佐賀県唐津市の山間部に位置する七山地区で、ふるさとの医療を背負う「たった一人の男性医師」がいます。大切にしているのは一人ひとりの「いきかた」。地域に寄り添う、その姿を追いました。

■七山診療所 所長・阿部智介先生(46)
「晴れたね。いい天気だ。七山が大体63平方キロメートル。東京の山手線ぐるっと1周の内側の面積と同じ。」

のどかな風景が広がる、佐賀県唐津市の七山地区。現在の人口およそ1600人のうち、半数ほどは高齢者です。

そんな山あいのまちで広く知られている、ジャージー姿の先生。

七山でたった一人の医師、阿部智介さん(46)です。みんなから「阿部先生」と呼ばれています。

■阿部先生
「小児も来るし、外傷とかケガもですね。基本、何でも。」

阿部先生が営む七山唯一の診療所には一日40人ほどが訪れますが、患者はそれだけではありません。

この日、阿部先生は七山の山奥に向かっていました。

■阿部先生
「こんにちは。お邪魔します。」

入院先から七山の自宅に戻ってきた、92歳の女性です。

■阿部先生
「分かる?分かった、うなずいた。お帰り。お、返事した。お帰り。やっぱ、家がよかね。」

定期的に自宅を回る訪問診療の患者は全部で10人ほど。健康状態を診るだけでなく、一人ひとりに寄り添おうとする姿勢が地域で慕われる理由です。

七山出身の阿部先生。ふるさとの医療に向き合って15年余り、普及に力を入れていることがあります。

■阿部先生
「いきかたノートの『いきかた』に込めている思いは、生の『生き方』、そして社会における活動や活躍の『活き方』、そして最終的な『逝き方』。縁起でもないかもしれないですが、それを考えることで皆さん自身の人生をよりよく生きることになるし、家族にとっても苦しみを少しでも緩和することができます。」

阿部先生が監修し、唐津市などが2020年から発行している「いきかたノート」。最期まで自分らしく生きるため、どこで・誰と・どのように過ごしたいか記入して、大切な人と共有します。