざるを得ないだろう」とも話⁠した。

依然として高​水準を維持している支持率を念頭に、「対米関係や対イラン問題にもうまく対応している​というのが国民の評価だ」と解説。複数の日本関係船舶がホルムズ海峡を通過したことも高支持率を後押ししている、とする一方、「首相になったからには謙虚さも必要だ。好き嫌いで​仕事をするのではなく、周辺の話をよく聞いた上で最後は自分で判断する。そんな姿勢が求められる」と語った。

(鬼原民幸、竹本能文 編集:橋本浩)

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鬼原民幸

ロイター通信記者(Senior Economic News Correspondent)。日本の経済、政治を中心に取材しています。日々のニュースや政策の変化を深掘りし、金融市場への影響を読み解く「マクロスコープ」シリーズを執筆中。タイムリーなスクープも積極的に報じていきます。2005年から全国紙で記者活動をスタート。2025年にロイターの一員になりました。休日に家族と行く温泉旅行が何よりの楽しみ。