SNS社会でのお金との付き合い方 「疑う力」を養い情報の見極めを
大和証券グループは日本経済新聞社が提供する「日経電子版 for Education」の取り組みの一環で、2025年1月下旬に奈良市の私立帝塚山中学校で出張授業を行いました。中学3年生に向けた授業の講師は大和総研の金融調査部瀬戸佑基氏が務めました。連想ゲームで「情報」がもたらす影響を体感し、情報収集と判断の重要性を伝える内容。SNS(交流サイト)社会において正しくお金と付き合うために不可欠な「疑う力」を学びました。
なぜ「疑う力」が重要?「連想ゲーム」で学ぶ
「グッズを海外工場で作るとしたら輸送で『海運業』や『空運業』。それに、『倉庫業』ももうかるよね!」――。
帝塚山中学での50分間の特別授業の終盤、グループに分かれた生徒たちは発表の場を迎えていました。講師の瀬戸氏から出されたお題は「とあるアニメや映画がヒットした場合、どのような業種の株価が影響を受けるか」というもの。投資家の想像力は1つの「情報」を手に入れただけで様々な方向に広がり得ることを体感し、逆に「疑う力」が重要となる、と理解してもらうことが目的です。配られた「業種シート」を手に、アニメのヒットがどのような商品・サービスにつながっていくのかを議論しました。
アニメに関連する業種は何か考える生徒ら
1つの物事がどんな株式にどのような影響を与えるのかを連想し、「情報」に触れた際の投資家の心理を想像します。想像力豊かな生徒たちの意見に、教室は何度も拍手がわきました。
出張授業の冒頭、瀬戸氏は「お金をためる」と「お金を増やす」の違いを生徒たちに説きました。
「お金をためる」はあくまでも一つの選択肢
「お金との付き合い方」と言われると生徒たちはどうお金を節約してどうお金を貯めるか、を想像します。しかし、「お金をためる」ことはあくまでも一つの選択肢です。大手銀行やネット銀行などの預金金利は年1%を大きく下回ります。日本では今、モノやサービスの値段が年2~3%上昇する「インフレ」の状態が続いています。インフレ率を下回る利子分しか付かない預金では実質的にはお金の価値は減ってしまいます。
瀬戸氏は生徒たちに、実際の数字を示します。「預金金利が0.1%の場合、1万円を銀行に預けると1年後は1万10円にしかなりません。一方で物の値段が2%上がると、1万円の価値は1年後には1万200円。今日1万円で買えていたものは『1年後の1万円』では買えなくなる」と説明すると、生徒たちは預金の価値は下がることを納得できた様子です(金利・物価は授業当時のもの)。
具体的な数値を用いた解説を、熱心に聞く生徒ら
では「お金を増やす」にはどのような方法があるでしょうか。現金や預金では目減りしてしまうインフレ下では投資も一つの選択肢となります。代表的な投資商品の「株式」「債券」「投資信託」の中から、この日は株式に注目して授業を展開することにしました。株式市場では、銀行預金などで「お金をためる」際に比べて、より「情報」との付き合い方が重要になります。
そこで「連想ゲーム」です。瀬戸氏は「株式市場では、まったく関係ないと思うようなニュースが、思わぬ会社の株価に影響を与えてしまうことがある」と話します。株価を動かす「情報」は、業績や景気といった数値化できる「定量的な情報」ばかりではありません。噂やイメージといった数値化できない「定性的な情報」が一つの企業の株価を大きく左右するケースも珍しくありません。今回のワークショップは、若年層の投資への関心が高まる中で、この「定性的な情報」の見極め方を習得してもらうことが狙いでした。
金融経済教育も人間教育の柱の1つ
発表がすべて終わると瀬戸氏は「みんなの発表を聞いて、納得した人も、本当かな?と思う人もいたと思う」と生徒に問いかけました。生徒は想像力豊かな回答をしてくれましたが、今回のワークショップでは一人一人が「連想」した株価への影響が正解であることを目指しているわけではありません。一つの情報から様々な考えが出てくることを体感し、情報の正誤の判断をするための『疑う力』を培うことが目的です。SNSなどでは有名人の写真を盗用した投資詐欺なども横行しています。瀬戸氏は「この授業で言いたいことは『投資をしてください』ということではない。正しい知識をもって、投資する・しないを判断してほしい、情報を見極める力を付けよう」と授業を結びました。
正しい情報を見極める力が必要だと伝える瀬戸氏
授業を受けた帝塚山中学3年生の𫝆中悠貴さんは「授業では習っていないテーマだったので、とても貴重な体験になった。投資に興味があるが、知識もちゃんとつけたいと思った」と話してくれました。また、同じ学年の加藤理奈さんは「情報の重要性を学ぶことができた。何かが売れると、一見関係がないように見える企業の株価に影響があるのも興味深かった」と話しました。
授業を終えた瀬戸氏は「中学生向けにはレベルが高い内容だったが、真剣に耳を傾け、ワークでは生徒から様々な意見を聞くことができた。生徒の株式市場への想像力の豊かさに感心した。情報を『疑う力』の重要性も理解してもらえたら嬉しい」と話しました。
帝塚山中学の社会科教諭の田中慎子さんは「今回の授業を通じて、生徒たちは正しい知識を身に着けること、疑う力の大切さをよく理解したと思う。これらの力は、金融経済に限らずあらゆるジャンルにも必要な『生きる力』だと思う。金融経済教育も人間教育の1つ。経済のメカニズムの理解に終わらない金融経済教育を、この機会をきっかけに継続していきたい。」と話しました。
授業後のアンケートでは「授業の内容を今後に活用できそう」と答えた生徒が97%ととても高い満足度だったことがうかがえました。日経電子版 for Educationでは、今後も日本を拓いていく若い世代に向けて、様々な学びの場を提供していく予定です。
