震災から15年、そして福島県誕生から150年。大きな節目を迎えた今、福島は私たちが抱きがちな「復興支援」というイメージを超え、新しい一歩を力強く踏み出しています。そんな”今の福島”を鮮烈に体感できるのが、2026年4月から6月にかけて開催される「ふくしまデスティネーションキャンペーン(ふくしまDC)」です。ここではJRグループと県・市町村・地元の観光事業者などが一体となり、各地の魅力をあらためて発信しています。
では、その”今の福島”とは、どのような姿なのでしょうか。今回、全国の温泉やローカルな風景を訪ね歩いてきた旅ライター・satochinさんに話を伺いました。「Yahoo!ニュース ベスト エキスパート 2026」で特別賞を受賞した彼女の視点から、福島という土地を旅する理由と、その現在地をひもといていきます。
この記事、ざっくりいうと?
震災から15年、福島は新たなフェーズに入り、応援する場所から純粋に旅したい場所へ。注目すべきは、絶景だけでなく、体験やグルメまで掛け合わせて楽しめるという点。その魅力を堪能できるキャンペーン「ふくしまDC」が4月からスタート。

秋田で生まれ育った私にとって、かつて福島は「同じ東北」でありながら、どこか遠い場所でした。田舎の高校生の行動範囲なんて、自転車で行ける距離が9割。隣の山形すら遠いのに、そのさらに先にある福島など、当時の私には想像もつかない異国のような存在だったのです。
その距離感が一変したのは、上京してからのことでした。首都圏からは新幹線でわずか1時間ちょっと。「実はこんなに近い場所だったのか」という驚きが、福島との再会の始まりでした。
きっかけは、震災後の復興支援ツアー。南相馬の海、喜多方や会津の山々、そして飯坂温泉の湯。各地で出会ったのは、圧倒的に美しい景色と、そこに根付いた温もりあふれる民芸品、そして何より、食いしん坊な私の心をつかんで離さない「食」の豊かさでした。
潮目の海が育む滋味深い魚たち、厳しい冬を越えるために長年培われてきた奥深い発酵文化、それらを引き立てる芳醇(ほうじゅん)な日本酒。さらに、各地に湧き出る個性豊かな名湯の数々。訪れるごとに福島の風土が体に染み渡り、気づけば「助けたい」という思いよりも先に、私のほうが福島にすっかり魅了されていました。

そんな私の期待をさらに後押ししてくれるのが、この春開催されるふくしまDCの目玉企画のひとつ「FUKUSHIMA FANTASY(ふくしまファンタジー)」です。
この企画は、JRグループがスクウェア・エニックス監修のもと展開するもの。人気ゲーム『FINAL FANTASY』シリーズを思わせる福島の絶景を、まるで”冒険の舞台”のように紹介しています。
『FINAL FANTASY』といえば、壮大な物語と美しい世界観。その幻想的な雰囲気を、現実の旅の中で体験できるのが春の福島なのです。
福島がもともと持っている自然の神秘や景色の魅力に焦点を当てているのも、この企画の特徴。公式の監修によって、福島にある美しい景色がまるで物語のワンシーンのように見えてきます。
その「冒険」のプロローグを飾るのにふさわしいのは、やはり桜でしょう。福島を代表する桜といえば、樹齢千年を超えて咲き続けているといわれる「三春滝桜(みはるたきざくら)」が全国的に知られています。ですが、福島にはほかにも桜の名所がたくさんあるんです。
降り注ぐ「桜の雨」に包まれる体験

最初に紹介したいのが、「FUKUSHIMA FANTASY」のビジュアル撮影地にも起用された喜多方市にある「日中線(にっちゅうせん)しだれ桜並木」です。かつて喜多方と熱塩(あつしお)を結んでいた旧国鉄・日中線の跡地が、約3キロにわたって、およそ千本ものしだれ桜が咲き誇る壮大な並木道へと生まれ変わりました。
桜といえばソメイヨシノが主流ですが、ここ喜多方には「しだれ桜」が本当によく似合います。重厚な蔵が立ち並ぶこの街には、しなやかに枝を垂らすしだれ桜の曲線が、どこか凛(りん)としていてしっくりくる。そんな気がします。
この並木道について、喜多方市産業部商工観光課でふくしまDCを担当されている荒井美帆さんと、さくらまつり担当の遠藤あいさんに詳しくお話を伺いました。
「震災前」と「今」をつなぐ、日常のなかの桜
お二人が語ってくれたのは、ドラマチックな復興の物語というよりも、もっと身近で、体温の宿った「桜との日常」でした。
震災当時はまだ幼かったり、別の仕事に就いていたり、落ち着いて花を愛でる余裕などなかったと振り返るお二人。けれど、歳月を経て再びこの地で桜と向き合うようになった今、確信していることがあるそうです。
「震災の前も後も、桜の美しさは少しも変わっていないんです」
その言葉には、静かな、けれど強い力がこもっていました。何年目という節目を過剰に意識するのではなく、ただ純粋に、この春の美しさに触れて、明るい気持ちになってほしい。そんな願いが、今の並木道を支えています。

さらに驚いたのは、この絶景が「観光地」として切り離されたものではなく、地域の人々の「生活道路」だということです。学校へ通う子どもたちが通り、仕事帰りの人が歩く。そんな日常の景色のなかに、当たり前のように桜があるのです。
「行政だけで管理しているわけではないんです。春になれば沿線の皆さんが一斉にゴミ拾いをしてくださいますし、見頃の時期には、どこからともなくカゴを背負ったボランティアの方が現れて、掃除をしてくださるんですよ」
そう教えてくれたお二人の表情からは、地元の方々がこの道を、自分たちの宝物として慈しんでいるのだということが伝わってきました。

