100年前も「現世の地獄。ああ、物価高…」愛媛県公文書センター完成 約3500点の貴重資料が閲覧可能

県勢展覧会資料より(愛媛県所蔵)

「人間は物価の上に色々割増をつけて、お互いに苦しんでいる。アホウ、アホウ」

物価高に苦しんでいる人たちを、「現世の地獄」と書かれた”がい骨”にとまった鳥が空から見てあざ笑う。これは、約100年前に愛媛県庁の職員が描いたイラストです。

1929年、現在も使われている愛媛県庁本館の落成を記念して行われた「県勢展覧会」。本館の落成式にあわせて、県庁の各課が趣向を凝らして県内の状況を紹介するイラストなどを作成し、県民に向けて展示しました。

この「県勢展覧会」の資料は、県が4月1日に開設する「県公文書センター」の準備作業の中で新たに見つかったものです。3月30日、オープンを前にセンターと資料が報道関係者に公開されました。そこには今の社会を考える上でも貴重な資料が保存されています。

(報道部 植田竜一)

「全国で46番目」にオープン

県公文書センター内観

行政機関の公文書は、単なる記録という意味合いを超えて、社会や行政の在り方を考える手がかりとなり、今を生きる私たちへヒントも提示してくれる貴重な資料群です。

愛媛県の公文書センターは、都道府県レベルの公文書を保管・閲覧する施設としてはなんと”全国46番目”。県はこれまでも公文書が持つ重要性を踏まえて適切に保存してきたといいます。しかし、他の事業との兼ね合いから予算化・事業化がずれ込み、このタイミングでの開設となったとしています。

県庁の地下書庫

県庁には未整理の資料も含めて約13万2000冊の公文書が保存・保管されています。

公文書センターの一般利用開始は5月1日からで、このうち、1912年度(大正元年度)〜1952年度(昭和27年度)までの公文書、約3500冊を閲覧することができるようになります。

インターネットを通して全国どこからでも資料検索・利用申請が可能。その後、担当者から「資料の準備ができた」との連絡を受けて、実際にセンターを訪問することで閲覧することができます。通常の図書館と異なり、予約なしでは閲覧できないということです。

「メートルを使って」「悪質な商品は避けて」県職員の苦悩

県勢展覧会の資料より(愛媛県所蔵)

「最後の勝利は良肥料にあり」「安物買いの銭失い」

悪質な肥料を購入して、結果的に作物に影響が出ることを注意喚起している展示です。

まるで現代のプレゼン資料のように、約100年前の県職員はあの手この手を使って分かりやすく県民に向けて生活上の啓発などを行っていることが分かります。

「メートル、リットル、グラム」を使うことを周知(県勢展覧会資料より)

「尺」、「寸」、「貫」といった江戸時代以前の長さや重さの単位を、「メートル」や「グラム」への変更を進めようとしていた時代でもあります。

「メートル法」を基本とする度量衡の導入を目指す政府。実際に県民に周知する役割は県が担っていて、さらに「県勢展覧会」でもメートル法の展示をしないといけないということは、まだまだ県民に広がっていなかったという状況を垣間見ることができます。

「昭和恐慌」と物価高

物価の上昇が続いている(県勢展覧会資料より)

これらの「県勢展覧会」資料が作成されたのは1929年度(昭和4年度)。

いわゆる「世界恐慌」の影響を受け、後に「昭和恐慌」と呼ばれることになる景気後退の”前夜”ともいえる経済状況でした。簿冊全体としては、県庁の”お仕事紹介”というよりも、より実践的な県民に向けた喚起や啓発、呼びかけが多く確認できます。

「物価指数」や「通貨指数」、「賃金指数」は跳ね上がり、県庁としても物価高対策に躍起となっていたことが分かります。現代のニュースでも何度も見たことがあるようなグラフを、すでに100年前の県職員が分かりやすく作成しているのです。

「地上の楽園」と書かれている(県勢展覧会資料より)

「人間が目覚めて買い物に注意するようになったので、誤魔化しがなくなって地上の楽園」

冒頭で紹介したイラストの上部には、「現世の地獄」と対比するかのように「地上の楽園」が描かれています。悪質な買い物への注意喚起と、消費者が節約と物価への高い意識を持つように呼び掛けています。

いつの時代も物価高に悩む県民と県職員。彼ら彼女らはどう乗り越えたのか、もしくは乗り越えることができなかったのか。1つの資料からも今を生きる私たちにいくつかの示唆を与えてくれます。

愛媛県私学文書課の担当者は、「県民に開かれた記憶と記録の拠点となることをめざす」として、児童・生徒の学習活動や専門的な研究、そして一般の利用まで積極的に活用してほしいとしています。