Headshot of Joaquin Garciaホアキン・ガルシアは2024年、アメリカ連邦捜査局捜査官協会(FBIAA)功労賞を受賞した。Courtesy of Joaquin Garciaホアキン・ガルシアは、FBIの潜入捜査官として24年間、危険な犯罪組織に潜入してきた。彼はイタリア系マフィアや、ラテンアメリカの麻薬カルテル、ロシアとアジアの犯罪集団などを捜査した。そのガルシアが、マフィアよりも、そして潜入したどの犯罪組織よりも、麻薬カルテルを恐れる理由とは。

ホアキン・ガルシア(Joaquin Garcia)は、アメリカ連邦捜査局(FBI)で勤務していた26年のうち、24年を潜入捜査官として過ごした。「100件を超える潜入捜査に携わりました」とガルシアはBusiness Insiderに語る。

ガルシアが携わった捜査は、イタリア系マフィア、メキシコとコロンビアの麻薬カルテル、ロシアとアジアの組織的犯罪集団、警察官の汚職、裁判官への贈収賄計画、殺人依頼、大規模な麻薬取り締まり作戦など、多岐にわたる。

過去に潜入した犯罪組織のなかでも、ガルシアが他のどの組織よりも恐れるものがある。「メキシコの麻薬カルテルは、とにかく残忍です」とガルシアは言う。彼が麻薬カルテルを最も恐れる理由を見ていこう。

マフィアとカルテル、潜入捜査での違い

2002年から2005年にかけて、ガルシアは「ジャック・ファルコーネ(Jack Falcone)」と名乗り、犯罪組織ガンビーノ・ファミリーに潜入していた。

ニューヨークには、五大イタリア系マフィア・ファミリーがある。ガンビーノ、ジェノベーゼ、ルッケーゼ、コロンボ、ボナンノだ。彼らは、ボス、アンダーボス、コンシリエーレ(顧問)、キャプテン(幹部)、ソルジャー(構成員)、アソシエーテ(準構成員)からなる厳格な指揮系統に従っているとガルシアは説明する。

ガルシアは、ガンビーノのキャプテン、グレッグ・デパルマ(Greg DePalma)の運転手兼側近になった。その役割を務めるためには、マフィア文化に浸りきる必要があった。

キューバ系アメリカ人のガルシアは、シチリア人の経歴をでっちあげ、「マフィア養成研修」を受け、イタリア料理の正確な発音を身につけ、リトル・イタリーで訓練を積んだ。おまけに、誰かに墓参りをしたいと言われたときに自分の「両親」として使うため、墓地に足を運んで「ファルコーネ夫妻の墓」まで設定していた。

一方、カルテルを相手にした捜査は、そうした体験とは違っていたという。

Distant photo of three guys outside of the La Sala Restaurant.ガルシアと、マフィアのアソシエーテ。Courtesy of Joaquin Garcia

ガルシアのカルテル捜査の焦点は、麻薬の密輸と大規模なドラッグ売買にあった。そのため、彼はしばしば密輸業者や売人を装ったという。

信頼されるかどうかは、血統よりも、彼がどんな行動をとれるかにかかっていた。とりわけ重要なのが、何キロものドラッグを動かせるのか、金を動かせるのか、という点だ。そうした取引では、たちまちのうちに状況が変わることもある。

ある取引では、コカイン絡みのおとり捜査の際に、当初の予定に加えて、予期していない9人の男が現れたという。ガルシアは、急遽近くのレストランに飛び込み、近くに待機していたFBIに電話した。結局、FBIは作戦を中止し、逮捕に踏み切った。

カルテルを最も恐れる理由Black and white photo of a young Joaquin Garcia.若き日のホアキン・ガルシア。Courtesy of Joaquin Garcia

マフィアの世界では、徹底した説明責任が存在していたとガルシアは言う。マフィアたちは、彼の居場所を常に把握しておきたがった。例えば、ガルシアが電話に出られなかったら、その理由を問い詰めた。

「よくよく気をつけて、細部まで完璧にこなさないといけない。ほんのちょっとでもしくじったら、車のトランク行きになるんです」とガルシアは話す。

マフィアの内部でも暴力には事欠かなかったが、メキシコの麻薬カルテルで目撃したものは比べものにならないとガルシアは続けた。

カルテルの構成員が、人間の頭部を切り落とし、尖った棒に突き刺すところを目にしたこともあるという。橋から人間を吊るすところもだ。「家族全員を狙ってくるんです」とガルシアは話した。