スペイン代表が13大会連続、通算17回目となるワールドカップ(W杯)での王座奪還に向けた“キャスティング”の最終段階に入った。
■セルビア、エジプトと親善試合
スペインは当初、先月下旬に欧州選手権と南米選手権の王者同士が対戦するカタール開催の「フィナリッシマ」でアルゼンチンと対戦予定だったが、中東情勢の悪化により中止となった。これにより、昨年11月に31試合でイタリアと並んだ代表チームの公式戦連続無敗の世界記録更新のチャンスは、W杯初戦のカーボベルデ戦まで持ち越しとなった。
カタールでの試合がなくなったことで急遽、国内で実施されることになったセルビアとエジプトとの親善試合に向けてデラフエンテ監督は、ジョアン・ガルシア(バルセロナ)、モスケラ(アーセナル)、ビクトル・ムニョス(オサスナ)、バレネチェア(Rソシエダード)の4人を初招集。さらに、カタールW杯以来の代表復帰となるカルロス・ソレール(Rソシエダード)を加えた総勢27人で臨んだ。
セルビア戦は14カ月ぶりにスタメン入りしたロドリ(マンチェスターC)を含む、できる限りのレギュラー組で3-0の快勝を収めた。一方、ヤマル(バルセロナ)以外の先発10人を入れ替えたエジプト戦は、チャンスの数で圧倒したもののスコアレスドローで終了した。
■招集27選手のテスト無事完了
デラフエンテ監督(2021年撮影)
デラフエンテ監督は今回の代表ウィークの総括として、「自分たちの掲げた目標を達成することができた。ほぼ全員が出場し、けが人も出なかった」と招集した選手たちのテストがうまくいったことを強調した。
監督就任後の3年間の通算成績は、39試合29勝8分け2敗(※PK戦は引き分けにカウント)、120得点47失点。敗北は欧州選手権予選のスコットランド戦と親善試合のコロンビア戦のみで、1試合平均3・1ゴールという高い得点力を示している。
その間に欧州選手権を制し、欧州ネーションズリーグでは優勝と準優勝を経験。ヨーロッパで最も成功を収めている代表チームとなり、昨年10月には11年ぶりにFIFAランキング首位に返り咲いた(※直近のエジプト戦に引き分けたことでフランスに首位の座を譲り、2位陥落)。
デラフエンテ監督は4-3-3と4-2-3-1を併用しつつ、随時チームに新しい風を吹き込んでいるが、W杯メンバーは2年前の欧州選手権に近くなる可能性が高く、核となるポジションのレギュラーは固まっていると思われる。
■守護神ウナイ・シモンは不動
スペイン代表GKウナイ・シモン(2022年11月撮影)
GKの序列トップはウナイ・シモン(ビルバオ)。2番手のラヤ(アーセナル)は欧州のベストチームのひとつで確固たる地位を築いているが、前監督時代から安定したパフォーマンスで2タイトル制覇に大きく貢献したウナイ・シモンへの信頼は揺るぎない。一方、ジョアン・ガルシア初招集によりレミーロ(Rソシエダード)との第3GK争いが激化している。
右サイドバックはジョレンテ(Aマドリード)とペドロ・ポロ(トットナム)の一騎打ち。長期離脱から復帰したカルバハル(Rマドリード)にも可能性は残されているが状況は非常に厳しい。
センターバックのレギュラーはセルビア戦でのコンビ、ラポルテ(ビルバオ)とクバルシ(バルセロナ)が当確に近い。この争いにスランプから抜け出したハイセン(Rマドリード)が加わり、残る1枠をモスケラ(アーセナル)、エリック・ガルシア(バルセロナ)、プビル(Aマドリード)、ル・ノルマン(Aマドリード)、ビビアン(ビルバオ)、ハコボ・ラモン(コモ)などで争うことになりそうだ。
左サイドバックはこの2年間、ククレジャ(チェルシー)とグリマルド(レーバークーゼン)しか選ばれておらず、変更の少ないポジションのひとつだ。この中でククレジャが一歩リードしている。
■ロドリとスビメンディの争い
スペインのロドリ(2022年撮影)
マルティン・スビメンディ(2021年撮影)
守備的MFはどのシステムで臨むにしても、ロドリ(マンチェスターC)とスビメンディ(アーセナル)が争うことになるだろう。バックアップ候補にフォルナルス(ベティス)、アレイシュ・ガルシア(レーバークーゼン)、ルイス・ミジャ(ヘタフェ)が挙がっている。
華麗なパスワークでゲームを支配するスペイン代表の心臓部となるインサイドハーフの中心はペドリ(バルセロナ)。ミケル・メリーノ(アーセナル)、ファビアン・ルイス(パリSG)のレギュラー候補やバリオス(Aマドリード)、イスコ(ベティス)にけがの懸念があり、長期離脱していたガビ(バルセロナ)が不透明な状況の中、ダニ・オルモ(バルセロナ)や急成長を遂げているフェルミン・ロペス(バルセロナ)が、攻撃のユーティリティープレイヤーとして好プレーを見せていることは好材料となっている。
ウイングはデラフエンテ監督が頻繁にテストを繰り返してきたポジションだ。スペインが24年の欧州選手権を制した際、ヤマル(バルセロナ)とニコ・ウィリアムズ(ビルバオ)が両サイドで決定的な役割を果たしたことは記憶に新しい。今季は2人とも恥骨炎に悩まされ、ニコ・ウィリアムズはまだその影響を受けているが、万全の状態で臨むための時間はまだ残されている。
2人を補完する存在として、さまざまな選手が候補に挙がる。ニコ・ウィリアムズの欠場が続く中、代役を務めたバエナ(Aマドリード)はメンバー入りが濃厚だ。両サイドでプレーできるビクトル・ムニョス(オサスナ)はスピードや突破力を武器に、代表デビューとなったセルビア戦でいきなりゴールを決めてサプライズをもたらし、W杯参加に向けて名乗りを上げた。
その他、ジェレミ・ピノ(クリスタルパレス)、ヘスス・ロドリゲス(コモ)、ブライアン・サラゴサ(ローマ)、デ・フルートス(ラヨ・バリェカノ)、バレネチェア(Rソシエダード)などにもチャンスがある。
■エースの座はオヤルサバル確定
セルビア戦で2ゴール決めたオヤルサバル(ロイター)
長年エースとしての重責を担ったモラタ(コモ)の後任はオヤルサバル(Rソシエダード)で間違いない。センターフォワードとしてここ10試合で11得点6アシストという驚異的な活躍で、スペインが長年抱えていた得点力不足を解消している。バックアップは機動力のあるフェラン・トレース(バルセロナ)、サム・オモロディオン(ポルト)がW杯絶望の重傷を負ったため、同じく空中戦に強い33歳のベテランFWボルハ・イグレシアス(セルタ)が務めることになりそうだ。
W杯初戦まで残すところ2カ月半。デラフエンテ監督はこの後、仮メンバーとして5月に55人を選出し、最終的に26人に絞る予定だ。10年の南アフリカ大会以来2度目の優勝を目指すスペインの選手層は厚いが、シーズンが佳境を迎える今、けが人が増える可能性もあり予断を許さない。
“キャスティング”の最終段階に入り、メンバーはほぼ決まっていると思われるが、デラフエンテ監督は所属クラブで活躍した選手を即座に試す傾向にあるため、まだ何らかのサプライズが待っているかもしれない。
【高橋智行】(ニッカンスポーツコム/サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」)