
高齢化が進む中、認知症等による行方不明者の増加は、家族や自治体にとって深刻な社会課題となっています。
ソフトバンクは、香川県高松市において、BLEタグとスマートフォンを活用した地域全体で支え合う共助型の「見守りサービス」の先行展開を2026年2月に開始しました。行方不明者の早期発見を支援する仕組みとはどのようなものなのでしょうか。
話を聞いた人

小笠原 一真(おがさわら・かずま)さん
香川県 政策部 デジタル戦略総室 デジタル戦略課
官民連携・イノベーション推進グループ 主任

北 英之(きた・ひでゆき)さん
高松市 健康福祉局 長寿福祉部 福祉事務所 長寿福祉課 課長補佐

大野 奈那子(おおの・ななこ)
ソフトバンク株式会社 次世代戦略本部 第二戦略企画統括部 第2部 企画1課
地域の担い手不足を「共助」と「デジタル」で補い、行方不明者を早期発見
認知症などによる行方不明が発生したとき、最も重要なのは「発見するまでの時間」です。高松市で先行展開されているのは、低消費電力で通信できる小型のBLEタグとスマートフォンを活用した「BLEタグを使った地域共助型見守りサービス~みんながみまもり隊~(以下、見守りサービス)」です。
認知症の方などが身に着けるBLEタグから発信される信号を、協力者のスマートフォンや、店舗、公共施設などに設置された固定検知器が受信。その検知情報がアプリに集約され、家族が捜索の手がかりとして確認することができます。
見守りサービスの仕組み
みまもり対象者(高齢者、子ども)がBLEタグを携帯
みまもり対象者が、駅や公共施設、協力施設などに設置した検知器の近くを通過すると、BLEタグからの信号を受信して位置履歴が更新される
スマートフォンにアプリをインストールしたみまもり協力者が日常生活の中でみまもり対象者とすれ違うと位置履歴が更新される
ご家族などみまもり依頼者はアプリから位置履歴を確認したり、捜索協力を依頼することが可能

BLEタグとは

BLEタグは、Bluetooth Low Energy(省電力Bluetooth) を利用した小型のタグ(端末)です。
スマートフォンや専用機器がタグの信号を受信した際、見守りに必要な情報(検知・通知など)を省電力で扱えるのが特長です。日常生活の負担を増やしにくい形で、見守りの仕組みに活用できます。
「見守りサービス」は、香川県が運営する官民共創コミュニティ『かがわDX Lab』の活動から誕生しました。デジタル技術で地域課題を解決するこの取り組みにおいて、かねてより『かがわDX Lab』に民間企業として参画しているソフトバンクがサービスの実施主体となり、『見守りサービス』のシステムの設計・開発から実際の運用までを担っています。一方、行政側も協力者の確保や固定検知器の設置などを全面的にバックアップ。官民が密接に連携することで、実効性の高い社会実装サービスの実現を強力にサポートしています。
認知症等高齢者の行方不明というテーマに取り組むことになった背景を教えてください。
「かがわDX Labの『要支援者等の共助モデル構築ワーキンググループ』の中で、ソフトバンクから、『朝起きたら認知症の家族がいなくなっていた』という報道事例を共有し、現行の支援の枠組みでは十分に対応しきれていない課題があることを問題提起しました。その後、ワーキンググループの参加団体との意見交換をする中で、週に1回以上、行方不明になる方もいるなど、家族や介護施設の現場に負担が集中している実態を踏まえて、新たな支援の形を検討する必要があると判断しました」
行方不明者の捜索支援の取り組みについて、市としてどのような課題がありましたか?
「市ではこれまでも、地域コミュニティや民生委員・児童委員等による見守り活動、GPS機器の初期費用の助成、行方不明時のメール配信などの取り組みを行ってきました。しかし、少子高齢化や地域のつながりの希薄化など様々な社会構造の変化によって、見守りの担い手が不足してきています。
これまで取り組んできた、GPSによる見守りは、対象者に機器を携帯してもらうのが難しいという声もありました。また、地域に捜索を呼びかけるメール配信は、主にテキストによる対象者の特徴しか手がかりがないため、捜索が難しく、協力を得にくいのでは、と感じていました」
今回の見守りサービスについて、どのような点を評価していますか?
「地域課題を『共助』で解決する先進的な取り組みであるという点です。これまでの共助は、特定の支援者に負担が偏りがちという課題がありました。しかし、見守りサービスは、アプリによる自動検知という仕組みにより、住民の方々が日常生活の中で無理なく、自然に見守り活動へ参加することを可能にしています。
最新技術の活用で、誰もが気軽に参加できる『持続可能な共助の仕組み』を実現したことは画期的です。デジタル技術によって共助をより身近で幅広いものへとアップデートし、香川県の新たな地域コミュニティを創出する大きな契機となることを期待しています」
「BLEタグは小型・軽量で携帯性が高く、充電管理の手間も少ない。利用料も比較的抑えられる見込みで、継続しやすい点が大きなメリットだと感じています。また、みまもり協力者側の目線でも、アプリを入れるだけで誰かの助けになれるという手軽さを評価しています」
丁寧な現場検証とニーズ調査を見守りの仕組みに反映