喜多方で桜の背景にある物語を伺いながら、改めて強く感じたことがあります。それは、福島に広がる幻想的な絶景の数々は、その土地を愛する人々が長年、慈しむように守り続けてきた賜物(たまもの)なのだということです。
ただ遠くから風景を眺めるだけではもったいない。その土地ならではの体験に飛び込み、地元の風土が育んだ食材を味わう。そうして五感をフルに動かすことで、旅の景色はただの「きれいな写真」ではなく、もっと実感を伴った、忘れられない思い出として心に刻まれていく気がします。
今の福島は、そんな魅力に満ちた場所なのではないか。そう思った私は、さらに気になる絶景を探してみました。
福島市の花見山公園

そして、心ひかれた場所のひとつが、中通りにある「花見山公園」。
「福島に桃源郷あり」とたたえられるほどの花の名所で、春になると桜だけでなく、レンギョウやボケ、ハナモモなど、なんと約70種類もの花々が山の斜面を埋め尽くすのだそう。写真で眺めるだけでも、その圧倒的な色彩に思わず目を奪われてしまいます。
さらに驚いたのが、ここが実は「個人の持ち物」だということ。もともとは花卉(かき)農家のご家族が、70年以上も前に雑木林をコツコツと開墾し、生活のために花を植え始めたのがきっかけでした。やがてその美しさが評判になり、「自分たちだけで楽しむのはもったいない」と、善意で無料開放しているんです。
ひとつの家族が守り、育ててきた山が、今では国内だけでなく海外からも多くの人が訪れる場所になっている。そんな背景を知ると、写真の景色が、よりいっそう温かみのあるものに感じられてきますよね。

そんな春の花々を楽しんだ後は、やっぱり旬の味覚も楽しみたくなります。
福島市はフルーツの産地としても知られていて、常に旬の甘い香りに満ちています。春の主役であるみずみずしいいちごから、初夏の訪れを告げる宝石のようなさくらんぼまで。柔らかな日差しの中で花を眺め、そのあとにおいしい果物を味わう。おなかも心も満たされるそんな時間は、私にとって「これぞ福島の旅」という実感をくれる、至福のひとときとなりそうです。
南相馬のホーストレッキング

次なる冒険の地として私が選んだのは、南相馬で体験できる「ホーストレッキング」。復興支援ツアーで訪れたこともある南相馬には、千年以上もの歴史を持つ「相馬野馬追(そうまのまおい)」という神事が行われるなど、馬と共に生きる文化が今も息づいています。
その伝統の地で、ゆったりとした気持ちで馬の背に揺られ、波打ち際を進む。
かつて自転車で行ける範囲が世界のすべてだった私にとって、馬の背から眺める海は、いったいどれほど広く、自由に見えるのでしょうか。そして、体験の後に思い出すのは以前食べた海鮮丼です。濃厚な旨みと磯の香りが今でも鮮明に舌の上によみがえってきます。
馬に乗って波打ち際を歩いた広い海を、今度は丼の中で味わい尽くす。体験した景色と、目の前のご馳走がひとつに溶け合っていく。これこそが、旅の記憶をどこまでも鮮やかにしてくれる、最高の贅沢だと思うのです。
今回の「ふくしまDC」は、JRグループと福島県・市町村そして地元の皆さんが一丸となって届けてくれる、いわば福島からの「招待状」です。

前述した「FUKUSHIMA FANTASY」では、3月30日(月)より、『FINAL FANTASY』シリーズとコラボしたスタンプラリーを実施します。ふくしまDCのオリジナルチョコボを探しに各地の絶景スポットを巡れば、それはもう、自分自身が物語の主人公になったかのような冒険気分を味わえるはずです。
この春、福島が私たちに届けてくれるものは何なのか。JR東日本の担当者で東北本部 マーケティング部の吉田圭一さんに、その思いも伺いました。
「福島の春は、冬の名残の残雪ときらめく春の花々が同居する、季節が移り変わる瞬間そのものを旅できる特別な時期です。震災から15年を迎え、首都圏・仙台圏からのアクセスが回復したことで、かつて分断されていた地域に再びスムーズに足を運べるようになりました。復興した地域を巡り、新しく生まれた食や文化に出会うこと。それこそが、今の福島ならではの体験です。
今回のキャンペーンテーマは『風』。訪れる一人ひとりに、福島に吹く『しあわせの風』を感じてほしいという願いが込められています。春の福島は、朝と夜とでまったく違う表情を見せます。現地へ足を運んだ人だけが感じられる、時間帯ごとに異なる”風の心地よさ”をぜひ味わいにきてください」
桜の絶景に心を動かされ、海辺の馬との冒険に思いを馳せ、花と果実が織りなす季節を想像する。
きっかけは復興支援。けれど今では、一人の旅人として、ただ純粋にその美しさとおいしさに触れたくて、私は何度も福島へ足を運んでいます。
再生のその先へと力強く進む福島の「今」に会いに行きたい。まだ見ぬ絶景への期待を胸に、私は今年もまた、新幹線に乗って出かけたいと思っています。
皆さんもぜひ、自分だけの「物語」を探しに、春の福島へ出かけてみませんか?
「JR東日本びゅうダイナミックレールパック」は、新幹線や特急列車と多様な宿泊施設を自由に組み合わせて予約できる、パッケージ形式のサービスです。価格変動制(ダイナミックプライシング)を導入しており、予約のタイミングや時期に応じた価格でお申し込みいただけます。タイミングによっては、おトクにご利用いただける場合があります。最短で出発当日まで手続きが可能で、予約後は駅の指定席券売機に二次元コードをかざすだけで、スムーズにチケットを受け取れる仕組みです。特定の行程に縛られず、個々の目的に合わせた福島の旅を組み立てられます。