アプリを入れるだけなら気軽にみまもりに協力できますね。一方で、捜索対象者のプライバシーへの配慮はどうなっているのでしょうか?
「みまもり依頼者は捜索対象者のニックネームだけを登録して捜索依頼を出します。みまもり協力者には、“誰を” 検知したかではなく、検知の “回数” が表示され、みまもり依頼者以外の方は、捜索対象者が特定できないようになっていますまた、みまもり依頼者として登録する際には、マイナンバーカード認証(本人確認)が必要となるため、なりすましや不正利用(悪用)の防止にもつながる仕組みです」



県や市の施設などに設置されている検知器。8cm程度と小型
サービス開発前にニーズ調査をしたと聞いています。いつ頃からどのような準備を行い、誰を対象(家族や介護施設)にどのようなニーズを洗い出したのでしょうか?
「2023年頃から、要支援者等の共助モデル構築ワーキンググループを立ち上げ、ワーキンググループ参加団体とともに『共助を軸にした見守りのあり方』について検討を進めてきました。検討を進める中で、実際に支援する側・される側の課題やニーズを把握する必要があると考え、家族や介護施設を対象としたアンケート調査を実施するとともに、自治体へのインタビューも行いました。現場の声を丁寧に拾い上げることで、制度や机上の想定だけでは見えにくい課題を整理してきました」
GPSを活用した仕組みもありますが、今回、BLEタグとスマホアプリを選択した理由を教えてください。
「検討段階では、GPS端末を含め、複数の技術や機器について比較・検証を行いました。フィールド実証では、認知症のある方の協力を得て、GPS端末やBLEタグなど、形状や装着方法の異なる機器を実際に着脱していただき、継続して利用できるかを確認しました。

屋外での実証実験の様子

特に、BLEタグの装着方法については、介護施設の方から『手首やポケットだとご自身で外してしまう可能性がある』と助言をいただき、目につかず不快に感じにくい足首への装着が最も身に着けていただきやすいという検証結果を得ました。最終的に、電池寿命が長く、小型で装着時の違和感が少ないBLEタグが、日常的に使いやすいという評価に至り、スマートフォンのアプリと組み合わせる形を採用しました」

足首に巻きつけられるベルト付き
見守りサービスの検証にご協力いただいた事業者さまの声を紹介

ケアドゥ株式会社(香川県高松市)
「私たち医療・介護福祉従事者にとって、在宅や施設を問わず高齢者の安心・安全な暮らしは共通の理念です。しかし、高齢化や独居の増加に伴い、認知症などによる行方不明や外出時の見守りには課題があります。家族や職員だけでは限界がある中、地域も含めて支える仕組みが重要です。ITを活用した仕組みで、負担をかけず、プライバシーが守られる見守りシステムに期待と画期性を感じています」
今回の取り組みでは「共助」という言葉を強く打ち出していますね。その理由を教えてください。
「少子高齢化や人口減少が進む中、行政の支援やご自身とご家族の備えだけでは、解決が困難な課題が増加しています。こうした背景から、公助・自助に加え、地域の住民や企業、団体が協力して地域を支える『共助』の取り組みが今後の社会を維持するうえで極めて重要であると認識しています。
特に、認知症高齢者の行方不明といった事案は、一刻を争うケースが少なくありません。地域全体で見守ることでいち早く異変を察知し、早期発見につなげていく。このような共助型社会の実現こそが、安心・安全に暮らせる地域づくりに不可欠であると考え、今回の取り組みでは『共助』という言葉を掲げています」
BLEタグとスマホアプリの検証で得られた結果を踏まえ、先行展開までに改良した点があれば教えてください。
「協力者が不足している状況でも機能する共助の仕組みを重視した機能を盛り込みました。具体的には『みまもり対象者がいる可能性のあるエリアに協力者を呼び込む仕組み』、『協力者の分布をヒートマップで可視化する機能』です。この2つの技術は、特許を出願中です(特願2025-043183号)。

中でも、協力者が不足しているときにメッセージで呼びかける機能は、事前の検証で早期発見につながることが分かりました。また、アプリのUI/UXは改良を重ねて、太陽の下でも見やすい色使いを採用したり、参加してよかったと思える通知設計など、協力者の声を反映しています。先行展開時には、歩数計機能も搭載しました。健康を意識して歩くことが誰かの助けになる、日常的にアプリを開いてもらう工夫です」

他の自治体への展開の予定はありますか?
「他の自治体への展開も順次検討していきたいと考えています。行方不明の事案は、自治体の境界を越えて発生するため、地域ごとの実情に合わせながら、共助が無理なく機能する見守りの仕組みとして広げていくことを目指しています」
「みんながみまもり隊」への参加方法
みまもり協力者、みまもり依頼者になる場合
「みんながみまもり隊アプリ」のアプリケーションのインストールが必要です。

BLEタグの信号を活用し、人や大切な持ち物の見守りや早期発見を地域全体で支援するアプリです。アプリのダウンロードはこちらから(高松市付近でのみ利用可能です)。


みまもりの依頼をする場合
見守りが必要な方が携帯するBLEタグが必要です。以下のフォームからお申し込みください。
みまもり依頼者
事前登録フォーム
※自治体からのお知らせも合わせてご覧ください。
「かがわDX Lab」要支援者等の共助モデル構築ワーキンググループ発「BLEタグを使った地域共助型見守りサービス~みんながみまもり隊~」高松市で先行展開を行います!(2026年2月19日 香川県)
「BLEタグを使った地域共助型見守りサービス~みんながみまもり隊~」の先行展開について(2026年2月25日 高松市)
(掲載日:2026年4月1日)
文:ソフトバンクニュース編集部



